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第九話「オムカレー」
「いいお店ですね、苦地さん」
「仕事終わりによく来る場所でして、どのメニューも量が多くて食べ応えがありますよ。」
この店は、我もよくお世話になる近所の食事処だ。
特にオムカレーが美味でな、
頬が地獄の底まで落ちてしまいそうなほどだ。
「それは興味深いですね。」
「……」
「……」
我たちはしばらく互いに無言で悩んでから、注文をした。
何度も来ているが、
月末に近いと期間限定メニューか、お気に入りかでいつも悩むものだ。
…そんなこと考えているばかりではいけない。
こやつは何か掴んでいるかもしれんのだからな。
料理はノマーベ監督と談笑していたら、
7分程度で運ばれてきた。
「おいしそうですね」
顔の筋肉のゆるみが目に見えるほどだ。
予想通り油断した。
これなら
「おいしい」
「……」
「はは」
こやつ、いい顔をする。
少なくとも、我の知る賢そうなやつには見えん。
こんなある意味一番純粋そうなやつを疑うのは
さすがに杞憂か。
人間がいくら嘘つきでも、
みながそういうわけではないか
我が悪い……
頭の地獄絵図をなくすためにも、
我はオムカレーをただ食べ続けていた。




