6話
「う~ん、ここは?」
「マリー様!大丈夫ですか?」
「あれ?私一体…」
「マリー貴女、走ってる途中で気絶したのよ?覚えてないの?」
『そうだ!思い出した。リード様に腕を握られてそれで…』
「ギャーー!私ったら何て事を!?」
「びっくりするじゃない?なんなの一体?今日はもう遅いからマリーもローズも泊まっていって頂戴。寮へは連絡しておくから」
「あ、あの… 他の方達は?」
「みんな帰ったわよ?何か用があったのかしら?」
「そういうわけでは…」
「そう、じゃあ食事にしましょう!ここへ運ばせるから3人で食べましょう」
豪華な食事を食べ、お風呂へ入り、夜通し3人で喋り続けた。初めての女子会は本当に楽しかった。
◆◆◆
「やあ、マリー嬢。この間は大丈夫だったかい?」
休み時間にアンソニーが話し掛けてきた。
「ご迷惑を御掛けしました…」
「運んだのはアルフリードだからね。私は別に迷惑をかけられてはいないよ」
クスクスと笑いながらそう語るアンソニー。
「えっ、アルフリード様が!?」
『私、あんな汗びっしょりでクッサイ状態でリード様に運ばれたの…』急にガタガタと震え出す。
「アルフリードには後でお礼を…って全く聞いてないね」
その後の事は覚えていない。いつ帰ってきて、どう寝たのか… 気付いたら次の日になっていた。
◆◆◆
「ねぇ、マリー。貴女昨日から変よ?何か悩みごと?」
「私も気になっていました。どうしたのですか?」
「う~ん。実はとても大切な人に失礼な事をしちゃったのよ…どうしたらいいと思う?」
「そんなの簡単よ!直接謝ればいいのよ」
「直接謝れない相手だったとしたら?」
「手紙ね。手紙とちょっとした贈り物を渡すわ。マリー、もしかしてアルフリードに迷惑をかけたお礼をしようとしているの?」
「ギクッ」
「やっぱりね。直接言えばいいじゃない」
「直接なんて絶対に無理よ!絶対にね」
「貴女、アルフリードが好きなの?」
「好き!?ヤ、ヤ、止めてよ!アルフリード様はいわば神の様な存在よ?私なんかが好きになっていい存在では無いわ!」
「貴女本気で言ってるの?はぁー仕方ないわね…今日の放課後3人で買い物行くわよ!プレゼント選びに行きましょう!」
「い、いいの?」
「わたくし達友達でしょ?ローズもいいわね?」
「勿論です!楽しみですね」
『オゼットって頼もしい。だんだんと慣れてきたのか皆本性が出てきているし、言葉使いも乱れてきている。漫画の世界を楽しむために入学したけど、2人と友達になれて本当に良かった。些細な事がきっかけでここまでストーリーが変わってしまうとは思わなかったけど、いい方向に向かっていると信じたい…』
◆◆◆
放課後、3人で新しく出来たカフェでケーキを食べている。
「ねぇ、アルフリードにあげるプレゼントの予算はどのくらい?」
「う~ん。それなりに出せると思うけど」
「じゃあ、甘いものは?龍人族は意外と甘いものが好きなのよ!可能であればアルフリードの隊分買っていけば喜ぶと思うわよ?」
「成る程!それいいですね!あっ、でも直接渡すのは無理です…」
「マリー様、このカフェのお菓子は予約すると指定の場所まで運んでくれるみたいですよ」
「決まりね!今、手紙を書いて予約して帰りなさいよ」
「そうするわ」
鞄から便箋を取り出す。
【アルフリード様
先日は汗でベトベトな私を運んでくださり、ありがとうございます。さぞや臭かったでしょう。アルフリード様の手を汚してしまったこと深く御詫び申し上げます。そして重かったでしょう。大変失礼致しました。今度、同じことが起きましたら捨て置いてくれて構いません。スカーレット・マリー】
「出来た」
「えっ!貴女そんな手紙をアルフリードに渡すつもり?」
「えっ?いけませんか?」
「え、あ、いえ。貴女がいいならそれでいいわ」
『オゼットとローズのお陰でいい贈り物が出来たわ。リード様喜んでくれるかしら…』
◆◆◆
「隊長~ 隊長宛に贈り物が届いてますよ!女性からですね~流石、モテますね!」
「捨てておけ、知らぬものからなぞ貰えるか」
「え~、このカフェのお菓子美味しいって有名なのに~いらないなら俺たちにくださいよ」
「勝手にしろ」
「では、開けちゃいまーす!おっ、メッセージカードがある。どれどれ?【騎士団の皆様でどうぞ】だって。やっさしい~スカーレット・マリー?どっかで聞いた名前だな?あれ?手紙も入ってる…」
「スカーレット・マリーだと… 手紙を寄越せ」
「なんすかっ急に。お菓子は貰いますよ?皆に配っちゃいますからね?」
「俺の分も取っとけよ」
「はぁ?どうしたんすか?知り合いだったとか?」
「うるさい!俺の分だけ置いて配りに行ってこい」
「おーこわっ。では、行ってきまーす」
アルフリードは手紙を開け中身を確認し、顔をしかめる。『なんだこれは… お礼の手紙なのか?それとも苦情?』何度も読み直してみたが結局分からなかったアルフリードであった。