12、休憩
12、休憩
「いい感じ」
最初と同じ要領で戦闘を繰り返すこと数十回。
一刀で終るとはいえ度重なる戦闘と、敵を求めてかなりの距離を歩き続けたので休憩を入れることになった。
一度、樹海から出るのかと思ったが魔物が入れない地域があるという。
元はボスがいた部屋らしい。撃破後は攻略の中継点になるのか。
ミナモの案内で到着すると、そこだけは機製樹木の天蓋がなく太陽の光が届いていた。
いくら回廊の光景が幻想的でも何時間も見ていれば飽きる。体の負担以上に精神的な疲労が癒される気がした。
それぞれ適当に座り込んで簡単な食事をとる。おにぎり、うまい。
時計のないこの世界で正確な時刻はわからないが、数時間は戦っていたのだろう。
空は茜色に染まっていた。異世界でも夕日は赤いんだなとぼんやり考えているとミナモが先程の感想を漏らした。
「そうなのか?」
ミナモは小さく頷いた。
「新人では破格」
「神具、がな」
俺がすごいんじゃない。アメノムラクモがすごいのだ。
加えるならアヤが請け負った防御の点も問題なかった。
最後の神器、勾玉の首飾り――ヤサカニが今も俺の首から下げられている。
ヤサカニは防御の神具で俺の周囲に不可視の防御フィールドを用意する。
それがまた超高性能。ウルフの体当たりを完全にシャットアウト。牙も爪も届かなければ衝撃まで吸収してしまうのだから驚きだ。体格的にのしかかられたらどうしようもないはずなのにちっとも重さも感じられなかった。
アヤ曰く、これに全属性吸収・反射、自動回復のスキルまであるとか。チートすぎる。
(と過信してスキルを連発するとSP切れで死にかねないんだが)
今後もヤサカニは常時展開がいいだろう。神具は実体化しているだけならSPの消費はないし、首飾りなら邪魔でも不自然でもない。
何も危険は樹海だけではない。当たり前だが人間を殺すのは魔物だけではないのだから。
「ソウタもすごい」
つらつらと考えているとミナモはまだ俺を見ていた。
それにしてもミナモは俺の目を一直線に見つめてきて戸惑ってしまう。伊達に目が死んでいるとか言われてないからな。誰も目を合わせたがらないんだ。
「俺の?どこが?」
謙遜ではなく心底疑問だった。
「初陣の戦士は大体なにもできない」
あー、まあ、な。
俺だってパニックは起こしかけていた。
正気に戻れたのはただ単に神器の圧倒的な性能という余裕があったからだろう。倒せる、死なないという保証があったから動けた。
他の人なら動転するのが普通。
「神具のおかげだよ」
「違う。ソウタは度胸がある」
「やめてくれ。買いかぶられて調子に乗って失敗したくない」
「……わかった。そういうことにしておく」
意外に頑固だな。いや、意外でもないのか?
ミナモなりに根拠があるのかもしれない。
まあ、話題を変えておこう。
「すごいとかの話ならミナモの方だろ」
間合いを詰めた疾走。一撃でウルフを断ち割り、斧槍を投げ放つ腕力。
自然と視線がミナモの手足に向かってしまう。戦士らしい鍛錬の見られる手足だが、それでも女性らしいたおやかさは確かにある。
あんな奇麗な手足のどこにあんな筋力が隠れているのか。
「ミナモ様は軽度の機械化をされているのですね」
「ん」
アヤの指摘にミナモは頷いた。
「機械化……たしか生まれつき機製樹木の胞子を受けた人間の症状だったか」
「はい。軽度、中度、重度、完全の4段階があり、完全にまで至ってしまうと人間ではなく、魔物になってしまいます」
「あたしは全身の筋力が機械化してる」
人間離れした身体能力はそれでか。
「戦士には多いのか?」
「ん。名前の知られた戦士なら大体」
機製樹木を倒すのが機械に体を侵食された人間とは皮肉な話だ。
いや、逆なのか。機製樹木を倒すのに機械の力を使わなければならない、か?
どちらにしても楽しい話題ではなさそうだな。話題のチョイスを間違った。
「あー、この後はどうする?」
現在のペースが戦士として上々なのか判断できない。
「これだけ倒せたら一週間は生活できる」
おう。いいじゃないか。
なら、俺の初期目標はクリアだ。初めての戦闘に生活費の確保。
となると後はミナモの判断だ。ミナモが定めた目標がクリアできれば撤退もありだろう。
「もう少し戦いたい」
「わかった。じゃあ、行くか?」
「いいの?」
「ここまで俺の目標を優先してもらったからな」
受けた分は返さないといけない。ギブ&テイクだ。
心なしか柔らかい顔でミナモが頷いた。
「ありがと」
「お、おう」
過剰な反応はしないように意識して立ち上がる。
ミナモは何でもストレートだから俺のような捻くれた奴は直視できない。見透かされていると思うのか、汚してしまうと思うのか。
「マンガの読みすぎだ」
「行くよ?」
準備を終えたミナモに片手を上げて答えた。




