47話
「あれ、ここは?」
マリーは辺りを見回す、しかし、殺風景な部屋にはベッドとソファー、テーブルには水差しとコップが置いてあるだけだった。 『そうだ!私、リード様に…』自分の首を触り、先程のアルフリードの熱い吐息を思い出す… おのずと心臓はバクバクと速い鼓動を打ち鳴らす。『夢じゃないんだ…』マリーは再びベッドに横になると目を見開き、スンスンと鼻を鳴らす。
「リード様の匂い… もしかして、リード様のおベット様なんじゃ…」
マリーは顔を枕に押し付けたまま、力一杯鼻から息を吸い込む。『堪んねぇ~ いい匂いがする~微かに甘いに匂いもするな~ もしかして、リード様は私の願いを聞いて一夜を過ごしてくれるのかも…』マリーの顔から一気に血の気が引いて真っ青になる。マリーは慌ててドアノブを回すが外側から鍵がかかってるようでドアは開かなかった。
「誰かいませんか!!ここを開けてください!お願いします」
マリーは何度も大きな声で叫んでみたが、結局ドアが開くことはなかった…
「どうしよう…」
マリーはドアにもたれ掛かるとそのまま崩れるように尻餅をついた。『どうしよう…私今日、勝負下着じゃないよ…』マリーは1人途方に暮れていた…
◆◆◆
「アンソニー様、この書類を直ぐに受理して下さい。では、失礼します」
「ちょっと待ってくれ。来て早々なんだい?なんの書類を持ってきたって… えっー!ツガイ届け!!」
「はい、相手はマリー嬢です。ツガイ休暇も取りますので宜しくお願いします。失礼します」
アルフリードはそれだけ言うとさっさと部屋を後にした。
「大変な事になった!ローズとオゼットに知らせなくては…」
アンソニーは仕事を放り投げ、2人の元へ急いだ。
◆◆◆
途方に暮れていたマリーは叫び疲れて乾き切った喉を潤すため、ソファーに座るとコップに水を汲みコクコクと飲み干す。本当は盛大にぷはーと声を出したい所だが、部屋のあちらこちらから漂うアルフリードの匂いでマリーは捕まった子兎の様にビクビクと小さくなってしまっていた。
コンコンコンコンッ
誰かがドアを叩く音が聞こえる。マリーは反射的に「は~い」と返事を返した。すると一人の60代くらいの女性が部屋へ入ってきた。
「初めまして、ようこそドラグン家へいらっしゃいました。わたくし、メイド長をしております、ナニーと申します。今日から奥様のお世話をさせていただく事になりました。宜しくお願い致します」
「お、奥様!?誰が誰の!?」
「マリー様がドラグン家当主であらせられるアルフリード様の奥様です」
「わた、わた、おく、おく…」
マリーは何が何だか分からず、益々動揺する。そんなマリーをナニーは「可愛らしい奥様をお連れしたのですね」と優しい微笑みを浮かべていた。そして「旦那様からの贈り物です。今直ぐに開けて見て下さい」と小包をマリーに渡した。中身は高価そうな香水だった。「それを今直ぐに全身にお付けください」マリーはナニーの指示通りに全身隈無く香水を振りかけた。「では、旦那様をお呼びしますね」
「ま、待って!まだ心の準備が!」
マリーの制止も聞かず、ナニーは部屋を出ていってしまった。が、直ぐ様 部屋のドアが開かれた。
『なんだ、ナニーさん戻ってきてくれたんだ…』
「えっ?」
ドアの前にはアルフリードが立っていた。手の皿には何やら食事が載っているようだ。
「食事にしないか…腹が減っているだろう」
マリーは小さく頷く。コツコツとアルフリードが近づく音が聞こえ、その度にマリーの心臓は飛び上がる。隣にドカッと座ったアルフリードは皿を持ったまま、動かない。不思議に思ったマリーは横目でチラッとアルフリードを見るとばっちり目が合ってしまった。慌ててマリーは目線を机に戻す。
「嫌いな物はあるか?」
「いえ、特には…」
返事をしたものの、一向に皿を離さないアルフリードを不思議に思ったマリーはアルフリードを見る。
「やっとこっちを見てくれたか… マリー嬢、どうか君の食事を俺の手で直接食べさせたいのだが…」
『食べさせる?』マリーがキョトンと首を傾げているとアルフリードがフォークで刺した野菜をマリーの口元に持ってきた。『これを食べろって事なのね…ああ、リード様の前で口を開いて食べるなんて恥ずかしい… でも、リード様の為よ』パク!次から次へとマリーに運ばれる料理。
「アルフリード様、お腹いっぱいです。もう食べられません」
「そうか!」
『何あのとろけそうな顔… これは夢?リード様が私にあんな顔を向けるだなんて夢に違いない!』マリーは自分の頬を思いきりつねる。
「痛ッ!」
『夢じゃない…』
「何をしている!」
アルフリードはマリーがつねった頬を優しく撫でる。心なしかアルフリードの息は「はぁはぁ」と荒々しくなっていく。
「ア、アルフリード様?」
「すまない」と小さく呟いたアルフリードはマリーから手を離すと、呼吸を整えてから語り始めた。マリーがアルフリードのツガイだった事、既にもうツガイ届けを出したのでマリーとアルフリードは結婚した事になっている事、そして当分の間、この部屋から出る事が出来ない事を… マリーは終始信じられないと言う顔でアルフリードの話を聞いていたが、話し終えたアルフリードの顔が余りにも真剣で、マリーは信じざるを得なかった…




