35話
「「キ、キスーーぅ!?」」
『おかしい!キスは断罪イベントの後だったはず…』
「声が大きいわ。おでこによ…」
「やっぱり変態王子は手が早いわ…」
「そうね。まさかわたくしもここまで早く事を進めるとは思わなかったわ!」
ローズの顔は益々真っ赤になり、茹で蛸の様である。
「で、どうするの?」
「そうよ!どうするの?」
「ど、どうするって言われても… 突然で驚いてしまって…」
「そうよね…」
「ローズもついに大人の階段を登り始めたか…」
「マ、マリー 変な事 言うのやめて!も、もう私寝る!」
ローズは頭から布団を被り、猫の様に小さく丸くなる。
「そ、そうね。そろそろ寝ましょ。おやみなさい」
「おやみなさい…」
2人は火照った体を無理矢理布団の中に押し込むと黙って目を瞑った…
◆◆◆
『ああ、もう眠れない… あれから結構時間がたっているのに全く眠気がおきない。』マリーは静かに布団から抜け出ると皆を起こさないようにテントから外へ出た。『少し肌寒いな…』マリーは持ってきたストールを体に巻き付けると椅子に腰掛けた。
「リード様 今頃寝ているかな…」
アルフリードの寝顔を想像してニヤニヤする口を押さえながら1人でキャッキャしていると前に突然アルフリードが現れた。
「あれ?妄想が幻影に変わった?」
「何を言っているんだ?さっきからずっと呼んでいるのに全く気付かないから近くまで来たんだが、こんな時間に何をしている?」
「あっいや、眠れないので少し夜風にあたろうと…アルフリードは?」
「私は見張りだ」
『き、気まずい… 1人で妄想して笑ってたの見られてたの!?いつから?何処から?』マリーはぐるぐると考えを巡らせていると ふあっと とてもいい匂いが鼻を刺激した。『へっ?』
「外は寒い。また風邪を引くかもしれない…良かったらこれを使ってくれ。私はまた見回りをしてくる。おやすみマリー嬢…」
アルフリードが立ち去った後、マリーはわなわなと震え出す。『ちょっと… これって リード様のジャケット… 』マリーはキョロキョロと辺りを見回し、誰も居ないことを確認すると慌てて布団へと戻り、頭から潜った。勿論手にはアルフリードのジャケットが握りしめられている。マリーは握りしているジャケットに顔を埋めるとスンスンと鼻を鳴らす。『はぁーいい匂い。堪らん…』またスンスンと匂いを嗅ぐ。『やだ、どうしよう… 眠れる気がしない…』スンスン 何度も何度も匂いを嗅いでいたマリーはいつしか夢の中にはいっていた…
◆◆◆
「はっ!」
目覚めたマリーは手にガッツリと握られているジャケットを見て冷や汗をかく… ジャケットはマリーが強くに握っていたため、しわくちゃになり、何より匂いを嗅ぎながら寝たせいでよだれを垂らして染みになってしまっていた…『ど、どうしよう…』
「マリー何時まで寝ているつもり?わたくし達は朝食を済ませたから海に行ってくるわね。貴女が持ってきた釣り道具借りていくわよ。それにスタッフも連れてくから」
「う、うん。私も支度を済ませたら後から行くよ」
『まずはジャケットをどうにかしなくっちゃ…』マリーは着替えを済ませるとジャケットを持ちテントから外へ出た。『染みを取るために洗わないと…』
「マリー嬢、ジャケットを持ってきてくれたんだね」
ギクッ
「ア、アルフリード様。ごきげんよう… アンソニー様達と海に行かれたのでは?」
「アンソニー様からマリー嬢の準備が終わったら一緒に来るように言われてね。待っていたんだよ。それに龍騎士の制服はそれ1枚しか持ち合わせてなくてね。」
『ゲゲッ… まずい展開…』アルフリードはマリーに近付くとジャケットを返せとばかりに手を差し伸べてきた。マリーは観念してアルフリードに謝った。抱き抱えて寝てしまったこと。そのせいでシワが出来てしまったこと。勿論 匂いを嗅いでいた事とよだれをつけてしまった事は秘密だ。
「なんだ、そんな事が。余程 寒かったんだろう。風邪を引かなくてよかった。私はシワなど気にしない。」
「… ありがとうございました」
『臭くないかな… 匂いを確認しとけば良かった…』マリーがジャケットを返すとアルフリードは直ぐ様それを着て顔をしかめた。『嘘!やっぱり臭かったんじゃ…』
「マリー嬢 すまないが皆の元には1人で行けるか?すぐそこの海にいるはずだ… 私はちょっと急用を思い出したので失礼する…」
アルフリードはジャケットを脱ぐとそれを持ったままシャワールームがある方へと向かっていった。
「やっぱり臭かったんだ…」
マリーはのそのそとテントに戻るとそのまま布団に潜りふて寝した…
◆◆◆
『この甘い匂いはなんなんだ…』マリー嬢から受け取ったジャケットを着ると襟から甘いなんとも言えない匂いがした… 体が熱くなるのを感じ、慌ててシャワールームに来てみたが… もう一度匂いを嗅いでみる。
スンスンスン… 『まずいな…』アルフリードは火照った体を水で冷やし、念入りにジャケットを洗うのであった…




