選択と結果
はじめに
何かをやると言う事は結果が伴う。良い結果なら問題はないが、それが害悪を撒き散らす結果となると話は違ってくる。「立派に戦って死んだからその話は終わり」とは言えない。
1.綿西の戦い:軍神古賀聯隊長の寓話で著名な戦い。古賀中佐は部下をたくさん死なせて自分も戦死して、反乱鎮圧(COIN)作戦で戦力の小出し、分散は駄目だよと身をもって教訓を遺してくれた。
満州事変の起こった昭和6年(1931年)、第2師団の投入によって北満は日本の勢力圏に入った。目の上のコブを排除したが、南満の錦州には張学良軍の別動隊が残っていた。その戦力は58,000人、馬匹3,000頭、火砲70門と侮れない規模だった。日本はこれら武装勢力を兵匪や匪賊と呼称し、第2師団、第20師団から2個旅団を派遣して昭和6年12月末から討伐を行った。昭和7年1月3日には綿州城に入城し、目標を達成すると引き続き遼西一帯を掃討する事になった。だがすんなりと進んだ訳ではなく、問題はその後にも発生した。
朝鮮羅南の騎兵第27聯隊(聯隊長古賀中佐)は昭和7年1月5日に綿州を出発し、6日には南西50Kmにある綿西に到着した。錦西は山間部の街で7日2100時、匪賊約500の襲撃を受けるが2230時には市内から撃退。翌日には市内の捜索を行い隠匿されていた武器を押収した。
0400時、松尾少尉指揮下、輸送監視隊(26名)は師団司令部のある綿州に帰還すべく出発したが、錦西周辺にはおおよそ5,000の敵が分散しており、後方連絡線が遮断されていた。この為、匪賊の襲撃を受けて通訳、騎兵2を含めて全滅(死体から下着まで取られ、肝臓、陰茎を切り取られていた)した。これが第1の悲劇である。
斥候を放ち周囲の状況を把握した古賀中佐は、9日0930時(0940時と書かれている物もある)、南西の敵を撃破すべく騎兵50、歩兵40からなる兵を率いて討伐に向かった。内訳は騎兵第27聯隊本部、同第1中隊(山田大尉以下、臨時に4個小隊編成)、騎兵機関銃隊(星野大尉指揮下、HMG×2)と歩兵第73聯隊の1個小隊(石野中尉以下28名、騎兵機関銃隊よりLMG×4を配属される)だけだった。1000時、綿西南方の上坡子付近で敵の攻撃に遭遇した。
1250時、本隊が戦闘で拘束されている間に約600の匪賊が街に襲来し侵入した。聯隊本部を置いた建物の留守番、軍旗護衛小隊は数で勝る敵に対して屋上に上がって迎撃した。これが玉砕覚悟にまで追い込まれた第2の悲劇である。
1600時に本隊は上坡子付近の遭遇戦での討伐を終えて街に帰還するが、襲撃を知ると北門から親泊中尉、西門から古賀中佐、山田大尉、東門から中原中尉、石野中尉、南門から丸山中尉がそれぞれ兵を率いて突入した。聯隊長戦死に始まり、将校もどんどん死んだり負傷して山田大尉が代理として指揮をとった。
電話線が切断されておらず残っていたので応援を要請した。無線、電信等の通信機器も満足に配備されていなかった時代では奇跡に近い。
10日に足立大隊が到着、12日に依田旅団から1個砲兵中隊、1個歩兵中隊が到着し敵は撃退した。古賀中佐の指揮・統制は正しかったのか多くの課題を残して聯隊の戦いは終わった。
2.アメリカさんの場合:レッドウイング作戦って感動する話か?
軽装備の騎兵はCOIN作戦に活躍する。しかし投入された戦力が少ないと被害も増えると言う事を古賀中佐の事案は実証した。
次に扱うのは現代のアメリカ軍で映画「ローン・サヴァイバー」でも有名になったOperation Red Wing、アフガニスタンで行ったCOIN作戦は記憶に新しい。
2005年6月28日の戦闘で19人が戦死、SEALs史上最悪の作戦となった。
Operation Red Wingは初っぱなから躓きを見せた。Kunar provinceで敵の指導者をぶち殺す為に偵察任務を行っていたティームは4名。一般人を捕まえたが解放し、その後に山をタリバン兵に包囲されてしまった。敵の装備はAK-47、PK軽機関銃、RPG、82mm迫撃砲と火力は高くSEALsは3名がKIAとなった。
救助に向かったSEALs(ティーム10及びDelivery Vehicle Team 2)を乗せた160th SOARのCH-47チヌークは敵のRPGに撃墜されてしまった。死者の追加である。
なんやかんやとあって生存者1名は後に収容され、標的は後にお巡りさんに射殺されている。
おわりに
COIN作戦に民衆の支持は不可欠である事は過去の歴史が物語っている。綿西に前進した騎兵第27聯隊は住民の歓迎を受けたとあるが、匪賊の襲撃や市内に武器を隠匿していた事例から考えて、すべてが不十分な状況で戦闘になった。航空支援も砲兵の火力支援もない聯隊とは名ばかりの中隊規模の戦力で全滅しなかったのは奇跡と言える。騎兵の本来任務は偵察と追撃にあり、頑強な敵の抵抗に遭遇した場合は脆すぎる。
SEALs偵察ティームの場合、現地住民に救助された事が大きな意味を持つ。




