02-こんなアホみたいな求人に引っかかるやついんのかよ?
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だが、世界は回り続け、人生は否応なく進んでいく。そして、當真に選択の余地などなかった。
不運と失敗は、まるで影のように當真につきまとっていた。彼を人生のどん底へと引きずり込んでいく。ついさっき、彼は四十九回目の就職面接を見事に爆死したところだった。あり得ないほどバカげた記録だが――當真に言わせれば、自分はとっくの昔に正気を失っているらしかった。
冷たい霧雨の中、當真は重い足取りで家路についていた。もちろん傘なんて持っているわけがなく、全身ずぶ濡れだった。
(天気すら俺の味方じゃねえ)
當真は苦々しく思った。
帰り道の途中、彼は電柱の下で立ち止まった。そこには、雨でぐしゃぐしゃになった一枚のチラシが張り付いていた――文字がかすれて辛うじて読める程度の、求人広告。
「ギャハハハハッ! なんだこれ!?」
つい数秒前まで、空腹と絶望で今にもぶっ壊れそうだった當真は、そのあまりにもバカげた代物を解読した瞬間、突如としてヒステリックな爆笑を吹き出した。
「『急募:あめちゃんの助手! 給与上限なし! 全世界対応の福利厚生! 興味のある方は下記番号までご連絡を!』」
當真は痛む腹を抱え、ひゅーひゅーと息を鳴らした。
「どう見ても詐欺だろ」
目尻の涙を拭いながら、彼は呟いた。
「こんなアホみたいな求人に引っかかるやついんのかよ? しかも、あめちゃん? デビューしたてで世間のこと何も知らない地下アイドルか何かかよ」
スッ。
だが、笑いながらも彼の手は勝手に動き、ずぶ濡れのポケットからスマホを引っ張り出していた。脳からの指令を一切受けることなく、指がチラシの番号を打ち込み――発信ボタンを押した。
(は? はあああ?! 俺の手はこれが詐欺じゃないと思ってんのか?!)
プルルル……プルルル……ガチャッ。
「ハロー! あめちゃんじゃ!」
電話の向こうから、元気いっぱいの少女の声が弾けた。
「そなたは誰じゃ? して、わらわに電話をしてきた目的は何じゃ?」
當真は凍りついた。自分自身の突拍子もない行動にまだ頭が追いついていない。
「えっと……俺は……當真・鳳九です。チラシの求人に応募したくて……」
「おお! ついに! 応募者じゃ!」
少女の声は有頂天だった。
「さあ、言うてみよ。わらわの助手を志したそなたの動機は何じゃ?」
「俺の動機……」
當真は黙り込んだ。彼の頭の中で、四十九回の失敗した面接で暗唱してきた何百もの企業用テンプレ文句が、壊れたテープのように回り始める。『チームへの貢献』、『自己成長』、『御社のビジョンとミッションへの共感』――その陳腐な言葉のすべてが、不採用という結果に終わっていた。
綺麗に飾られた嘘にうんざりした當真は、ただ正直になることに決めた。
「俺の動機は……」
當真は長く息を吐き出した。
「働きたいから。少なくとも……今夜の飯が食いたい。腹は減ってるし、金もない」
沈黙。
直後、電話の向こうの少女が笑った――音楽のようにメロディアスな声。あまりにも甘く、當真の胸の奥で妙な胸騒ぎがするほどに。
「フフフフフッ! なんと正直な! わらわはそういうの、大好きじゃ!」
彼女は明るく声を張り上げた。
「よし――そなたを、あめちゃんの助手として採用するのじゃ!」
「はあっ!?」
當真はスマホを落としそうになった。
「ま、マジで!? 俺の五十回目の面接が……受かった!?」
「もちろんじゃ! だが、まずはわらわの元へ来てもらうぞ――」
ヴュオォォォォッ!
突如、當真の足元に青く輝く魔法陣が燃え上がった。複雑な幾何学模様を描きながら螺旋状に光が立ち上り、全身の産毛が総毛立つほどのエネルギーを放っている。
「なんだこれ!?」
當真はよろめいて後ずさったが、魔法陣は彼の足の動きにピタリとついてくる。
陣の中から触手のように光の糸が上に向かって射出され、當真の身体にきつく巻き付いた。彼は暴れ、必死にもがいたが――糸はさらに強く締め付けるだけだった。
「ギャアアアアァァッ!」
身体が魔法陣の中へと下に向かって引きずり込まれ、當真は絶叫した。手に握られていた求人チラシが灰になって弾け、風の中に散っていく。
次の瞬間、當真は姿を消した――跡形もなく縮小し、消え去った魔法陣と共に。
ドスゥゥンッ!
見知らぬ薄汚れた路地の地面に、當真は激しく叩きつけられた。全身がミンチ機にかけられたように痛み、視界はぐるぐると回り、教会の鐘のような耳鳴りが鳴り響いている。
「痛っ……ここはどこだ?」
ズキズキと痛む頭を抱えながら、彼はどうにか身を起こそうとした。
その路地はどこか狂っていた。壁は錆びた鉄、苔むした粘土、そして腐りかけた木材がデタラメに継ぎ接ぎされたパッチワーク。奇妙な角度で突き出した銅パイプからは、シューシューと蒸気が噴き出している。頭上には年代物のガス灯がぶら下がり、薄暗い黄色の光を投げかけていた。路地の隅には、巨大な歯車、奇妙な色の液体が詰まったガラス管、時計のようにチクタクと音を立てる小さな機械など、ガラクタの山が積まれている。
「Hip-hop zone……?」
壁一面に描かれたネオンサインの壁画に目を細め、當真は呟いた。
微かなヒップホップのビートが、金属のぶつかる音や蒸気機関の噴気音と混ざり合い、彼の耳をピクつかせた。肺もきゅっと締め付けられる――近くの家々から立ち上る煙突の煙が冷たい夜霧と混ざり合い、空気を重く淀ませている。
(ここは日本のどこでもない)
混乱して瞬きをしながら、當真は思った。
(だけど……なんでこんなに懐かしい感じがするんだ?)
彼は上を見上げた。頭上の物干し綱には、金属のアクセサリーがジャラジャラと取り付けられたみすぼらしい着物が干されている。視界の隅では、ダボダボの服を着て木下駄を履いた子供たちが数人、駆け抜けていった。その場所全体が、蒸気技術と現代のストリートカルチャーで魔改造された、日本の封建時代のスラム街のようだった。
「もしかして、ここは……」
震える足で立ち上がりながら、當真は呟いた。
彼がまだこの状況を理解しようと必死になっていた、その時――
「ようこそ、當真くん!」
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