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第十五話「狐とチューハイ」
時刻12時24分
「ふぁー」
泣いて疲れて、そのまま寝てしまったのか、我は。
体の関節がバキバキと音を立てないよう
ゆっくりと立ち上がった我の目に映ったのは…
「なんだ、この部屋は」
鞄とスーツをベッドに放り投げ、テレビはつけたまま、飲食途中の品々。
管理職とあろうものが…こんな部屋では部下に示しが付かない。
「とりあえず、この重い空気を逃がすとするか」
ベランダにつながる窓を開けると、
昼にしては涼しい風が吹き、晴れておったのに、小雨が降り注いでいた。
「これが狐の嫁入りというやつか」
晴れておるのに、雨が降っておるというのは何とも不思議なことだ。
矛盾を抱えておるのだな、人間界も。
我は冷蔵庫から糖質ゼロの桃チューハイを持ち、
ベランダに折り畳み式椅子を広げた。
「これもまた一興なのかもしれな」
片手にチューハイを携えながら、
体を丸めた我は空を眺め、
動いていないようで、実は速く流れている雲を
目で追いかけ続けた。
冷水の中にあるワカメと小魚のうまみが溶けだしたころ
我はそうめんを昼食にするかどうか、悩んでおった。




