48話
「一つだけお聞きしても?」
「ああ…」
「アルフリード様は私がツガイだったから結婚しただけ、本当は私の事は忘れてしまっているし、興味はないんですよね?」
自分で言って泣けてきた… アルフリードがいなくなってから2年間、マリーは本当に辛い日々を過ごしてきた。何をしていても、何処にいても思い出されるのはアルフリードの事… それなのに、当の本人はあれ程マリーを拒絶して、忘れ去って…「興味がない」あの一言にどれだけ苦しめられたか… それなのに今更 ツガイだから と言われてもどうしていいか分からない。アルフリードの事は勿論好き、だけど手放しでは喜べない自分がいる…
「すまない… でも、マリー嬢を忘れた事は一度も無いんだ!信じてくれ」
「嘘! だってアルフリード様 私の事 乳臭い子供って言った!私は何度も会いたいってアンソニー様にお願いしたのに無視してた!」
子供の癇癪の様に泣きわめくマリーをアルフリードは優しく抱きしめると「すまない…」と何度もマリーの耳元で謝り続けるのであった…
「寝てしまったか… おやすみマリー」
アルフリードは自分の腕の中で泣き疲れて寝てしまったマリーのおでこにキスを落とすと割れ物を運ぶかの様に丁寧に優しくベッドへと連れていった。
◆◆◆
「んっ~あれ?いつの間に寝ちゃったんだろう?」
マリーは横を見て、息を呑む… 『ま、まさか… リード様の生寝顔… ヤバい鼻血!』マリーはとっさに鼻を押さえる。
「血の匂い?」
アルフリードはバサッと勢い良く起き上がると心配そうにマリーに近寄る。上半身には何も纏っていなかった。『リード様のピンクの生ち… !』マリーは片手で鼻を押さえ、もう片手で目を押さえるが指の隙間からばっちりアルフリードの半身を凝視していた。『ヤバいヤバいヤバいあの綺麗に割れた腹… 盛り上がった胸筋、芸術品だ…どうして自分は今、カメラを持っていないんだろう…』苦虫を噛み潰したような顔を上手く両手で誤魔化して、マリーは部屋付きの風呂へ向かうのだった。
「あれ?リード様が居ない?」
湯浴みを終えて、部屋に戻るとアルフリードの姿が消えていた。メイド長のナニーが言うにはアンソニーに呼ばれて城に向かったらしい。直ぐに戻るからそれまで食事は待って欲しいとの事だった。
「つまんないな…」
マリーは1人部屋の散策を始めた。『リード様だって男だもん。エロ本の1冊や2冊あるかも?やっぱり定番はベッドの下だよね』
ガサガサッ
『あれ?本当に何かある…』
マリーは何処かで見たことがある様な箱をベッドの下から引きずり出す。『開けてもいいかな?リード様怒るかな…』好奇心に勝てなかったマリーは、アルフリードに怒られる覚悟を決めて、箱の蓋に手をかけた…
「えっ… これって…」
箱の中を覗いたマリーは、昔 苦渋の選択で捨てたドラゴンの刺繍とばっちり目があった。『嘘!?』他にもお菓子の包み紙やリボン、メッセージカードや手紙が入っていた。そして、オゼットとローズにオイルを塗りたくられているマリーの写真… 『何で… これって全て私がリード様に渡したものばかり。しかも、諦めた下着や写真まで… 何故…』期待しちゃいけないのにマリーの心臓は言うことを聞かない。バクバクと音を鳴らし、頭の中では もしかしたら… と考えてしまっている。マリーは熱くなった身体を冷やすため、もう一度風呂へと急ぐのだった…
◆◆◆
「アンソニー様、急な用件とは一体どのような事なのですか?」
「アルフリード、休暇中なのに呼んですまないね。実はオゼットとローズがマリー嬢と会わせろと言っているんだよ」
「… それは無理です…」
「分かっている!ツガイになると蜜月に入るのだろう。ツガイを誰とも会わせず、自分の巣に囲い、世話をする。それは私も分かっているつもりだ… しかしなぁ、ローズが心配していて私もいたたまれないんだ…分かるだろう?惚れた弱みと言う奴だよ」
「では、会わせることは出来ませんがドア越しなら…」
「そうか!ありがとう。アルフリード今、幸せか?」
「はい、とても…」
「!」
アルフリードが見たこともない満面な笑顔を見せたのでアンソニーは自分の事の様に嬉しくなった…
◆◆◆
「あれ?マリー嬢?」
食事を持って部屋に戻ったアルフリードはマリーの姿を探した。微かに聞こえる水の音…『おかしい… 俺が部屋を出てからもずっと入っているのか… 有り得ない… まさか!!』頭によぎったのは自分の母の事。アルフリードは急いで風呂場へ行くと、ドアを思いきり開けた。
「マリー嬢!!」
「キャーーーッ!」
湯船に浸かって鼻唄を歌っていたマリーは突然のアルフリードの出現にビックリして頭からお湯に潜った。
「マリー嬢!溺れているのか!」
気が動転しているアルフリードはマリーを無理矢理浴槽から引きずり出そうと腕を掴む。龍人の力は強く、マリーの上半身はあっと言う間に露になってしまった。マリーは大切な部分だけ片腕で隠すと
「出ていってくださーい!!」
と大声で叫んだ。顔を真っ赤にさせたアルフリードは小さな声で「すまない」と呟くと慌てて浴場を後にした。『濁り湯でよかった…』マリーはのぼせきった身体をまた冷たい水で冷やすのであった。
「信じられません。まさか、アルフリード様がお風呂を覗くなんて…」
「すまない…」
食事を食べさせて貰いながら、マリーはアルフリードを睨む。『いくら大好きなリード様だってこっちにも心の準備ってもんがある。それに… 箱の中身の事、聞かなくっちゃ…』
「アルフリード様… 私、1人で食べられますよ?」
「いや、龍人はツガイに食事を与えることが最高の幸せなんだ… マリー嬢が嫌でなければこのまま続けさせて欲しい」
食事を食べさせているアルフリードはとても嬉しそうでマリーは断ることが出来なかった。
「私達、夫婦になったのだからマリー嬢は変です…マリーとお呼び下さい。私もリード様とお呼びしても?」
『ひゃあ~呼んじゃった!リード様ッて』
「ああ、かまわない」
『止めて~そのとろけるような笑顔… 色気が駄々漏れ』マリーは砕けそうな腰に力をいれると真剣な面持ちでアルフリードに向き合った。
「リード様… 夫婦になったのだから隠し事なしですよね?」
「ああ」
「では、聞いてもいいですか?ベッドの下の箱はなんですか?」
「! … 見たのか」
「はい、見ました」
「そうか… 見られてしまったのなら仕方がない…今からする話を聞いて、マリーが俺の事を軽蔑することになったとしても俺はもうマリーを離す事は出来ない。それでも聞くか?」
「はいっ!」
『もう、早く話して~ マリーを離す事は出来ない だって!それだけでおかしくなりそう…離れられないのはこっちだわ!』マリーはそう思いながらアルフリードの話を聞くのだった。
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