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水面に立つもの

馬車に揺られ、長らく整備されていない道をひたすら北に進む


王国から逃げるにしても、フォレストウルフの群れぐらいはほぼ無傷で制圧できないと話にならない。

プレインボアの時に落ちていたMPポーションのいくつか持って行けるようにくすねておきたいな。


「すみません。魔力を回復する薬をいざという時のために携帯しておきたいのですが」


「魔力を回復する薬・・・ですか?すみません、我々一般の騎士にはそのようなものの話は聞いたことがありません。」

「私も聞いたことがありませんね。カズサ様の世界にはあったのですか?」


この世界に存在しない?

じゃあ、剣と一緒に転がっていたあれはなんや

いや、そもそもなんであんな手元に剣が都合よく・・・

「カズサ様!フォレストウルフです」


森の中を高速で駆け抜けるフォレストウルフが2頭


あれは斥候か?

元の世界の狼と習性が似てるなら誘い出せるかもしれんな


「セシル、これから俺は単独で行動する。」

「それはいけません!カズサ様をお守りすることが私の仕事です!」


この前までのスパルタはどこいったんや。

「こんな大所帯じゃフォレストウルフも警戒して襲ってこない。だから単独で誘い出す。

騎士たちの感知の外には行かないから。」


「わかりました。すぐに助太刀出来る距離で待機させていただきます。」


上総は馬車を降り、1人でフォレストウルフが走り去った森の中に入っていった。

しばらく森を進むと、探知にはかからないが視線を感じる。


上総の探知に急速に接近する反応が1つ


「きたか!」

背後からの強襲に剣で対応する

1本1本がナイフのような牙が上総の目の前で受け止められる。


ナイフで追撃を試みるが、迫るもう一つの顎を視界の端に捉えた。


あっぶね!


身をよじり、間一髪で躱す。地面を転がり、フォレストウルフを視界に捕らえようとするが、その場には姿はなかった。


あとちょっと遅れたら腕無くなってたな。

孤立した獲物にヒットアンドアウェー。狩りのしかたは狼と同じみたいやな。


上総は森のさらに奥へ逃走する。


「はぁ、はぁ、、あいつら。探知の数偽装するの忘れとったわ。」


探知には、付かず離れずの距離に1つだけ反応があった。


森のさきには川が流れていた。


圧倒的に機動力で負けている状態で川の中に入るのはまずいな。

もうちょっと広いとこでやりたかったけど素直に行かせてくれるわけもないしな


「はぁ・・・はぁ・・ふぅ。かかってこいや」


森の中から音もなく、ゆらりと3頭のフォレストウルフが姿を現わす。


出揃う前に数を減らす!

河原の石を2つ拾い、左右のウルフのそれぞれ内側の目を狙って投擲した


「ギャン!」


右側のウルフは躱したが、左のウルフの左目にヒットした。


なら狙うは右の奴!

右のウルフ目がけて走り出した上総を中央のウルフが迎撃する。

右手に剣、左手にナイフを持って応戦する。


剣で先にウルフに触れて〝干渉〟引き延ばされた時間の中でゆっくりとベストな体勢、剣の角度を調整し、ウルフの攻撃を受け流す。

そして、左手のナイフで前足の腱を切りつけ、肺に穴を空け、後ろ足の筋肉に傷をつける。


剣がウルフから離れ、時間が元の早さを取り戻しても、後ろで大きな水しぶきを上げる音が響いても上総は気にも留めず、目標に向かう。


投石を躱した無傷なウルフは残った仲間と上総を挟み打つ様に立ち回る。

しかし、仲間は援護に来ない。


投石によって目を潰されたため、こちらが死角になっている。

そのため、フォローがワンテンポ遅れた。

そのワンテンポの遅れが仲間の命を散らす



はずだった。


森の中から飛び出したフォレストウルフが剣を振り下ろそうとした腕に食らいついた

そのまま振り回され、元の川岸まで放り投げられた。


ここで新手か!


聖銀の鎧は牙を通さずダメージはない。


肩は外れてないし、骨も折れてない。

けど、ちょっと筋は痛めたか・・・。


ほぼ振り出しか、それ以上の状況の悪化か


上総が新たに背後に現れた反応のに目を向けると

一際大きなフォレストウルフが水面を、まるで地面を踏みしめるように立っていた。


ようやくお出ましか。

「お前が親やな」



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