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迷子ではないけど立ち止まる

前の世界では珍しい犬を飼っていた。

散歩に行くとよく目をひいたものだ。

今もまた、そんな状況に近い。


連れているのは竜なんだけど。


街の人がすれ違う度にこちらをみる。

子供は憧れて近づいてきてはギンに威圧され泣いている。ギンに悪気は無さそうだが、危害を加えないようにお願いをする。


ギンは非常に賢いようで、こちらの話を全て理解しているようだ。

文字でも教えれば会話ができるかも知れない。

僕の勉強が一段落したら教えてみよう。


とりあえず、ギンを購入した後は街で旅のための食料や日常品を購入。

宿に持って行ったのだが、ギンを馬小屋に入れようとした際、他の馬が怯えてしまった。

宿の中にも入れられないので、どうしようかと思ったのだがクロさんから、門の外に荷物と一緒に待ってもらうように提案された。

ギンも問題ないようなので馬車をひいてもらう。

いや、竜が荷台をひいたら竜車になるんだろうか。


そんなことを考えながら、門を出た。

門番はこの前の親切な人で、ギンを連れている僕を見て、とても驚かれた。

事情を説明して、門の近くにギンを待機させて貰う。

そういえば、竜はサリーの匂いは大丈夫なのか確認をしていなかったのでギンに聞いてみる。

するとギンは、サリーの咲いている場所まで進んで、花の匂いを嗅いで見せた。

どうやら竜は魔物とは違う分類のようだ。


「悪いけど、明日の朝にはくるから。待っててね」


一応、竜車からはギンを外しておく。


「白い嬢ちゃん、あれは大丈夫なのかい?」


門番さんに聞かれた。


「大丈夫ですよ。賢いし、強いので」


あと、僕は嬢ちゃんではない。

もう馴れたが。


それにギンは逃げたりもしないと自信もあった。

尾で叩かれたりもしたが、なぜか、なついてくれている気がしている。


門を再び通り、街に入る。

一人で街を歩くの新鮮だ。

そういえば、この世界に来てクロさん達に出会ってから一人になって歩くのは初めてかも知れない。


散々揉めたが、いい人もいたし。

街並みもよく見れば、綺麗だ。

悪くない。

そう思うと同時に不意に怖くなる。

ようやく受け入れた現実が、このまま歩き続けてなくなるような。そんな不安。


この瞬間、海の上に場面が切り替わらないか。

海に漂う、落ちたあの瞬間に戻ってしまうんじゃないのか。そんなことがありえるような気がしてしまう。

足が止まる。


一人が、怖い。


怖い、怖い、怖い、怖い。


「おい、白い坊主」


後ろから声を掛けられて、ようやく現実に戻った。


「大丈夫か?親はどこだ?たく、こんな子供置き去りにしてよぉ」


親切な人がいるものだ。

振り返り、お礼を言おうと相手をみる。


「おう、えらい綺麗なガキだなぁ」


言葉に詰まる。

目の前に、鎧を着た狼がいた。


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