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第二十一話「入界」
「いい景色だ」
夜明け前、目に付く限り一番高い場所に飛んでみたが、
ここからの景色は存外悪くない。
「……」
「そろそろ、鳥の嘆く頃か」
カー、カー
来たか、山鴉
「助かった。これは等実への文だ」
カー、カー
いつ見ても奇怪な存在だな。
人間界で見るとただのカラスだが、
地獄だと山羊の角を持ち、三つ脚と四つ翼で
重心を安定させる生物に変わる。
なぜ、こちらだと見た目が変わるのだろうな。
こっちの縛りはまた違うのか?
まあ、我は変わってはおらぬからな。
今回は問題ない。
…さっきより高度が落ちておるな。
まさか…
パリパリ、パリパリ
小さな破片となって、空に消えていく翼
「……」
「早く地上に降りなければな」
翼が薄まっていくにつれて、落下速度が増していったが、
さっきコンビニで買ったビニール傘を我はさっと開いた。
そのおかげもあって、衝撃が緩んだ状態で、地面にきれいに着地できた。
「なんとかなったな」
手紙を開いてみると、
「…まったく、等実のやつめ」
手紙の中には、縮尺のわからない地図と
ある橋の名前が記されていた。
我の持ち物も、翼とともに何かしらの変化を受けていたようだが、
いつの間にか使い慣れておった。
これは、あとからふと気づいたことではあるが。




