礫と牙
水上と地上で両者が睨み合う
一方は地の利を生かすため、一方はより対等に戦うために
『来い!セシル!!』
統率スキルを使いセシルを呼び出す。
「はい!なんだか力が湧いてきます!!」
森の中から飛び出し、一気に上総の元まで駆け寄ってきた。
「フォレストウルフ手負1、無傷3を任せられるか?」
「もちろんです!ボスを含めても余裕です!!」
なんかテンション高いな。統率の副作用か?
『雑魚ウルフのみ蹴散らせ』
「はいっ!!」
返事と共に瞬間移動したかと見紛うほどのスピードで飛び出し、フォレストウルフの顎を蹴り上げていた。
はっや・・・
『ラルド、ロープと布をよこせ』
「ここに!」
布の両端をロープとしっかり繋ぎ、ロープの一方を輪にもう一方を持ちやすいように結び目を作った。
「それで、一体何をなさるのですか?」
「親ウルフには遠距離攻撃はない。だからこっちが遠距離攻撃を仕掛けて水辺から追い出す」
自作のスリングに河原石をセットしブンブンと遠心力を溜める。
純粋な物理の力にスキルの投擲が合わさり、驚異的な威力と精度の遠距離攻撃が完成した。
放たれた礫は親ウルフの足に直撃する。
あまりの威力に親ウルフもよろめいた。
水面を移動できるスキルは絶対欲しい。
逃がさんためにも足を壊す。
「カズサ様!私が突貫して仕留めます!」
『手ぇ出すな!セシルを含む全騎士は待機』
「「「はい!!」」」
フォン・・・フォン・・フォン!
ドーンッ!!
礫を放った瞬間に親ウルフが足元の水を巻き上げた。
水の壁で、威力を減衰させるつもりか。
甘いな、スリングでの投石は拳銃にも匹敵する威力が出る。それに投擲スキルも乗ってるから文字通り焼石に水やぞ!
「グルルルルゥ・・・」
そろそろ、部が悪いと気づくか?
今のうちに出来るだけ機動力と体力を削りたいな・・・。
ザバッ!!
「なにっ!!?」
川の中から、フォレストウルフが尋常じゃない量の血を吐き出しながら飛びかかってきた。
後ろに跳び退きながら投擲の照準を手負いのフォレストウルフに切り替える。
体勢が安定しない中での投石でもウルフの下顎を捉え、吹き飛ばした。
下顎を失ったウルフの目は光を失い、地に伏せた。
危なかった。こいつまだこんな動けたんか・・・。
「カズサ様!!」
セシルの緊迫した声で我に帰り、親ウルフを視界に捉えようとする。
「おらん。どこ行っ・・・」
親ウルフに視界外からの体当たり受け、吹き飛ばされた。
っく・・・。水上歩行さえ盗れてたらセシルに処理させれたのに。
親ウルフは後ろ足で河原石を蹴り飛ばしてきた。
「こいつ!意外と根に持つタイプか?」
聖銀の鎧のおかげでダメージはないが、視界を失った。
上総は感知に集中する。
礫の散弾が襲いくる中を親ウルフの反応が接近を感じる。
接触した瞬間干渉したる!
ドゴッ!!
!?
虎視眈々とタイミングを測っていた上総の脇腹に鈍い衝撃が走る。
明らかに早過ぎるタイミングでの衝撃
打ち上げられ、足が地面を離れる。
空中で親ウルフを確認すると木の幹を咥えて振り抜いていた。
接触を警戒した!?小賢しいなぁ!!
打ち上げられた上総は川に向かって落下を始める。
バシャバシャと大きな音を立てながら落下地点に先回りした親ウルフは
フライを捕る外野手のように鋭過ぎる牙を露わにしてその時を待っている。
「今度はこっちがタイミングずらしたるわ!」
切先を親ウルフに向けて落下する。
〝突進〟
上総の体は空中で急加速する。
聖銀の剣は親ウルフの上顎を貫き、脳を貫いた。
バシャーーー・・・ン
凄まじい衝突エネルギーは川底を一瞬露出させた。
「カズサ様!」
ヒタッ
バシャッバシャバシャ
川岸に戻った上総にセシルが手を差し伸べる。
その手を取り、水に濡れた体を引き上げる。
「やっぱギリギリですね。」
「本当にヒヤヒヤしましたよ!」
「休息をとって先に進もう」
「まだ行くんですか!?」
スパルタ具合が逆転したな




