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第二章 ニューライフ 09

 もし体内から全ての魔力が失われたら、肉体は魔力の影響を受けて徐々に崩壊を始めることになる。


 要は体中が癌に冒されるということなのだが、すぐにそうなるという話ではない。


 今はアルラの体内に残った魔力に外部から術式を渡し、脊椎に存在する神経組織に集中させる。


 さすがに全ての神経を網羅することは不可能であるが、束となった二次感覚神経を魔力で麻痺させてしまえば遮断は可能だ。


 ただ、魔力の操作を誤ると一生下半身が麻痺してしまうことになりかねない。そうなれば、足一本失うより酷いことになる。


 もちろん、そんな失敗はしない。


 魔力をほとんど使い切り、希薄になっていることも幸いしている。


 二次感覚神経を麻痺させるのに必要な魔力は、あるかないか分からないくらいで十分だからだ。


 寧ろ少しでも魔力量が多すぎると二次感覚神経を破壊しかねない。そうなれば下半身は永遠に動かせなくなる。


 かといって少ないと感覚遮断がうまくいかずに麻酔効果が得られない。


 その微妙な魔力操作を行うのに、阻害要因がないのはありがたい。


 魔力による麻酔を行うと同時に、足の接続を行う。


 まずいったん炭化した切断面を魔力操作でパージする。


 同時に真水の中につけた足を合わせる。


 最初に魔力を流して切断された血管の接続を行う。


 主要な動脈を、次に静脈、最後に神経の順番でつないでいく。


 まだ切り離された骨同士は固定されていない。


 微妙な調整を行ってなるだけ自然な形になるように位置を調整する。ここで失敗すると変な形で固定されて後遺症が残ることになる。


 位置の調整が終わると、土魔法をカルシウム限定で使用し接着する。


 接続面の細胞を活性化することで融合させる。


 最後に魔力で塞いでいた血管を解放し足への血流を再会する。


 神経を繋ぎ治したのだ、すぐに元通りというわけにはいかないが、リハビリを行えば元と同じように足を動かすことが可能となるだろう。


 問題なのはどうリハビリをさせるかということだが、それに関してはあまり心配してはいない。


 なんと言ってもライゼは赤ん坊だ、これから先アルラに手間をかけさせる方法などいくらもある。


 それ程時間をかけなくても、元の生活を送ることは可能となるだろう。


 治療を終え、完全に魔力を消し去ると、ライゼは思いっきり泣き声をあげる。


 乳幼児に相応しい鳴き声を。


 しばらくすると、遠巻きに感じていた気配がじりじりと近づいてくるのが分かった。


 派手なアークデーモンとの戦闘が行われていたのだ、もう大丈夫なのだろうかと半信半疑で様子を見ながら近づいてきている。


 遠くの方から早い速度で接近している気が幾つかある。


 その中でよく知っている気がひとつ。


 リビン=フェイ……父親だ。


 どうやらこれで一息ついたようだ。


 ようやくライゼは安心する。


 乳幼児にとしては、いささか働きすぎたような気もするが、どうにか全てうまいこと乗り切ったようである。


 駆けつけたリビンは自分の妻はそっちのけで、真っ先にライゼを抱き上げる。


 一通りどこにも異常がないことを確認した後、一緒に駆けつけた仲間にライゼを預けてアルラを抱き起こす。


 体中あちこち傷だらけだが、致命傷がないことを確認すると大きく息を吐き出した。


 安心したのだろう。


 そのまま妻を抱き上げると、


「こっちは大丈夫だ、一体何があったか分かるか?」


 リビンがアルラを確認している間、周囲の状況を確認していた仲間に訪ねる。


「見ろよ、アークデーモンの首だぜ、こりゃ。こんなの一人で倒しちまったんか。すげぇぜ、まったく」


 半ば絶句しながら残ったアークデーモンの残骸を蹴飛ばす。


「それにしても、どうやりゃこんな穴が開くんだ?」


 広い穴ではない。


 ただ、底が見えない。


 結果的にアークデーモンの自爆した影響によるものだ。


 地獄の炎は未だ消えず、地面を溶かし続けている。


 何処までいけば止まるのかなど、誰にも分からない。


「まぁ、アークデーモンが街中で暴れ回って、被害者が一人もいないってのは不幸中の幸いだ。アルラに感謝しなきゃいけねぇな」


 穴の底を覗いていた男が漏らすように言った。


「こんな時にすまねぇ。いったん(うち)によってくる。すぐにギルドに行くから先に帰っててくれ」


 リビンはアルラを片腕で抱え直すと、預けていたライゼを受け取りながら告げる。


「いや、急ぐ必要はねぇぞ。スタンピードは回避されたのは間違いなさそうだ。なんでか知らないが、ダンジョンそのものが無くなってりゃあ、当然だがな。後はダンジョン崩壊を生き延びたモンスターを掃討できりゃ完了だ。それならパーティごとの対応で十分だ。それよりアルラをしっかり看てやんな。町と息子をたった一人で守り抜いたんだ。そのくれぇのことじゃ借りは返せねぇくらいあるぜ」


 リビンと一緒に駆けつけた男が力強く言った。


「すまねぇ、そうさせてもらう。恩に着るぜ」


 男の言葉にリビンが感謝の意を伝える。


 気を失ったままのアルラと泣き止まないライゼを抱えたリビンは、力強い足取りで自宅に向かって歩き出した。






 第二章 ニューライフ < 了 >


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