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ちゃっくん  作者: 柴犬ちゃすけ


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第七章 お父さん

 夏休みもいよいよ後半に入った。家族みんなで、いつものように夕食を摂っていた。毎日外で遊んでいる双子のお姉ちゃん達の日焼けした顔を見て、お母さんが苦言した。

「あなた達宿題しなくて大丈夫なの?そろそろ始めないと、また最終日に泣いても知らないわよ」

 このセリフは昨年も聞いた。よってその対策も万全である。

「今年の夏は、ほとんどどこにも行っていないから、絵日記に描くことがないの。お父さんどこか連れてってよ」

 さすがだ。まき姉ちゃんが、自分達に向いていた矛先をひらりとかわし、お父さんにそれが向かうようにした。でもどうせ最終日にまとめて絵日記を描くんだから、どこへも出掛けていない方が楽で良いのに。

「そうだなあ、じゃあ明日バーベキューにでも行こうか」

「やったー」

 双子のお姉ちゃん達とおいらは、声に出して喜んだ。

 やさしいお父さんが、まき姉ちゃんのペースに併せてあげた感じだ。お母さんとみゆき姉ちゃんは、顔を見合わせて笑っている。きっと「お父さんったら甘いんだから」と思っているみたいだ。しかし、みき姉ちゃんは尊敬の眼でまき姉ちゃんを見ている。まき姉ちゃんも「どう?あたしのおかげよ」という感じで、目を細めて薄っすらと笑みを浮べている。

「じゃあお母さん、準備頼むよ」

「はいはい、わかりましたよ」

 お母さんは、いつもみんなでどこかに出掛ける前、いろいろと準備で忙しい。お弁当が必要な時は、朝早くから起きて用意しないといけない。家のどこに何があるのかを知っているはお母さんだけなので、必要な道具を車に運ぶのも全部一人でやってくれる。でもそういう作業をしている時は、とっても嬉しそうにしているのだった。


 翌日、お天気もよく絶好のバーベキュー日和だ。お母さんがしっかりと準備を整えてくれた。ここから車で三十分ほどの場所に、バーベキューが出来る河川敷がある。そこへ向かう途中、スーパーで買い物をすることになった。家族みんなで車に乗り込んで、いざ出発だ。

 スーパーに着くと、お母さんとみゆき姉ちゃんは食料品の材料を買いに、お父さんは薪を買いに向かった。双子のお姉ちゃん達もお母さん達と一緒に行ったが、いつもお店に入るとすぐおやつ売り場に向かってしまうらしく、全く役に立たない。おいらは、お店の外でお留守番だ。

 このスーパーは家から少し離れているため、さすがにみんながおいらのことを知っているわけではない。道行く人達が、こっちを見て怖がっている。小さい子供が手を伸ばしてくると、お母さんらしき人に「危ないから近づいちゃダメ」って怒られていた。おいら何もしないのになあ。

 みんながスーパーから出て来た。お父さんとお母さんとみゆき姉ちゃんは、たくさんの荷物を手にしている。それらを車のトランクに積んだ。両手におやつだけ持っている二人組は、それだけ持ってさっさと車に乗り込んでしまった。もちろんおいらはしっかりものだから、荷物を積むお手伝いだ。

「いいからちゃすけも先に車に乗っていなさい」

「はーい」

 どうやらお邪魔だったみたいだ。お母さんに怒られてしまった。お母さんはいつもと変わらないが、何だかお父さんの様子がおかしい。いつもより元気が無いみたいだ。


 バーベキューが出来る河川敷の駐車場に到着だ。みんなで手分けして、車から道具や食材を持って河川敷まで運んだ。かなり荷物が多いため、さすがに双子のお姉ちゃん達も水筒を運ぶのを手伝っていた。

 河川敷では、周りにも何組かの人達がバーベキューを楽しんでいた。おいら達も、負けずに準備に取り掛かった。ここから双子のお姉ちゃん達は何もしない。おいらの場合は、運ぶところから手伝うことがなかった。

 鉄板に、いろいろな食材が乗せられ、『じゅー』という音と共に香ばしい香りが漂い始めた。もうよだれが止まらない。その気持ちを察してくれたみゆき姉ちゃんが、せっせとお肉を取ってくれた。半生気味だけど気にせず頬張った。おいしい。続けてお肉を頬張った。うん、おいしい。さらにお肉を頬張った。

「お母さん、ちゃっくんがお肉ばっかり食べているよ」

 いかん。まき姉ちゃんに見つかって、告げ口されてしまった。みゆき姉ちゃんも同罪のはずなのに笑っている。

「あら、ちゃすけったら、ちゃんとお野菜も食べないとね。ほら、これでも食べなさい」

 こ、これは、生の玉ねぎじゃないかあ。匂いを嗅ぐだけでむせてしまう。

「おいらこれ食べられないよ」

 必死の抵抗が、お母さんにはわかってもらえたようだ。

「これ嫌いなの?じゃあこっち」

 かろうじて人参で勘弁してもらった。でもお肉が好きなんだよ。その後もみゆき姉ちゃんは、おいらのためにお肉をいっぱい取ってくれた。

 ほとんどの食材を、おいらとお母さんで平らげた。おいらがお肉、お母さんがお野菜って感じだ。お母さんはいつもながら元気で食欲旺盛だ。

 双子のお姉ちゃん達は、好き嫌いが激しく、ウィンナーや焼きそばなど、自分達の好きなものだけしか食べない。あとは、コーラを飲んでいるだけだった。

 みゆき姉ちゃんは元々小食だが、最近はスタイルを気にする年頃らしく、あまりお肉を食べなくなってきた。どんなスタイルでもみゆき姉ちゃんは素敵なのに。

 だが普段たくさん食べるお父さんが、今日はあまり食べない。口数も少ないし、顔色も悪く見える。

 結局おいらが一番得したみたいだ。あまり食べなかった双子のお姉ちゃん達だが、それでもとっても楽しかったらしく、終始笑顔を絶やさなかった。その笑顔を見ているだけで、他のみんなは嬉しそうだった。

 その後、少し川に入ったりして遊んだ。そしてそろそろ後片付けに入ろうとしている時、聞き慣れたセリフが耳に入った。

「お母さん、みきおしっこしたい」

 みき姉ちゃんは、いつも後先考えずにジュースを飲むタイプだ。そこだけ、まき姉ちゃんとちょっと違う。

「この辺トイレなんて無いでしょう。そこの裏山でしちゃいなさい」

 お母さんは相変わらず豪快な性格だ。だが裏山と聞いて、以前のスズメバチや熊などの危険な体験を思い出したため、用心棒としておいらも着いて行くことにした。

 お母さんとみき姉ちゃんとおいらは、すぐ裏にある山の中に入って行った。耳と鼻に全神経を集中させたが、どうやらこの山には、そんな危険は潜んでいないみたいだ。それよりお母さんが一緒なんだから、きっと怪獣が現れても平気だろう。お母さんはおいらから見ると、この世で一番強い存在だ。


「みき、もうおしっこ済んだの?早くしなさい」

 みき姉ちゃんは「はーい」と返事をして立ち上がった。そしてお父さん達の元へ戻ろうとした時だった。みゆき姉ちゃんの悲鳴が響き渡った。お母さんとみき姉ちゃんにも聞こえたらしい。おいらは足の速さを生かして、いち早くみゆき姉ちゃんの元へ向かった。

 え?お父さんがうつ伏せに倒れている。しかも誰かに襲われたわけではなさそうだ。熱中症かなあ。だが今日は晴天にも関わらず、かなり涼しい。そんなはずはないだろう。遅れてお母さんとみき姉ちゃんが到着し、お母さんは携帯電話で急いで救急車を呼んだ。周りの人達も集まってきて、お母さんに話し掛けた。

「救急車より、私の車で運んだ方が早く病院に着けますよ。運ぶの手伝ってください」

 いろいろと心配してくれているみたいだが、お母さんはその申し出を断った。

「いえ、動かすと危険かもしれませんので、救急車を待ちます」

 これはお母さんが正解だ。意識を失うという症状の中には、脳にまつわる病気が多いため、素人が下手に動かすと危険な場合がある。この場合、救急車を待つことが一番だ。だが即座にそれを判断したお母さんは、何か心あたりがあるのかもしれない。

 みんながお父さんに「しっかりして」と声を掛けている間、おいらは倒れているお父さん匂いを嗅いだ。外傷が無いにも関わらず、耳から血の匂いがする。まだ息はあるが、相当危険な状態だ。

 それから十分ほど経って救急車の音が聞こえてきた。だがその間、一時間以上経過したように思えるほど長く感じた。みんな心配そうにしていたが、お母さんだけはずっと泣いていた。

 河川敷の場所までは、車で入って来られない。少し離れたところに救急車が到着し、そこから白い服を着た男の人が二人、担架を持ってやって来た。

 お父さんの様子を見ると、年配の人の方が若い人に向かって「足を持て。いいか、そっと動かすぞ」と言って、上半身の方を持った。お父さんの症状に気付いたみたいだった。若い人が膝のあたりを持った。

「3 2 1 それ」

 男の人達は、掛け声を出してお父さんを担架に乗せ、そのまま救急車まで運んだ。みゆき姉ちゃんがお父さんに付き添って、一緒に救急車に乗って病院に行くことになった。他のみんなは、お母さんの運転で後から車で病院に向かうことにした。

 バーベキューをしていた河川敷から、十五分程度のところにある信濃川総合病院にお父さんは運ばれた。この病院は、みゆき姉ちゃんが通り魔に襲われた場合、運ばれる予定だった病院だ。双子のお姉ちゃん達が生まれたのもこの病院だった。

 お母さんが車を運転し、病院に向かった。車が病院に到着すると、みんなは急いで中に入って行ったが、ここでもおいらはお留守番だ。

 一時間、そしてまた一時間ほど経った気がする。それでも誰も出て来なかった。そしてその代わりに病院の中から、お母さん、みゆき姉ちゃん、まき姉ちゃん、みき姉ちゃんの泣き声が、おいらの耳に届いた。

 お父さん、今日は朝から様子がおかしかったもんなあ。相当具合が悪かったのに、みんなを喜ばせるために、無理して頑張っていたのかもしれない。だが病気では、おいらにも治すことは出来ない。今日のバーベキューを回避すれば何とかなるかなあ。だがもし同じ結果になってしまったら、お父さんとの最後の楽しい思い出を奪ってしまうことになる。ならばこのままの方が良い気がする。


 翌日、お父さんのお通夜が行われた。本来『通夜』とは、翌日の葬儀まで近親者が夜通し付き添うのが習わしだが、まだ七歳になる子供がいる加藤家では、その負担を考え『半通夜』で済ますことにした。『半通夜』は、夕方の六時から、夜の九時までで終了する。

 夕方からたくさんの人達が参列した。同じ職場の人達だけではなく、高校時代までここで過ごしたお父さんには、昔からの知り合いも多い。

 お母さんもこの付近の出身で、お父さんと同じ高校に通っていたらしい。よって、お母さんの知り合いもたくさん駆けつけて参列していた。みゆき姉ちゃんのピアノの先生もその中の一人だ。

 お母さんや三人のお姉ちゃん達はみんな泣き続けている。だがその参列者の中にいた、とある男の人がお線香をあげようとした時、お母さんの激しい怒鳴り声が響き渡ってきたのだ。

「あんたの顔なんて見たくもないわよ。とっとと帰ってよ」

 どうしちゃったんだろう?相手の人は、ただ頭を下げて謝っている。こんなに怒ったお母さんを見たのは初めてだ。やっぱり恐ろしい。お母さんは、そばにいたお友達のピアノの先生に抑えられ、ようやく怒りを鎮めた。だがお母さんがおとなしくなると、今度はピアノの先生が文句を言い出した

「非常識にもほどがあるでしょう」

 追い打ちを掛けるように、続けておばあちゃんが怒り出した。

「息子を返してよ」

 おばあちゃんの言っている意味がよくわからない。お父さんは病気で亡くなったはずなのに。

 三人に追い出されるように、その男の人は去って行った。おいらはあっけに取られてしまったが、お姉ちゃん達も全員驚いて泣き止んでしまったくらいだ。


 その夜、お母さん、みゆき姉ちゃん、双子のお姉ちゃん達は四人並んで寝ることになった。おばあちゃんもうちに来ていて、別の部屋で寝ている。みゆき姉ちゃんが、いつもお父さんが寝ていた場所で寝たいと言い出したのだ。普段はお父さんが家にいてくれたから、自分の部屋で一人で寝ていても安心だったらしい。そんなお父さんがいなくなってしまい、みゆき姉ちゃんも不安みたいだ。お父さんはいるだけで、その存在感は大きかった。おいらは、その四つの布団のどこかに紛れ込んで寝るつもりだ。

 寝る前にお母さんは、地図と昔のアルバムを持って来て「みんなに話しておきたいことがある」と言い出した。それはお父さんに関することだった。おいらも、お母さんの布団に陣取り、その話を聞かせてもらうことにした。


 先ず「さっきは取り乱してしまってごめんね」から話は始まった。

 お父さんと、お母さんと、みゆき姉ちゃんの三人は、十年前まで東京の新宿という場所でアパート暮らしだったらしい。

「そのアパートはお父さんの会社の社宅でね、新宿駅の南口付近にあったの。地図でいうと、ここよ」

 とみんなに地図を開いて指で指し示してくれた。当時みゆき姉ちゃんはまだ三歳だ。お父さんの仕事場は、そこから自転車で十分程度のところにあった。

 十年前のクリスマスイブの夜、三人でお祝いをするため、お父さんはケーキを買って帰る約束をしていた。しかし、仕事の都合でちょっと遅れてしまった。急いで予約していたケーキを受け取って、自転車で自宅に向かう途中、信号を無視してきた車にはねられてしまった。しかもその運転手は、その場を逃げ去ってしまったのだ。お母さんはその時の、事故現場の写真や新聞記事の切り抜きを見せてくれながら、興奮気味に語ってくれた。

 ところが、たまたまそこに目撃者の人がいて、救急車を呼んでくれたため、お父さんは一命を取りとめることが出来た。お父さんも急いでいたため、注意力が散漫だったらしい。しかし、目撃者の人によると、その車は赤信号を蛇行運転で通過して行ったとのことだった。

 後日、その運転手は逮捕されたが、最初は記憶に無いなどとしらを切っていた。だが、『お父さんをはねた後、一旦停止して、しばらく様子をうかがってから、タイヤを鳴らして逃げて行った』という目撃証言と、その証言の場所に残っていたタイヤの跡が、事故を起こした車のものと一致したため、明らかに気付いた後に逃げ出したことが判明した。

 また、蛇行運転だったという情報から飲酒運転を疑われたが、こちらはそれを証明することは出来なかった。

 ひき逃げ事件が後を絶たないのには理由がある。もし飲酒運転だった場合『危険運転致死傷罪』という、重い刑に処されてしまう。だが、その場は逃げてしまい、後から捕まれば飲酒運転であったことを証明することは困難となり、単なる『ひき逃げ』として、それより軽い刑で扱われる。これは『逃げ得』と呼ばれており、社会問題にもなっている。これによって、すぐに救護活動を行なっていれば助かった可能性がある尊い命が奪われてしまうこともある。

 お父さんは、かろうじて助かったが、頭に治すことが出来ない傷を負ってしまった。その傷は、いつ破裂してしまうかわからない。それが明日なのか、数年後なのか。だが「もし破裂したら、間違いなく命は助からないだろう」とお医者さんに言われていた。一生破裂しないでくれることを日々願っていたお母さんだったが、その願い虚しく昨日を迎えてしまった。

 そしてそのひき逃げの犯人が参列者の中にいたため、お母さんは我を忘れて怒り出したのだ。ついでにおばあちゃんまで怒っていたのも納得出来る。ピアノの先生もお母さんから話を聞いて知っていたんだろう。

 お父さんは「いずれは生まれ育った田舎に戻りたい」という希望を持っていたらしく、事故をきっかけに、会社を辞めて、リハビリも兼ねて家族みんなでこの家に引っ越してきた。いつ終わってしまうかわからない命なら、早く実現させたいと思ったのかもしれない。だがみゆき姉ちゃんは「都会のアパートではあまり弾くことが出来なかったピアノが、ここでは自由に弾くことが出来る」と言って喜んでくれたそうだ。

 みんな伸び伸びと暮らし始めた時、双子のお姉ちゃん達が生まれた。だからこの二人は、伸び伸びを絵に描いたような典型的な子供に育ったみたいだ。


 ここまでお母さんが話をしたものの、双子のお姉ちゃん達は既に寝てしまっていた。みゆき姉ちゃんは三歳の時の記憶だったため「かなり曖昧だったものが、やっと理解出来た」と言っていた。もちろんおいらは起きていた。そして覚悟を決めた。

 十年前に戻り、お父さんを助けに行くと、みんなは都会で暮らし続けることになるだろう。そんな場所ではおいらを受け入れてはもらえない。それ以前に、一緒に過ごした記憶もみんなの中から消えてしまう。みんなとは何の関係もなくなる。恐らくもう二度と会えなくなるだろう。だが、迷いはなかった。大好きなお父さん、そしてみんなのために、おいらは行くよ。

 こゆきちゃんの言葉が思い出される。

「みんなのことを愛してしまうから苦労が耐えないでしょう」

 確かにその通りかもしれない。でも良いんだ。みんなもおいらのことを愛してくれている。それをいつも感じていられた。


 それから二十分ほど経って、みんなの鼻息が眠っている音へと変わった。どうやら辛く長い一日を終え、眠りについたみたいだ。おいらは鉛でも背負っているかのように、重く感じる体を起こした。そして布団の上を静かに歩き出し、隣に寝ているみき姉ちゃんの顔に自分の顔を近付けた。

「今までありがとう、みき姉ちゃん」

 続いて、その隣で寝ているまき姉ちゃんのところに行った。

「おいら幸せだったよ、まき姉ちゃん」

 そしてたった今、お父さんの布団で寝たばっかりのみゆき姉ちゃんのところに行った。

「大好きだよ、みゆき姉ちゃん」

 最後に、お母さんのところに戻って来て、自分の体をお母さんのお腹に擦り寄せた。お母さんのぬくもりを感じる。

「もう少しだけ、このままでいさせて。もう少しだけ、お母さんの子でいたい」

 迷いはないと決意したはずなのに、みんなと別れるのが辛く感じ始めた。出来ればお別れしたくないよ。

 だがその時、寝ていると思ったはずのお母さんが、小刻みに動いているのを感じた。不思議に思い、お母さんの顔を見た。あんなに強いはずのお母さんがまだ泣き続けている。お母さんは、ゆっくりとおいらの頭をなでてくれた。これで完全に迷いは吹っ切れた。

「ごめんね、お母さん。おいら意気地なしで。でももう大丈夫だよ。みんな幸せにね。さようなら」

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