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第十六話「暇」
居酒屋「暇」前
「ここか」
夕食をどうしたものかとぼんやりと悩んでおったところ、
遊鬼から電話がかかってきた。
『今起きた、飯いく、一緒どう?』
ということらしい。
我も外食するか、悩んでおったからな。
ある意味、ちょうどよいタイミングだった。
カラン、カラン。
「いらっしゃいませ」
「一名様ですか?」
「いえ、待ち合わせしておりまして」
さて、遊鬼はどこにおる…
「悪魔長、久」
「久しぶりだな、遊鬼」
遊鬼はどこかと見渡すまでもなく、入口に一番近い席におった。
遊鬼のことだ、どうせ考えるのも面倒だったのだろう。
「今日は誘ってくれて助かった、遊鬼」
「こちら、助」
略しすぎるせいで、やはりわかりにくいな。
まあ、電話で話すときよりは幾分かましだが。
「最近、そっちはどうだ。うまくやっておるか?」
「良。」
「…そうか。それは良かった。」
…よく考えれば、休日に仕事関係のことばかり考えておるな。
我の頭はどうも硬い。
「今日、奢る」
「…ここは我が出す、心配するな」
遊鬼のやつ、今日は妙に真剣な顔をしておるな。
「悪魔現世統轄長、たまには気を抜いたら?」
「……」
「誰かの施しを受け、甘えることも大切だよ」
「…そのとおりだな」
我はお冷で、
こみあげてくるなにかを喉の奥に流し込みながら、
メニュー表を淡く眺めた。




