第四十三話「パスワード」
「小森にも協力してもらうからな」
会社に戻った我は、
ずっと会社の金庫で引きこもっていた小森を
問い詰めておった。
「……」
「…悪魔統轄長…」
そんな顔で見られても困る。
そもそも…
お主が勝手に金庫のパスワードを変えたのが、
問題なのだ。
あと、今は人手も必要だからな。
お主にもたっぷりと働いてもらわなくては。
「……」
「とにかく、重要書類用金庫のパスワードを教えろ」
「数字は覚えてないんです」
「?…どういうことだ」
パスワードを覚えてないことなんてあるものなのか。
いや、覚えていなければ、そもそも出入りもできないはずなのだが。
メモ…くらいあるはずだろ…小森。
「いつも、打っているとパスワードって忘れませんか。いつも使うパソコンのパスワードとか…感覚でなんとなく打つから…」
「なるほどな。わからないことはない」
小森の言うこともわからないこともないな。
漬物のようにしっかり染み込んだ習慣は、
ほぼ無意識のようなものだしな。
「なら、まぁ、よい。実際にお主が開けるところ見て、パスワードを…」
パスワードが違います。24時間後にもう一度お試しください。
なお、再度間違えますと一週間解除不可となりますので、
ご注意ください。
静かに響き渡る金庫のナレーション。
「あっ」
「……」
「……」
なぜ、我が頭を悩ませるか。
その答えは最近はいつも、新田芽ひとみ、ひとみ新田芽。
「……」
今日もカセットテープから、
ポンコツ新人の声だけが再生され続ける。
一昔前でも捨てられそうな。




