37話
「アルフリード様 お肉が焼けました。もっと食べて下さい。沢山ありますので遠慮しないで下さい」
「ありがとう マリー嬢。君も食べたらどうだい?」
マリーはジャケットの失敗を取り返すべく、アルフリードにせっせと肉を焼いて運んでいた。『肉に食いつくリード様素敵~ お肉になりたい…』
「マリー 俺にも肉くれ~ 旨いな。この炭で焼いた肉や野菜を甘辛いタレに漬けて食べる。飯が進むな」
ザックは遠慮無しでバクバク食べている。
「自分で取って」
「ひで~な~ 扱いが違わないか?」
「… … 」
バーベキューは好評で、アルフリードも気に入ってくれたようでマリーはホッと胸を撫で下ろした。後は食後のキャンプファイアーで、今回の4泊5日の修学旅行は終わりを迎える。長いようであっという間に終わりに近づく修学旅行… マリーは少し切ない気持ちになっていた。
「綺麗ね」
「ああ、久しぶりだ。こんなにゆっくり出来たのは。マリー嬢のお陰で素晴らしい修学旅行になったよ」
皆で火を囲み、ゆらゆらと揺れる炎をボーと眺めている。それがやけに心に温かく、安らぎを与えてくれた。
『はっ!そうだった。この日のためにリア充しか楽しめないゲームを持ってきたんだった…前世では一度もしたことなかったから楽しみ~』
「ねぇ、みんなでゲームしない?」
「ゲーム?ボードゲームのような物か?」
「ううん。もっと簡単で大勢で出来るゲームだよ。題して【王子様だ~れだ?】ゲームよ」
「王子様誰だってアンソニーに決まってるじゃない!何を言っているのかしら?」
「違う!そうじゃないの… 王子様だ~れだ?ゲームはね…」
マリーはみんなに分かるように細かく説明した。
「成る程、その棒を引いて決めるって訳だね。面白そうだ。しかし、実際の王子は滅多に命令なんてしないよ。誤解しないでくれ。」
「ただの遊びですよ!別にアンソニー様の事ではないですから… 分かって頂けました?」
「なら、王妃様だ~れだ?にしよう。母上はいつでも命令ばかりしているからな。」
『あらあらっ…やけに気にするなぁ~面倒臭いからそういうことにしておこう…』
「じゃあ、始めるよ!1本ずつ引いて」
「おや、アルフリードは引かないのかい?」
「私は…」
「折角だ。一緒にやろう!このゲームが騎士にとって娯楽になれば、君も嬉しいだろう?これも仕事のうちだ」
「は、はぁ…」
「では、みんな引きましたね。王妃様だ~れだ?」
『あれ?おかしい…』数分もしない間にアンソニーはローズをオゼットはジョルズを連れてどっか行ってしまった。『絶対にズルしたな、あの2人…』アンソニーは自分が王妃に選ばれるとくずさま「王妃と1番が手を繋いで散歩に行く」って命令したから怪しいなぁと思ってたら、顔を真っ赤にしたローズが「私、1番です…」だもん。『分かってたわ!』
2人が抜けて続きをしてたら、今度はジョルズが王妃になって… 緊張した声で「王妃と3番が腕を組んで散歩」…私は見てたわ、ジョルズに一生懸命割り箸の数字を見せていたオゼットを… 何かこそこそ話をしていたから怪しいとは思っていたけど…
まあ、2人が幸せならそれでもいいか… って言いたい所なんだけど…
今、マリー、アルフリード、ザックは無言のまま3人で火を囲んでいる。
『き、気まずい… 何でこの2人ここから動かないわけ?私まで動きづらいじゃない…』
「「「……… 」」」
沈黙を破ったのは以外にもアルフリードだった。
「ザック殿は何故留学を?」
「アリア商会を継ぐためです。マリーと共同作業するためには、私にもそれなりの技術と能力がないと成り立ちません。隣国 サラマーンは産業大国 学ぶには最適でしたので留学しました。」
「成る程、王立学園には何故入られたのですか?」
「そ、それは…」
ザックはちらちらとマリーの方を伺っている。『なんなのよ…』
「はいはい、私が邪魔なのね~ ザックバレバレよ!シャワーに行ってくるわ。」
マリーは2人を残してシャワーに向かった。
「それで?何故王立学園に?」
「勿論、マリーのためです。父の話では獣人に襲われたり、泥棒に入られたりと随分危ない思いをしたと聞きました。マリーも後 2年で成人を迎えます。貴族のマリーは婚約者を決めることになります。私はそれに立候補するつもりです。出来れば、それより先にマリーの婚約者になれたらと思っています。貴方は?貴方はマリーをどう思っているんですか?マリーの気持ちは既に知っていると聞きましたが」
「私は… 私は… ヒト族の女性に何の感情も抱くことはありません。マリー嬢は優秀な方だ… ただ それだけです」
「でも、貴方は… 貴方がマリーを見る目は異常です!それに気付かないんですか!」
「私はマリー嬢には全く興味がありません。アンソニー様の友人である限り、私はその方を守る… それだけです。少し疲れました… 私は夜間の見回りもありますのでこれで失礼します」
アルフリードはザックから逃げるようにテントの中に入ってしまった…
「チッ… あんな顔で言われても、信じられるわけねぇ~じゃん」
ザックは1人燃え盛る炎を眺めていた…
◆◆◆
「マリー嬢には全く興味がありません。」
『そっか… そうだよね。分かってた事だけど直接言われるとやっぱキツいわ… 』シャワーに向かったけど、忘れ物して戻ってきたら聞こえてきた声… 『聞きたくなかったな… 頑張れるかな私…』マリーは来た道を戻っていくのであった。
◆◆◆
『動揺してしまったか… もう少し上手く答えられると思っていたが、これ程 俺の中でマリー嬢は大きな存在になりつつあるとは…』
アルフリードは今すぐにでもマリーの元へ向かいたい気持ちをグッと押さえ、するはずのない匂いを求めてジャケットを嗅ぐのであった…




