5話
「最近マリー様 朝早く何処へお出掛けになっているのですか?」
今、ローズとオゼットとマリーは三人で学食を食べている。流石王立学園、食事が豪華だ。
オゼットとローズはマリーを通して仲良くなったらしく、最近ではいつも三人で行動している。『オゼットの取り巻きは何処へいってしまったんだろう?』取り巻きがいないせいか、ローズへのいじめは陰口くらいに止まっているようだ。
「走りに行っているのよ」
「走りに?」
「ええ、運動不足でね。少し走るとすぐに息があがってしまうの…」
「マリー、わたくし達令嬢が走る場面なんてないでしょ?」
「うっ…それを言われてしまうと… でも、走った後は清々しい気持ちになりますよ!お二人もどうですか?なーんて」
「マリー様のお誘いなら喜んで!!」
「そうだわ!わたくしの幼馴染みがそういうの得意なのよ!今度の休みの日、うちに遊びにいらっしゃらない?」
『わお、冗談のつもりがとんでもない方向に話が進んだ…』
◆◆◆
「ようこそいらっしゃいました。マリー様、ローズ様。オゼットお嬢様はすでに庭でお待ちになっております」
『で、でかいお家!!流石公爵家…うちも大きいとは思っていたが、倍以上違うな…』執事に案内され、オゼットの元へ向かう。
「待っていたわ、マリー、ローズ。紹介するわ。私の幼馴染みのクリントン・ジョルズよ!ジョルズも一応王立学園のCクラスに居るわ。」
「一応とはひどいなぁ…オゼットの幼馴染みのクリントン・ジョルズです。宜しく!騎士を目指しているので走るのはまあまあ得意かな?」
爽やかな笑顔の好青年。緑色の短髪に深緑の瞳。筋肉質な体に高身長。『この人がオゼットの好きな人…』漫画では少ししかその場面が出てこなかったが、見てれば分かる。本当に仲良しなんだなぁ
「ねぇ、三人とも。今日は走るんだよね?そんな格好で走るのかい?スカートじゃ無理じゃないかな?」
ジョルズは白いTシャツに短パンを履いている。服を着てても分かるシックスパック!
「私、着替え持ってきました!何処かで着替えても?」
「どうしよう…私は何も持ってこなかったわ」
ローズが悲しそうな声を出す。
「任せて、三人分持ってきたから!しかも、お揃いよ」
「あら、マリー気が利くわね!では、こちらで着替えましょう」
オゼットに案内され、部屋に着くと鞄から三人分の着替えを取り出す。
「ちょっと!マリー、こんな服を着て走れと?」
「えっ?とても走りやすいですよ?」
「これは流石に… マリー様はまさかこの格好で毎朝走りに?」
「勿論よ!何で?」
「これじゃ露出狂じゃないの!止めなさいよ」
「えっー!走りやすいのに…今日はいいでしょ?オゼット様の御宅だし…使ってみれば分かるよ!その良さが!」
『前世では普通の格好なのに…みんなやってたし、私も一度くらいやってみたかったから選んだのに…今ならまあまあスタイルいいもんね!』
持ってきた黒のスパッツとスポーツブラ、それと白いTシャツと運動靴を渡す。
「とりあえず、着るだけよ!」
オゼットは一番拒否してたくせに、最初に着替え始めた。『やっぱり興味あったんじゃない…』
続いて、ローズもマリーも着替え始める。
「やだ、走ったらおへそが見えちゃいそうだわ…」
「私もです!足やお尻のラインもまる分かりで恥ずかしい…」
「……… 」
「あら?どうしたの?マリー元気ないわね?」
「マリー様どうしました?」
『凶器!!何2人のあれ!まさに歩く凶器!!あんな2人の横になんて立てるか!私だけバッチリへそまで隠れてるわい!どうせ小さいですヨーダ!』
「やっぱり、脱ぎたい…」
「どうしたの?急に?マリーが持ってきたんでしょ?今日はこれで走りましょう!折角マリーが用意してくれたんだし… ふふっこの姿を見たらジョルズどんな反応するかしら…」
「今なんて?」
「い、いえ…こっちの話よ」
『バッチリ聞こえてましたよ!オゼットよ!その姿で幼馴染みを誘惑するつもりだな…見物だ』
「私も折角マリー様が持ってきてくれたので、恥ずかしいけれど頑張りますわ」
結局このままの格好で走ることになり、待たせているジョルズの元に向かうのだった。
◆◆◆
「お待たせ、ジョルズ… って、アンソニー?何故いるの?」
「やあ、オゼット。それにマリー嬢にローズ嬢。みんな魅惑的な格好をしているね」
「おま、おま、おまえらなんて格好してるんだよ!」
顔を真っ赤にした、ジョルズがオゼットを見て固まる。
「あら?変かしら?マリーが用意してくれたのよ。とても走りやすいんですって」
「そうなんです!動きやすいんですよ」
「ローズ嬢は顔が真っ赤だよ?可愛いね」
「わた、わた、わたし…」
「アンソニー、ローズをからかうのは止めて頂戴。所で今日は一人?」
「いや?アルフリードと部下が2人いるはずだけど?」
「何故来たの?」
「婚約者の元に遊びに来てはいけないのかい?」
「そういうことにしてあげるわ…わたくし達はこれから走るのよ。貴方はどうするの?」
「なら、私も走ろうか。たまには運動しないとね。アルフリード 君も走るかい?」
「ええ、アンソニー様が走るのであればお供致します」
『!!ど、ど、どこから現れたの!リード様が走る!?』
アンソニーとアルフリードは軽装になるため、上着などを脱ぎ出す。
『キャー!!リード様の生、生着替えーー!』
食い入るように見詰めているとアルフリードと一瞬目があった。『ヤバッ』慌てて目を逸らしてしまった。
「では、一周1キロ位の場所をぐるぐると回ってみようか?では、スタート!!」
ジョルズの声で一斉に走り出す。流石男性陣、みんな早い『ああ、リード様の後ろ姿、それに引き締まったお尻…素敵過ぎる』
「はぁ、キツいわね…わたくしもう限界ですわっ」
「えっ、まだ一周も走ってないですよ?」
「頑張りましょう!オゼット様」
「何?2人とも元気ね?」
「普段から走ってますから!」
「私は田舎育ちなもので…」
そうこうしているうちに後ろから男性陣が迫ってきていた。『キャー!リード様が来ちゃう。後ろ姿を見られたくない…』
「わたくしを置いていっていいわっ!先に行って」
「オゼットどうした?」
「ジョルズ… もうわたくし動けませんわ。運んでくださる?」
「えっ俺?婚約者のアンソニー様の方がいいのでは…」
「ジョルズが運んであげて。私はもう少し走りたいから」
「分かりました。アンソニー様がそうおしゃるのならば…では、行こうかオゼット」
ジョルズは真っ赤な顔でオゼットをお姫様抱っこで運ぶ。オゼットも幸せそうな顔をしている。
「宜しいのですか?婚約者様…」
「ああ、ジョルズに任せておけばいいよ。では、私達も走るのを再開しようか…」
「マリー様、風が気持ちいいですね」
「本当ね。気持ちいい…」
「やあ、2人とも頑張っているね」
『ア、アンソニー様…ということは…』
ギギギギとアンソニーの後ろに顔を向けるとそこには全く息を切らさず走っているアルフリードがいた。
「ギャーーアーーー」
マリーは猪突猛進が如く、すごい早さで走り去る。
「マ、マリー様?」
「おやおや、どうしちゃったのかな?マリー嬢は?アルフリードちょっと見てきてくれる?」
「ですが…」
「分かるだろ?意味が」
「はい… 分かりました。では、行って参ります」
「戻ってくるのはゆっくりでいいからね?」
「マリー様はどうしてしまったのでしょう?」
「さぁー?アルフリードに任せておけば大丈夫だよ。ローズ嬢は私と走ろう」
「ええ、宜しくお願いいたします」
◆◆◆
「はぁはぁはぁ、ここまで来れば安心か…」
「何が、安心なんだ?」
『えっ?今何か幻聴が聞こえてきた?』恐る恐る後ろを振り返るとアルフリードが間近に迫っていた。
「キャー!」
「何故いつも逃げる?」
「逃げてません」
「逃げているだろう?何か疚しいことを考えているのか?」
「疚しい事…」
『確かに考えている。今横から聞こえてくるリード様の息遣い…捲っている袖からチラチラ見える筋肉。そして、微かに漂ういい匂い…』
「やはり、何か隠しているな?」
「何も隠していません」
『きぃつ… もう、走るの限界かも…』
「おい、答えろ?」
腕を急に引っ張られ、よろけてしまう。
「きゃっ」
「すまん。力が入ってしまった…」
よろけた拍子にアルフリードにもたれ掛かってしまった。『リード様に☆●◇▶☆!?』そのまま、マリーは意識を手放した…
◆◆◆
「アルフリード、マリー嬢は何故気絶を?」
「分かりません。ただ、ふらついた彼女を抱き止めただけなのですが…」
「抱き止めた…ねぇ」
「…… 」
「どうしたんだい?アルフリード」
「汗が…」
「汗?汗がどうしたんだい?」
「い、いえ、何でもありません。アンソニー様急いで帰りましょう。晩餐の時間に遅刻してしまいます。」
「そうだね。母上に怒られるまえに帰ろうか」
『マリー嬢の汗の匂いが微かに甘い匂いがしたなんて、俺は変態か?嗅いだ事がアンソニー王子にバレたら… 絶対に黙っておこう』アルフリードは固く心に誓うのであった。




