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風とトルク

上総とナタリアは工房を出た。


「ナタリア、この職人街は何があるの?」


「なんでもありますよ!せっかくですから色々見て回りますか?」


ナタリアは工房での退屈が終わったことに目を輝かせていた


「そうだね。この世界の面白いものもあるかもしれないね」


通りを歩きながら並ぶ店を見て回る 王都の職人街ということもあり、武具よりも日用品の店が多い


「シロカネ様!こんなのはどうですか?」


ナタリアは宝石店や衣服をみてはしゃいでいる


宝石にスキルとかバフを付与するとか出来るんかなぁ そのうち実験するのもありかもな


「ん?これは」


上総は雑貨店の前で足をとめた。


翼を広げた鳥のオブジェの下に風見鶏についてるような無骨な回転羽

それがセールと書いてテーブルに置かれていた。


「これは風を起こす魔道具ですね。魔力を流すと羽が回って風がくるんですよ」


魔導扇風機か


「でもこれ、とーっても魔力使うんですよ。私は風のスキルがあるので効率良く髪を乾かしたり涼んだり出来ますよ」


自慢げに解説するナタリアを横目に上総は考え込む


電気じゃなくて魔力で回転するモーターか なんか使えそうやな。


「ナタリア、こういう魔道具はよくあるの?」


「風の魔道具は珍しいですね。火をつけるとか水を出す魔道具はよくあるんですけどね」


「よし、これ買おう。俺の部屋に置いといてくれる?」


「え!?買うんですか?わかりました。」


ナタリアは少し離れたところで待機していた護衛の兵士に声をかけて指示を伝えた。


職人街の見物を終え、自室で訓練着に着替える。


「あいつがどう出てくるか・・・。」


なにかあっても訓練中にアクションを起こすことはない 最短で今夜中に城を抜け出すことになる 職人街に潜伏して鎖を受け取り次第王都を脱出する


最悪のケースは逃げ出せず、訓練場で拘束されて調伏の呪鎖とやらで自由を奪われること。 そうなったら死ぬまで使い倒される。


聖銀の剣はさすがに持ち込めないな。 持って行けてナイフか。


胸に包帯を巻き、左脇の下にナイフを仕込んだ。


警戒を表に出すな。 自然に振る舞え。


「おい!新入り!ちょっとスパーリングに付き合えよ!」


下手に視線を送るな。 戦闘訓練中だからか、ラビラに見られてる。


「今のを躱すとはやるじゃねぇ、おわっ!!」


隊長から呼び出しがないのは報告されてないからか? それとも証拠集めの最中か?


「くっそ!いや、今のは手加減してやっただけだ!もう1回だ!!」


どっちにしろ、今目立つのは避けるべきなのは変わらんな


「お前集中してんのか!?ぐふっ!」


カーツの大ぶりを躱し、カウンターのボディーブローでフィニッシュした。


「集中してますよ。カーツ先輩みたいに話す余裕がないだけです」


決着がつけば、ラビラは他の訓練に視線を移す。


疑心暗鬼になりながらも訓練をこなし、自室に戻った。


まだ猶予があるなら、それに越したことはない。

鎧や剣はすぐに使えるように用意はしているし・・・


「こいつの活用法も考えないとな」


職人街で手に入れた扇風機に手をかけた。


扇風機本体に魔力を流すと金属の羽が回りだした。


手をかざすとドライヤーくらいの風量が手にぶつかった


「MPの消費もそこまで重くないな。よし、次の実験や」


4枚の金属の羽を前方に曲げ 1本にロープを結び、反対側をベッドの柱にくくりつけた。


初めてバイクのアクセルを回すように慎重に魔力を込めていく


羽が回転し、ロープを巻取り始める


ロープに弛みがなくなった瞬間、ぐんっと身体が引っ張られた。


「結構トルクあるな」


これなら鎖の巻取りは余裕で出来るやろう

カラクリに作ってもらうか


翌朝、フェルミーヌの講義が始まった。


「フェルミーヌ先生、まだ魔法を教わってないですけど」


「器合わせが終わったらね」


フェルミーヌの手から伝わる魔力が身体の中に澱み、圧力が高まって行くのを感じる。


魔力の流れに集中し、新たなバイパスをつないで圧力を下げていく。


どんどん送り込まれていた魔力の供給が途切れる。


目を開けると、滝のような汗をかいたフェルミーヌが手にしがみつく形で立っていた。


「ほんとムカつく・・・。」


フェルミーヌが恨めしそうに睨んで魔力の回収を始めた。


両手から魔力を吸い出される感覚


満ち足りた全能感を引き剥がされる不快感が上総を襲う


全力で抵抗したろ


「っく!返しなさいよ!!」


顔を真っ赤にして魔力を吸い出すフェルミーヌが少し笑えてしまった。


結局抵抗しきれず、元通りくらいにはなった。


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