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メッセンジャー2
ところがナオミからの返事はなかった。この時代の携帯端末からは電話がかけられない。機能はあるが繋がった例がない。花の影響により通信インフラの整備が出来ず、通話に耐えうる水準を保てなくなったのだ。
(また煮詰まったかよ)
ドームの住人にナオミ以外に信用を置けそうな人間はいない。
(寝ちゃったか、それとも嫌われたかな)
色々な意味で限界を感じさせられた。もはや手がなくなった。
もはや今夜中の帰宅は絶望的となった。寒い季節でなかったのは不幸中の幸いだった。暖房がなくても凍えることはない。
目標は変更せざるを得なかった。帰宅することではなく、どこで眠をとるかを考えるようになった。
政直は自然と灯りのある所を探した。
(虫かよ)
彼自身がそう思ったが、どうやらそれが人間というか動物の本能であるらしく、通路の先に見えた朧げな白い光に向かって具体的な意味もなく歩いていった。
通路の先は曲がり角になっていた。更にそこを曲がり進むと、意外にも早稲田にあった研究室と似たような部屋があった。
「おかしいな」
就寝時間以降の活動は、原則として法により禁じられている。例外はよほどのことがなければ認められていない。花のせいで発電施設も機能しなくなったため電力の価値が高騰し、夜間の活動が極めて不効率かつ不経済になってしまったためだ。




