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第102話 かえでの捜査官としての手腕

 誠は意識して黙り込んだ。


 リンの腹黒さは想像を絶するものだった。そんなものには正直巻き込まれたいとは思わなかった。


 リンもまた、そんな誠の様子を察してかしばらく沈黙の時間が過ぎた。


「あ、かえで様が戻られたようです」


 サイドミラーに目をやっていたリンの声をきっかけに誠はようやく助かったとでもいうように小走りに路地を車へと向かって来るかえでに目をやった。


「待たせたね」


 かなめはそう言うと後部座席の誠の隣へと滑り込んだ。


「かえで様。どうやら何か掴めたようですね」


 主君の事は知り尽くしていると公言するだけあってリンは先ほど誠に向けていた笑顔からいつもの無表情に切り替えてかえでに向けてそう言った。


「ああ、バノンは予想した通りの権威主義者……そしてかなり慎重な男だったということが分かった」


 かえでは開口一番そう切り出した。


「慎重な男?それじゃあ何もつかめなかった……」


 そう言おうとした誠にかえでは軽く首を振った。


「それほど僕が無能に見えるかい?確かに顧客情報をまともに教えてくれと言って教えてくれる民間企業があるならそんな会社はすぐにつぶれてしまうよ。しかし、大量の医療器具を運ぶにはそれなりの大きな車が必要になると思ってね。陸運局の名前を出して営業車の運行記録を見せてもらったんだ。そうしたらある程度バノンが保有していると思われる邸宅の絞り込みは出来た」


 かえでは軽くそう言うと誠に笑いかけた。


「僕達陸運局とは関係ないですよ」


 そう言う誠から目をそらして窓の外を見つめた。


「なあに、嘘も方便と言う奴さ。もし必要があれば裁判所に手を回して陸運局に圧力をかけて僕の行動を正当化すればいい。ただ、一企業がそこまでの事をするかな?ただ、絞り込めたと言っても……中々に面倒なところにバノンは隠れている可能性がある」


 そう言うかえでの顔は何時にもなく真剣だった。


「候補は三件だ。一つは成畑……まあ、帰路を考えれば空港のあるあそこと言うのはあり得ない話ではない。もう一つは舟橋……こちらは東都にも近く『神聖聖書協会』の本部との連絡には好都合だ。そして、もう一つが八巷……これが分からないんだ。確かに信者が多数の乗用車を購入しているということを考えればバノンの潜伏先の候補の一つとは言えるかもしれないが、もしバノンの様態が急変してバノン付きの医師では手が施しようがない場合に先進医療を施せるような大病院は近くには存在しない……だが、そこが逆に怪しい」


 顎に手を当てながらかえではそう考えを巡らせた。


「かえで様。とりあえず現段階ではそこまで分かれば十分かと。それと技術部の情報士官に依頼している地球圏で流布されている不死人に関するデマや偽情報でバノンが食いつく可能性があるものの情報が集まっているころです。とりあえずこの車を千要県警本部に変換した後、隊に帰りましょう」


 リンはそう言うとコイン駐車場の清算を済ませて車を出した。


「そうだね、少し見方を変えれば違った考えが浮かんでくるのかもしれない。それにその不死人に関する誤情報の中でバノンが信じている情報が絞り込めればこの三件のうちどこがその誤情報によりバノンが自分が回復するのに一番最適な場所かと考えたことも分かってくるだろう」


 車は路地を出てそのまま専用中心部へ向かうモノレール下の国道に入った。


「しかし地球人が法術師に関してどんな馬鹿な情報で踊っているのかを見るのは楽しみだ。法術師はそれほど便利なものではないんだよ……地球人の皆さん」


 かえでは自分自身に言い聞かせるようにそう言ってほくそ笑んだ。

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