7話
今日は1年生だけで行われる植物園見学会。
待ってましたの、イベントの日。
『花が大好きなローズは夢中になっているうちに皆とはぐれて迷子になってしまう。途方にくれているローズを探しだすのが勿論アンソニー。しかも、一輪の薔薇の花をプレゼントする。』
「って、どうして私が迷子になっちゃうのよーー!」
『さっきまで皆と一緒にいて、ローズから目を離さないようにしていたのに… あれよ!あれがいけなかったんだわ。この世界にはある程度前世と同じ食べ物があるけど、ジャガイモは無いのよ!それがさっき展示されてた植物がジャガイモの花にそっくりで、葉も同じだった。つい、夢中で確認してたらいつの間にか一人になっていて… でも、あれは間違いなくジャガイモだったわ。あれさえあれば、フライドポテトが食べられる!!』
「あーあ、折角のイベント見逃しちゃったなぁ…」
とぼとぼと下を向き歩っていると、急に大きなものが目の前に立ち塞がった。
「おい、前くらい見て歩け。それ以上この先に進むことは許さぬ」
『リ、リ、リード様… ってことは?』アルフリードの背の向こうを覗き込むと丁度アンソニー王子がローズに薔薇の花を一輪渡す所だった。
「わぁー、ナイスタイミング!」
「ナイスタイミング?」
「あっ、いえ、失礼しました」
『何てこった!興奮してリード様が近くにいることを忘れてしまうなんて…』
慌てて回れ右をし、その場を離れようとする。
「おい、この間は隊員の分まで菓子悪かったな…」
「えっ…」
足がその場に凍り付いたように固まってしまった。
「旨かったよ。おっと、アンソニー様が帰られるようだ」
アルフリードが立ち去った後もしばらくその場から動けないでいた。心臓だけがドクドクと早いスピードで音を鳴らし、私の体の中を木霊する。
「あら?マリー様!探しましたよ。マリー様を探しに行ったら、私まで迷子になってしまって、先程アンソニー様に助けて頂いたのですって、マリー様!熱があるのでは?顔が真っ赤ですよ」
『駄目だ… 今ので完全に私は…』
放心状態のマリーをローズは引きずるように連れて帰った。
◆◆◆
「はぁーーっ」
「どうしたのよ?浮かない顔しちゃって。ボーッとした顔がますますボーッとした顔に見えるわよ」
『おいおい、オゼットさんよ。最近凄いグイグイくるなぁ。まっそこがオゼットのいいところでもあるんだけど…』
「はぁーっ」
「あら?珍しい。ローズまでどうしたの?」
「実は今週末、夜会に招待されてて…それにどうしても参加しろとお父様が…」
「あら?もしかしてマルタード公爵家の夜会かしら?」
「そ、そうです!私行きたくないのに…お父様は兄上の為に少しでも良いところに嫁に出したいみたいで。今から顔を広げとけって言うんです」
「わたくしも参加するわよ。丁度いいじゃない!向こうで合流しましょう。ちょっとマリー聞いてる?貴女はわたくしと参加するのよ?いいわね?迎えを寄越すから準備しておいてね」
「うーん」
「全く… ローズ安心しなさい。わたくしが付いてますわ」
「オゼット様がいれば安心ですわっ!なんだか、急に楽しみになってきたわ」
「ふふっ、可愛い子。所でいつまで名前に様を付けてるつもり?友達なんだからオゼットと呼んで!マリーもね。ローズはマリーの事も 様 付けちゃ駄目よ?マリーもね!そうと決まればわたくしは準備の為に今日は早く帰りますわ」
『オゼット頼もしい。まさに姉さんとお呼びしたい』
◆◆◆
「さあ、みなさん!取りかかって頂戴」
「「はいっお嬢様」」
10人のメイドに取り囲まれたマリーとローズはされるがままになっている。
「私まで良かったのでしょうか?」
「オゼットがいいって言ってるんだからいいんじゃない?」
結局ローズもマルクス家に連れてこられた。ローズの父親も公爵家との繋がりに驚いていたが、快く送り出してくれたようだ。
お風呂に入れられ、隅々迄綺麗に洗われ、香油をたっぷり塗られマッサージ。爪、髪、顔とどんどん進んでいく。最後にオゼットが選んでくれたドレスを着て完成だ。
「完璧だわ!私の見立てに狂いはなかった」
いつの間にか自分の準備を済ませたオゼットが立っていた。深緑のドレスには太ももの所まで大きくスリットが入っている。
「オゼット綺麗…」
「ありがとう!鏡で自分達の姿も見てみなさいな」
大きな姿鏡の前に2人で立つ。『えっ、これが私…』
別人レベルで変わっている。ローズも凄く綺麗だ。
『私は深青のドレスで、ローズは黄緑に近い緑のドレス、そしてオゼットは深緑のドレス…まさか!』
「まさか!このドレスの色って…」
「あら?分かっちゃった?ってことはわたくしの気持ちを知っているってことね」
『仮にも自分の婚約者の目の色のドレスを他の人に着せる!?しかも、ちゃっかり自分はジョルズの目の色のドレス着てるし…』
「私着れないよ!!違うの無いの?」
「なに言ってるの?もう時間は無いし無理よ。誰も分からないわよ」
「急にどうしたのです?それにドレスの色って?」
「ローズは気にしないの!行くわよ、マリー 諦めなさい」
オゼットの気迫に負け、渋々着いていくマリー。
『どうかリード様がいませんように…』
いつもと真逆の願いは果たして叶うのだろうか…




