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第三十八話「欠如」

「……」

「……」

我と血嬢(けつじょ)は、ベンチに座ったまましばらく黙っておった。

まるで、新しい春風を待つかのように。

「ひとつ聞きたいのだが、なぜお主がここにいる。」

「お嬢様が久しぶりにお顔を出された気配がいたしまして」

相変わらず変わったやつだ。

最新鋭のソナーを積んでいるわけでもないはずなのだがな。

「そうか、なら行くべき場所は同じということだな」

「まさか、ここ…悪魔様もお嬢様にお会いなさるのですか」

「少し用があってな」

我もこのままの状態では、観覧車までいけないからな。

今回ばかりは、こやつの助けを借りることにしよう。

「……」

「血嬢」

我が声を発するときには、日傘で作られたような大きな影があった。

「それでは観覧車に赴くことにいたしましょう、悪魔様」

ふと、上を見上げると血嬢が我に手を差し伸べおった。

「……」

「お主は、昔から本当によく他の存在を見ておるな」

「背筋が曲がっておられましたから」

人間界と地獄での縛りは違うと言えど、

それで特定できるというのがお主のすごいところだ。

「……」

我たちは静かにゆったりとリムジンに乗り、

埃の舞う車内とチンダル現象を眺めながら、

毒のよくしみ込んだハンカチを口元に当てるような、

そんな空気のまま観覧車に着くまでの時間を共にした。

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