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第四十四話「仮宿」
「…お邪魔します」
「気にすることはない。…気軽にくつろいでくれ」
ひとみがパスワードを間違えたせいで寝床を失った小森を
我は家に招き入れておった。
「……」
ぼろぼろと飴が零れ落ちそうになるポケットを抑えながら、
小森はひっそりと座る。
「悪魔統轄長…本当にいいんですか」
「別に構わない。…好きに使ってくれ」
誰かのせいでかわいそうな状況になってしまった小森には、
ベッドくらい貸してあげなくてはな。
床で寝るのは昼間痛めた腰にダメージがいきそうだが、
…まあ、良い。接骨院での治療費は、
すべて、ひとみに請求することにしよう。
今日はずいぶんと我に嫌がらせをしてくれたからな。
「ほれ、一杯飲むか、小森」
「グレープとか…あります?」
「グレープか、ちょうど…ひとつあるな」
詰め込みの合宿から解放されたような勢いで、
酒の匂いと炭酸の刺激が部屋中に溢れ出していく。
「……」
飴の甘さとグレープのほんのり苦いのが合うのかもしれんな。
我はつまみと合わすばかりで、試したことがないからわからぬが。
「飴とグレープは合うのか」
「わかんない…ですけど、なんか、たまに、苦いのがあると…いいみたいな…感じです」
「そうか」
今度、試してみるか。




