49話
アルフリードの生い立ちを聞いたマリーは絶句した。まさか大好きな推しキャラにそんな悲しい過去があったなんて… 【身分差の恋~王子が私に恋する~】の作者め!
だから、少しずつマリーに惹かれていた自分の心に蓋をした事、無理矢理素っ気ない態度を取っていた事、「興味がない」と言う台詞は自分に言い聞かすために言った事、マリーの匂いが甘く感じ ツガイかもと疑った為に離れる事にした事… 話し終わったアルフリードは少し寂しそうにマリーに微笑んだ。
『全部私の為だったんだ… 傷付いていたのはだけじゃなく、リード様も一緒…』アルフリードの寂しそうな顔がとても愛おしく感じ、気付いた時にはマリーはアルフリードの口に口を押し付けていた…
『ひぁーー!私なんて事を!自分からリード様にキ、キスしちゃった!!』アルフリードは目を見開き、驚いていたけど、何故か部屋から出ていってしまった。『自分からキスしてイヤらしい女だと思われちゃったかな… だけど後悔はしてない』マリーは先程までアルフリードに触れていた唇に優しく触れると足をバタつかせ恥ずかしさをまぎらわすのであった。
◆◆◆
「今のは何だったんだ… 危うく理性が吹き飛ぶ所だった」
アルフリードは部屋から出ると書斎へ急いだ。本当は片時も離れたくはないが、無理矢理マリーを襲うことだけはしたくない。アルフリードは持てる理性を総動員させ、熱い身体を抑えるのであった。
「柔らかいな…」
初めて触れる女性の唇の感触にアルフリードは驚きを隠せないでいた。
◆◆◆
『あれっ?おかしいな…』あれから何日も朝晩を共にしているのに、一向に手を出してこないアルフリードに痺れを切らしたのはマリーだった。
『私って魅力ない?両想いで、キスまでしたのにどうして?龍人はツガイを見つけると直ぐに子作りに入るって聞いた事あるけど、リード様は違うのかな?』考えれば考えるほど不安に駆られるマリー。もしかして本当はツガイですらないとか… 隣でスヤスヤと眠るアルフリード、マリーは意を決して背中にくっついてみた。『温かい… いい匂いもする…』マリーはいつしかそのまま寝てしまった…
◆◆◆
『これはどういう状態だ…』只でさえ毎日寝不足のアルフリードは自分を必死に抑えていた。寝たと思っていたマリーが背中にくっついているからだ。細い腕がアルフリードの腹周りに絡み、柔らかい感触が背中に当たっている。
『駄目だ、我慢しろ… マリーの気持ちが追い付くまで手を出すな』一睡も出来なかったアルフリードは大きなアクビを何度も繰り返した…
◆◆◆
「リード様、子作りはいつから始めますか!」
『キャーついに言っちゃった』
「はぁ?」
『俺がこれ程までに我慢をしているのに何を言い出すんだ!』
2人の間に重たい沈黙が流れた…
『何も言ってくれない…やっぱり私に魅力が無いんだ』マリーは栓が抜けたかのようにポロポロと泣き出した。アルフリードは慌ててマリーに近寄ると「どうした?」と優しく頭を撫でる。
「リード様に触れたいのに触れられない、キスしたいのに出来ない、リード様は私の事嫌いなんだー」
マリーはたまっていた欲求不満をついに口に出してしまった。
「俺がどれだけ我慢をしているか、マリーは知らな過ぎる」
アルフリードは強引にマリーに口付けた。
「んっ~」マリーは目を閉じることなく、アルフリードを見つめた。
「大切にしたいんだ!マリーの気持ちが私に追い付くまで手を出さないでいようと決めていた…」
アルフリードはグッと拳に力を入れる。
「知らないのはリード様の方… 」
マリーは切ない声でボソリと呟くと、どこか覚悟を決めた面持ちで語り出した。自分の前世の話を…
前世の名前は 西城 舞梨。一見お金持ち美人ぽい名前だが、ごく一般家庭に生まれたごく普通の女の子だった。勉強もスポーツもごく普通。唯一得意だったのは絵を描く事だった。大好きなゲームや漫画のキャラクターを描いては鑑賞に浸っていた。そんな舞梨が中学になった時に出会った漫画が【身分差の恋~王子が私に恋する~】だった。勿論ヒロインのローズは好きだったけど、大好きだったのはアンソニーの護衛を務める龍騎士のアルフリードだった。いつしか 舞梨の部屋はアルフリード 一色になっていた。自作で作った缶バッチやキーホルダー、作れるものはあらかた作り尽くしたと思う。気付いた時には恋愛歴0の40歳になっていた。だけど、後悔した事は無かったし、幸せだった。いつも大好きなアルフリードに囲まれていたから… 後悔があるとしたら、死に際くらいだ…車に引かれた舞梨は呆気なくそのまま亡くなってしまった。どうせなら、アルフリードに囲まれた部屋で死にたかったと思ったのが最期だっただろう…
「と言う訳で、私は前世から今世にかけて、一方的な愛情をリード様に注いだって事です!気持ち悪いですか?」
マリーは恐る恐るアルフリードを覗き見た。『嘘!?リード様泣いてる!そんなに気持ち悪かったかな…』マリーはしゅんっと肩を萎めた…
「ははっ、一方的な愛情か…」
『父の様にはならないようにと、努力していた俺が馬鹿みたいだな。最初から全力でマリーを愛せば良かった』
「リード様?」
マリーは急にクスクスと笑いだしたアルフリードを不思議そうに見つめている。
「マリー 今夜、本当のツガイになるための儀式をしたいのだが、付き合ってくれるか?」
ゴクリッ
「はいっ…」
『ついに来た!』その日マリーはいつもより念入りに身体を隅々まで洗うのであった…
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