知らない世界
翌朝、歴史の講師ロマン・ル・カレンガによる
この大陸の地理について講義を受けた。
大きなテーブルいっぱいに地図を広げて講義は進む
「この大陸の中央の平原を治めているのがこのシヴィル王国でございます。西側には山岳地帯が広がり、鉱山資源が豊富です。そこにはドワーフ国があり、武具や魔道具の貿易を行っております。」
「魔道具には興味がありますね。是非行ってみたい」
「貿易の関係で王都とも交流が多いので機会は十分あるかと思います」
今日は落ち着いて講義できるからかカレンガ先生も上機嫌だった。
「一方東側では樹海が広がり、案内なしでは遭難してしまうほど深い森となっています。ここにはエルフが住んでいるのですが、我々との交流はありません。」
「森のエルフなら食糧関係の貿易も出来そうなのに交流がないんですか?」
「はい、王国になる前の帝国時代にエルフを奴隷としていたことがあるのです。王国になってからは他種族の奴隷は禁止になっています。今いる奴隷は犯罪奴隷のみです。ですが、エルフは長命種のため、未だに恨みが根強く残っているのが現状です。」
反王国勢力か
ここにも接触しておきたいな
「交流の可能性はないのですか?」
「ええ、種族としての交流は難しいでしょう。時々、変わり者ののエルフが冒険者をしたりしているようですが」
「なるほど、他にはどんな種族がいるのですか?」
「大陸の南側に島が2つあります。その島にはそれぞれ治めている種族がいます。南西の島にはケットシーが、南東の島にはドラゴンが生息しています!」
「ケットシーとドラゴン。それはどんな種族なんですか?」
「ケットシーはとても愛らしい姿をした農業が得意な種族です」
「農業ですか?」
「はい、彼らの作物はとても品質が高くて王国では高級品です」
「定期的にケットシーの島に買い付けに行ってるのでしようか」
「いいえ、私たちは海を渡れないんです。この島との間の海域はセイレーンの縄張りでして危険すぎるんです。」
「ではどのように作物を取引してるのですか?」
「海に沈む変わった船で海を渡ってくるんです。あとは教会が独自のルートで仕入れたものを販売してくれていますね」
潜水艦!?ケットシーの方が科学技術上なんか。
なんとか接触しときたいな。
「ケットシーはいつ来ますか?」
「現れる場所も時間もランダムなのでわからないんです。なんせ愛らしい姿なので捕まる事を恐れているのかもしれませんね」
それもそうか。接触が難しいのは困ったけどしゃあないか。
「わかりました。ケットシーに会ってみたいので機会があればお声がけください」
「かしこまりました。それより!次にドラゴンの島の話いいですか!」
「は、はい」
「このドラゴンの島にもセイレーンのせいで到達困難な上、仮に上陸できたとしてもドラゴンに気づかれた瞬間に殺されるでしょう」
「ドラゴンを見たことがあるのですか?」
「今の王国にドラゴンを直接見たことがあることがある人間はいないでしょう。ドラゴンは縄張りの島を出ませんから」
竜騎兵みたいなのはないんか。ちょっと期待したんやけどな。
「ドラゴンについてなんで知ってるのか?と仰りたいんでしょう?」
「えぇ。」
「これです!」
大きな図鑑を自慢げに取り出した。
「歴史上唯一ドラゴンの島に上陸し、ドラゴンを直近に観察したユウノマのドラゴン観察記録です!写しじゃありませんよ?原書です!!本物のドラゴンの羽毛や鱗の一部が付属してるんですよ!!」
ものすごい熱量やな。
カレンガ先生から丁重に観察記録を受け取り、目を通した。
確かに、卵や幼体、成体の精巧なスケッチが多く、生態が詳しく記述されていた。
「巣の中の様子まで、これはすごいですね」
「そうでしょう!中には空想だなんて言いがかりをつける輩もいますが!私はユウノマを信じています!」
真偽は不明やけど、結構リアルやな。
実際に羽毛とか鱗とか証拠になりそうなものも添付してるし。
でも、なんか違和感やな。・・・スケッチがどれも近すぎる?
「ところで北側には何があるんですか?」
「北側は旧魔国領ですね。王国が建国する際に打ち滅ぼされた元魔国の土地です。」
ドラゴンよりよっぽど重要やろ!
「終戦間際に魔族がこの地に呪いをかけたため、誰も近づくことはできません。教会からも禁足地として認定されています。」
「呪いですか。それは一体・・・」
「おっと、時間ですね。チェカルディ先生に殴り込まれてしまいますね。」
「・・・ありがとうございました。」
あの殴り込みはトラウマになるわな。
呪いの禁足地・・・
呪いの耐性があれば通れるものなのか?
「いや、まずは目先の問題解決に注力すべきやな。」
聖銀の鎧を纏い、セシルの待つ馬車へ乗り込んだ。
「今日の討伐訓練のターゲットですが、前回の事もありますしゴブリンをメインにしようかと」
セシルにしては歯切れが悪い
これは勇者を危険に晒したとかで叱られたのか?
「いや、今回の討伐訓練では禁足地の近くまで討伐していきましょう。フォレストウルフの群れを単独撃破が目標です。」
予想外の提案にセシルが目を丸くしている。
ラビラが団長や国王に報告しないという保証はない。
下手に囲まれたり、危険認定されて処刑なんてことになる前にできるだけ力をつける。
呪い耐性で禁足地とやらに逃げ込めるなら逃走経路を下見せんとな。
「勇者様のご要望でしたら仕方ありませんな!では早速進路を伝えてきます!」
セシルがウッキウキで他の馬車に進路変更を伝えにいった。




