強制
ルノーの発言にイラつきを覚えた
...いや、そう見えてるんやったらこっちの思惑通りってだけや。
「早く元の世界に帰るために努力しているだけですよ。」
「そういう優等生な言葉は好きじゃないんだけど?」
目の前の机に腰掛け挑発的に顔を近づけてくる
なんかめっちゃいい匂いする。
「貴女に好かれる必要はありません。講義さえしていただければ、それで十分です。」
なんや、胸の中を無理矢理掻き回されてる感じがする。
「へぇー。この私を前にしてそんな事言っちゃうんだー?」
首元のローブの留め具をパチンと外す
濃い紫のローブは床に落ち
中から露出が多いわけではないが
妙に艶めかしい服を纏った。
まるで芸術作品の様に美を体現したような身体が露わになる。
この世界美人多すぎひんか?異世界物のお約束的なやつか?
視界にエフェクトがかかって見える気がする!
ドクン!
ドクン!!
胸が苦しい。なんやこの違和感。。
一目惚れの時に似てるけど、
強制?されてるような気持ち悪さがある、、、
強制!?まさか!
ステータスオープン!
名前:白銀 上総 76.4
年齢22
クラス:勇者
Lv.6
HP:25
MP:12
ATK:55
DEF:55
RES:25
スキル:ナイフ術Lv.3-1/3 精神攻撃耐性Lv.2-1/2 回復魔法Lv.2 剣術Lv.2 礼儀作法Lv.2
痛覚耐性Lv.1 呪い耐性Lv.1
ギフト:生物のステータスに干渉し、奪い与えることが出来る
状態異常はないか。
なんや、この気持ち悪さ。
って!精神攻撃耐性めちゃくちゃ上がってるやんけ!
やっぱこいつなんかしてるわ!!
気づいた瞬間に、精神攻撃耐性がLv.3に上昇した。
同時に視界のエフェクトが消え、心臓も落ち着きを取り戻した。
マジでムカつくな、、、
魅了されてるフリを続けて
満足そうなルノーの頬に手を添える
〝干渉〟
名前: フィルミーヌ・デュ・ルノー 41.1
年齢28
クラス:大魔術師
Lv.117
HP:768
MP:6827/7674
ATK:680
DEF:236
RES:65
スキル:水属性魔術Lv.5 火属性魔術Lv.4 風属性魔術Lv.4 土属性魔術Lv.4 雷属性魔術Lv.3 変身魔法Lv.10【MAX】幻惑魔法Lv.5 MP急速回復Lv.8 痛覚耐性Lv.7 状態異常耐性Lv.5 HP回復速度上昇Lv.5 料理Lv.5 狩猟採取Lv.4 精神攻撃耐性Lv.4 回復魔法Lv.3 生活魔法Lv.2 魔視Lv.1 礼儀作法Lv.1 ...
ヤバすぎ。スキルが見きれんくらいある。
幻惑魔法、これを仕掛けとったんか。
頬に添えた手でつねってやった。
「イタタタタタ!うそ!?レジストされるなんて。」
突如フェルミーヌの耳が短くなり、顔には傷跡が浮かび上がる。
フェルミーヌは急いで手を払いのけ
ローブを纏い、帽子を深く被る。
その場で数秒の沈黙が訪れる。
双方自身の状態と状況整理を要していた。
一方は、精神攻撃の異常が残っていないかを確認した。
一方は、自身の身に現れた忌むべき過去と生きる目的を再確認した。
「ふぅ...いきなりごめんなさいね。」
帽子の鍔を持ち上げ、困った様に笑いながら謝罪した。
その顔には傷跡はなく
絶世とは言わないまでも、整ったエルフだった。
「お気になさらず。精神攻撃耐性のレベル上げが出来たので訓練に取り入れてもいいかもしれませんね」
爽やかに対応して見せるとフェルミーヌは面白くなさそうに口を曲げた。
「じゃあ、次の講義から耐性をつけるために幻惑をかけながらしましょ。」
フェルミーヌはニッコリと笑顔を向けて両手を差し出してきた。
「?。。はい、よろしくお願いします」
特別警戒もせず、不意にその手を握ってしまった。
フェルミーヌは一切表情を崩すことなく力強く握り返してきた。
握り返すと言うより拘束してきた。
不吉な予感に背筋が凍る。しかし、もう遅かった。
体格では圧倒的に勝ってるのに、振り解かれへん!
これがステータス差の暴力ってやつか!
「今日の講義は師匠直伝の器合わせをしまーす!」
「ルノー先生?う、器合わせとは一体...」
「私のことはフェルミーヌと呼びなさい」
笑顔が一瞬にして曇り、手を握る力が強くなる。
なんでこの世界の貴族はファミリーネームで呼ばれるの嫌がるねん‼︎
「わ、分かりました。フェルミーヌ先生、手を離してもらえますか?」
「器合わせは魔力が多い人から少ない人へ流し込むことで上限を増やすことよ」
それは、願ってもない。魔力は多いに越したことはない。
「普通は2人の間を循環させて少しずつ拡張していくんだけど。
あなた生意気だから師匠のやり方でいくわね♡」
フェルミーヌの右手から何か伝わってくるのを感じる。
それは腕から胸へ徐々に流れ、下腹部に流れていった。
下腹部から全身に分岐していく
頭の先から足の先までフェルミーヌから送り込まれた魔力で満たされていく。
これは、気持ちいいな。
下腹部を中心に全身を巡り、右手からフェルミーヌの左手に送り出される。
魔力の通り道、魔力回路が上総の身体に作り上げられる。
それを確認するとフェルミーヌは小さく唇を舐めた。
「いくわよ!」
心地よい魔力の循環が止まり、次の瞬間両手から膨大な量の魔力が濁流のように流し込まれる
!! 痛ってぇ!!
出来たばかりの魔力回路に無理矢理膨大な量の魔力を流し込まれる。
身体中がひび割れる様な激痛が走った。
下腹部にどんどん魔力を溜め込まれていく感覚が苦しい。
「締めちゃだめよ?力を抜いて受け入れなさい」
無茶言うな!力抜いたら身体裂けるわ!
体内の魔力の圧力がどんどん上がっていくのを感じる。
四肢はもちろん心臓や眼球、脳に至るまで高圧の魔力に犯されていく。
やばい!少しでも圧逃さな爆散して死ぬ!
「ふぅーーっ!ふぅーーーっ!!」
目を瞑り、少しずつ全身の力を抜き、注ぎ込まれた膨大な魔力の流れに集中する
身体中に太い血管の様に魔力回路が広がっているのを感じる。
しかし、圧力でひび割れ、破裂しそうになっている。
血管なんやったら
分岐させて細く長く広げる!
魔力回路を細い魔力回路で繋げ、より体の隅々に循環させる。
なんとか魔力圧力を分散させることに成功した。
同時にフェルミーヌも魔力のほぼ全てを注ぎ切ったようで魔力の送り込みが止まった。
目を開けると、フェルミーヌの身体の周りに薄っすらと光の幕が張られているのが見える。
「ホント生意気ね。まだ上限に余裕があるなんて。」
息も絶え絶えになりながらフェルミーヌが恨めしそうに睨む
ステータスオープン
名前:白銀 上総 76.4
年齢22
クラス:勇者
Lv.6
HP:25
MP:5839
ATK:55
DEF:55
RES:25
スキル:ナイフ術Lv.3-1/3 魔力操作Lv.3 精神攻撃耐性Lv.2-1/2 回復魔法Lv.2 剣術Lv.2 礼儀作法Lv.2 痛覚耐性Lv.2 呪い耐性Lv.1
ギフト:生物のステータスに干渉し、奪い与えることが出来る
すごい。力が漲る。
力が体を廻る感覚がとても心地いい。
新たな力に酔いしれていると、フェルミーヌが握る手に再び力が入る。
「貸したものは、、、ちゃんと返してもらうわよ。」
無理やり流し込まれた大量の魔力が、今度は急速に吸い出されていく。
!?抵抗できひん!吸い尽くされる!
「無駄よ、魔力操作で私に敵うはずないじゃない」
魔力を吸い尽くしたフェルミーヌは手を放す。体に力が入らない上総は椅子から転げ落ち、床に大の字に倒れてしまった。
「取り立て完了ね。次の講義も器合わせから始めましょう」
フェルミーヌは手をヒラヒラと振りながら扉の方に歩いていく。
「ふぇ、フェルミーヌ先生...倦怠感がヤバいんですが?」
「ただの魔力切れよ。休んでいれば回復するわ。何だか身体の調子がいいわ♪」
そう言い残すと意気揚々と教室から去ってしまった。
まじか。身体ダルすぎて動けん。
MP12/6839上限の伸びがエグいな...ってか吸いすぎやろ。
回復速度は...1分で1⁉︎
全快するのに4日以上...ほぼ5日かかるやんけ!
この倦怠感はいつ無くなるんや。
物語では、瞑想してMP回復を早めるキャラクターがおったはず。
...どのみち動かれへんし、試してみるか。
とてつもない倦怠感に耐えながら胡座を組んで瞑想の姿勢を作る。
ステータスは表示しているが、瞑想に集中する。
...30分くらい経ったか?
だとしたら回復量は30くらいのはず。
MP57/6839 45も回復してるなぁ。ちょうど1.5倍か。
スキルには瞑想Lv.1が追加されていた。
瞑想のスキル上げはマストやな。
そこから上総は瞑想を再開することで
MP回復速度上昇と瞑想Lv.2を獲得し
活動出来る最低ラインである1割を2時間半で達成した。
「やっと動ける。回復魔法の使い方は次の機会か。」
いまだ癒えきらぬ倦怠感を抱えながら上総は教室を後にする。
なんとか自室に戻った上総は、食事と入浴とトイレ以外は瞑想をしてMP回復を再開した。
「あの、シロカネ様?お休みになられるならベッドをお使いになられてはいかがでしょうか?」
ナタリアが不思議そうに提案する。
「今日の魔法講義で器合わせをして急に上限が上がったからしばらく動けなかったんだよ。瞑想をしてなんとか動けるまで回復したけど、大変だった・・・」
はははと笑いながら答えるとナタリアは青ざめた。
あれ?このパターンって...
異世界ものやと『また俺何かやっちゃいました?』ってお約束やけどやられる側なのは聞いてないぞ!
「器合わせを限界まで1日でやったんですか⁉︎しかも動けるようになるまで自力回復って...」
あぁ、ナタリアがまた引いてる。俺がヤバイやつ認定されるのは解せんな。
「通常器合わせとは数日かけて徐々に上限を上げつつ、多い人から足りない分を補いながらするものなんです!」
無理矢理魔力ねじ込まれた挙げ句に全部綺麗に吸い取られたんやけど⁉︎
「それとめいそう?ですか?MP回復なら睡眠をとるべきです!尚更ベッドでおやすみください!」
演習場での一件のせいでナタリアの信用を失ったのか聞く耳を持ってくれない。
変に畏まらずに意見を言ってくる距離感は話しやすくて嬉しいんやけど、そのせいで世話焼きになってる気がする。
しゃーないな。睡眠と瞑想の回復速度の比較実験としようか。
22時時点でMP2730/6839 MP回復速度上昇Lv.2で1分に3回復するようになった。
瞑想Lv.3で回復速度3倍になって、9回復...。
魔力切れの倦怠感に体力を削られていたため、ナタリアに促されてベッドに入り、気絶するように眠ってしまった。
「おはようございます!シロカネ様」
ナタリアの元気な挨拶で目を覚ました。
「おはようございます。ナタリアさん」
一瞬で寝落ちしてもうた。比較実験はどうかな。
「今は何時ですか?」
ナタリアは小さく笑い
「午前11時ですよ。とてもよく眠られていて安心しました!もしまた演習場に行かれていたらどうしようかと心配していましたから」
「あはは。おかげさまでぐっすりだったよ。4番隊の訓練は明日の夜だから大丈夫だよ」
一瞬にしてナタリアの顔が曇る
「そういうことを言ってるのではありません。それと次の訓練には私も行きます。」
「え、どうして?4番隊は苦手なんじゃ」
「嫌いです。訓練も行ってほしくありませんし、前回のようにボロボロになられるのも嫌です。なので見張っていざという時は騎士団に通報します。」
ナタリアが毅然とした態度で言い放つ。
「...通報されると、どうなるの?」
「演習場に騎士団が雪崩れ込みます」
それはまずい。そんなことになったら騎士団と王国軍で戦争が起きる。
「通報されないように気をつけるよ。4番隊の隊員にはただの見習いってことで入ってるからナタリアがついてきたら怪しまれるから困るかな」
「あ!そんなことしてたんですね!どうりで遠慮がないと思いました!」
「あはは、ところで食事の準備頼める?」
「...かしこまりました。」
ナタリアはなにか言いたげな顔をしながら食事のセッティングに向かう。
さて、比較実験の結果は、
MP6630/6839
寝る前が2730やったから
ちょうど3900回復したんか
13時間睡眠で3900…
平時の回復量が1分3やから...
せいぜい1.5倍くらいか。
これやったら瞑想の方が効率的やけど熟睡の満足感はデカいな。
MPが9割以上になったことで身体には倦怠感もなくなっていた。
ナタリアが用意した食事を食べ、今日の講義に向かう。
ナタリアが言うには
セシルの討伐訓練と聞いていたのだが
待ち合わせ場所にきたのは教養講師のソシャだった。
「ご機嫌麗しく。シロカネ様、本日は講義の一環としてご案内したい場所がございます。」
「カリキュラムの変更ですか?」
「えぇ、急ですが今朝要請がありまして」
なんか歯切れ悪いな。
ソシャに案内され、馬車に乗り込む
王城を出て、大きな通りを抜け
王城に引けを取らない巨大な建物に着いた。
純白のサグラダファミリアの様な大教会が聳え立っていた。
「ここがシヴィル王国の国教のサンコッテ教の総本山でございます」
ソシャに連れられて教会に入る。
内部は高すぎる天井とそれを支える何本もの
高く聳える柱によって
外から見たよりも広い空間が広がって感じる。
壁には色彩豊かなステンドグラスがはめ込まれ
それぞれが太陽光に色をつけて大理石の床に見事な光の絵画を描き出していた。
美しいが、装飾は少なく
それが厳かな雰囲気を作り出していた
この世界に生まれたんやったら
本当に神の存在を感じて入信するのも頷けるな
ソシャに案内されるまま、大勢の祈りを捧げる信者の間を通り、最奥の祭壇にたどり着く。
そこにはカーディナルレッドの服に身を包む男性と1人のシスターが、上総達を待っていた。
「フロレンシオ枢機卿猊下!勇者シロカネ様をお連れしました!」
ソシャの綺麗な礼に釣られて、やや軽く礼をする
「はじめまして、シロカネ様。私はこのサンコッテ教会で枢機卿を任されております。ジェイミー・フロレンシオと申します。以後お見知り置きを。そしてこちらは、」
青年といっても差し支えないほど若々しい枢機卿は柔和な笑顔で挨拶をした。
「シスターをしております。ララ・フロレンシオと申します。」
にこやかな枢機卿と打って変わって、無表情で端的に自己紹介を済ませた。
美しさに加えて、あまりの無表情さに人形なのではないのかと疑ってしまうほどであった。




