灰と銀
自室に帰った上総は疑念を確かめるべく 呪われたという騎士のチェーンを取り出す。
ナタリアに用意してもらった鍋に暖炉の灰を水に溶かして、黒いチェーンを煮る
毒性や銀が黒色に変化、あんな小さな窪地に溜まり続けてるのは不可解やけど空気より重い気体が原因なんやとしたら・・・
チャラ・・・
鍋から取り出した鎖は美しく銀色に輝いていた。
「やっぱ硫化銀になってただけか」
となると教会は化学を理解してて隠してる。
いや、もしかしたら呪いとか禁足地は教会に都合がいいことなのか 問題は、教会が俺にとって邪魔かどうかやな 教会の目的が分かればいいんやけど
いや、その前にこの鎖の処分どうするか 教会通さずに呪いが解けたって騒がれたら絶対面倒なことになるしな
旧魔国に行くには硫化水素のセンサー代わりに銀製品を持っておきたい。
足下に銀の装飾つけるか? いや、溜まってるところに踏み込んだ時点で危険過ぎる。
もっと先に感知したい。
銀製の長物を携帯するか?
杖、槍・・・
使えもしない武器は邪魔やし
銀の武器は強度に不安がある
かといって聖銀やと反応せえへんから意味ないし
「どうしたもんか・・・」
ボフッ・・・チャラ
ベッドに倒れ込んだ拍子に銀のチェーンが床に落ちた。
鎖か・・・
鎖や! 鎖をナイフの柄につければ投擲後に回収出来るし、センサーとしても十分機能する。
問題は重量と強度やけどそこは専門家に相談やな。
興奮冷めやらぬ内にナタリアを部屋に呼んだ。
「ナタリア、明日朝一で武器職人に会えないか調整してくれるか?」
「わかりました!王都一番の鍛冶職人に連絡しておきます!」
ナタリアはすぐに部屋を出てアポを取りに行った。
翌朝、ドワーフの工房を訪れた。
王都の職人街の中の一際大きな工房の前で オールバックのイケメン青年のドワーフが上総を出迎えた。
身長は150cm程度の細マッチョ。
ドワーフと言われて思い浮かぶ容姿とはかけ離れていた。
「私が王都一番の鍛治師のカラクリと申します。あなた様が勇者のシロカネ様ですね。大層武具がお好きなようで」
カラクリが値踏みするような笑みで握手を求める。
どこ情報やそれ。
「急なお願いでお時間を頂きありがとうございます。是非相談したいことがありまして」
上総も営業スマイルで握手に応じ、工房の中へ向かう
「それで、どのような武具をご所望で?」
「このナイフに鎖を取り付けたいんです。」
「鎖を?」
カラクリは不思議そうな顔をして上総を見る
「ええ、ナイフを投擲した際に回収しやすくしたいんです。」
「なるほど・・・」
「鎖の素材は銀でお願いしたいのですが、強度や重さはどれくらいになりますか?」
「そうですねぇ。ナイフの投擲、回収に使うとなるとこれくらいの太さがないと実用
的ではないでしょう。」
カラクリが取り出したのは太めのネックレスくらいの鎖だった。
思ったより細いな。
「これを20mくらいにしたら重さは?」
「ざっくり4,5kgってとこですね。20mも投げられますか?」
「いざというときに数回なら出来るかもですが現実的ではないですね」
代案を考えないとな・・・
「銀にこだわらないなら解決できますよ。これです」
カラクリがテーブルに置いたのは金と銀がマーブル模様になったインゴットだった。
「銀と金の合金?」
「それだけではありません。高位のモンスターから採れる魔石を混ぜて作った強化銀です」
「この強化銀は聖銀には及びませんが、かなり軽い上に強度があります」
カラクリは銀の鎖と同じくらいの長さのものを取り出した。 長さは同じだが、太さ
は女性用ネックレスくらいの太さだった。
「本当に強度があるのか不安になりますね」
「試してみますか?」
そう言ってカラクリは銀と強化銀の鎖を張った。
「勇者様の聖銀の剣で構いません。断ち切って見てください」
えらい自信やな。 変な仕掛けはなさそうやし。
スラッ・・・
「では、遠慮なく」
剣を振り下ろし銀の鎖を容易く断ち切る。 そのまま燕返しで下から強化銀の鎖に向かって切り込んだ。
ガギギィ・・・
強化銀の鎖は傷つくことなく聖銀の剣を受け止めた。
「今の勇者様の剣であれば、あと20回は受け止められるでしょう」
「なるほど。強度は申し分ありませんね。ところで、この強化銀は禁足地の呪いには耐えられますか?」
「呪いですか。呪いに耐えられるのは聖銀だけです。鎖は聖銀で用意しますか?」
カラクリは少し苦い顔をして代案を提案した。
「いや、強化銀で大丈夫です。その代わり、ナイフに取り付ける金具はこういった物にしていただきたい」
上総は紙に書いたねじ式のシンプルなカラビナを見せた。
「初めて見る仕掛けですね、、、鎖の一部のが稼動して、可動部分はねじで固定することで勝手にはずれないように・・・」
絵をみると職人の目になり、目新しい仕組みを食い入るように観察していた。
「これは面白い!!こいつを他の物に使わせていただいてもよろしいでしょうか!」
「構いませんよ。そのカラビナだけは聖銀でお願いします」
「カラビナっていうんですね!これはいい仕事が出来そうです。鎖の長さは20mでいいですか?」
「ええ、いつ頃出来ますか?」
「明後日には仕上がります。王城にお届けいたしましょう」 そう言ってカラクリは工房の奥に引っ込んでいった。




