34話
「ザック殿とは… 成人したら婚約を結ぶのか?」
「えっ?」
先程まで心地よく鳴り響いていた小波の音が今では全く聞こえない。アルフリードから発せられた言葉でマリーは自分の心臓が跳ねるのを感じた。『リード様は私の気持ちを知っていてそんな事を言うの…』マリーの頬を一筋の涙が流れ落ちる。
「マリー嬢?」
少し前を歩ってたいたアルフリードがマリーの方に振り向き、ハッとする。
「こっちを見ないで下さい!」
「泣いているのか?どうした?」
アルフリードはマリーにそっとハンカチを渡す。
「アルフリード様は酷いです…」
『ああ、涙が止まらない… リード様を困らせるなんて最悪…』
「お~い。マリー?何処にいるんだ?」
その時、ザックのマリーを呼ぶ声が聞こえてきた。
「私 行かなくちゃ… 呼ばれてる」
マリーはその場を逃げるようにザックの声がする方へ足を向けた… が、片腕を強い力で引っ張られ動けない。
「もう少しここに居てくれないか?」
マリーは驚き、アルフリードを見ると熱い視線とぶつかった。『な、何… この色気… 鼻血が出そう』
「マリー!あれ?こっちから声がしたような気がしたんだけど…」
『な、な、な、なんで!私 今 リード様に抱き抱えられて、空の上にいる?あれ?ここは天国?』マリーを抱えたまま空へと飛びたったアルフリードはザックが居なくなったのを確認すると地上へと舞い降りた。
「マリー嬢?」
アルフリードの問いに答える事も出来ず、マリーはどうやら失神してしまったようだ。
「すまない、驚かせてしまったか…」
アルフリードは「マリー」と呟くと抱えているマリーを強く抱き締めるのであった…
◆◆◆
「アンソニー様、少し遠くまで来すぎではありませんか?」
「大丈夫だ。この島の地図は頭の中に入っているからね」
『折角ローズと2人きりに慣れるチャンスだ。誰にも邪魔されたくない… それに…』
「ほら、見てごらん。ここからの景色を君に見せたかったんだ」
「素敵… 波が月の光に照らされてキラキラ光っています」
ローズはウットリと景色に魅入る。そんなローズを見つめるアンソニー。優しく潮風がローズの髪をなびかせる…
「ローズ… 君はなんて美しいんだ…」
アンソニーはストロベリーピンクの髪をひと掬いするとそっと口づけを落とした…
「い、いけません。アンソニー様…」
「ローズ… 私は君の事が好きだよ」
たじろくローズの腰に腕を絡めたアンソニーは力強く体を密着させる。
「ローズ… 今までこんなにも私の心を乱す者は居なかった。君が初めてだ…」
アンソニーはそっとローズの額に口づけた…
「どうか 私を好きになってくれ…」
「アンソニー様…」
星が輝く夜空の下… しばらく2人は見つめ合っていた。
◆◆◆
「何処へ行くんだい?」
ジョルズはオゼットの後を付いていく。
「邪魔しちゃ悪いでしょ?」
「オゼットはそれでいいの?アンソニー様は君の婚約者だろう?」
「いいのよ。わたくしアンソニーの事は友達としか思ってませんもの。」
どんどん森の中の道を進んで行くオゼット。
「ねぇ、何処まで行くの?」
「わたくしも分からないわ。でも、貴方とだったら何処まで行っても怖くないもの…」
「オゼット… 髪に虫付いてるよ?」
「キャー取って!!」
オゼットはジョルズの胸に抱き付くと広い背中にぎゅっと手を回した。『ジョルズの匂い…安心するわ。それにこの筋肉… ずっと触っていたい』
「もう取れたよ!」
「わたくしとても怖かったの… もう少しこのままで居させて…」
「そ、そんなにくっつかれたら… オ、オゼット…」
「もう少しだけ…」
『ああ、ジョルズ… 貴方を愛しているわ…』
◆◆◆
「はっ!」
『いけない!トリップしてた… 』あの後、目を覚ましたマリーはお姫様抱っこで運ばれているのを視認してからの記憶がない『ひゃ~!恥ずかしい… リード様におひ、お姫様抱っことか有り得ない!!?』先程から思い出してはトリップを繰り返していた。
「あれ?2人ともどうしたの?」
ふと、オゼットとローズに目を遣ると珍しく2人もぽーとしていた。『はは~ん。何かあったな?』
「オゼット、ローズ 恋する乙女同盟 略して 恋乙 の集会始めるよ~ 聞いてくれる?実は…」
マリーはアルフリードと散歩に出掛けたこと、泣いてしまったこと、お姫様抱っこをしてもらったことを包み隠さず話した。
「あら、貴女達いつの間に両想いに?」
「両想い!?ち、違うよ!ただリード様が優しくて、イケメンでいい匂いがしたって事よ」
「おめでたい頭ね。わたくしの話も聴いてくださる?」
オゼットはジョルズに抱き付いてしまったことを話してくれた。
「ああ、オゼットって筋肉フェチだもんね~」
「き、筋肉フェチですって!?いつわたくしが筋肉好きって事になったのよ!」
「あれ?違った?いっつもジョルズの筋肉をうっとり眺めてるからそうかなって思っただけ~」
「… !」
オゼットは顔を真っ赤にして何かぶつぶつ独り言を始めた。
「それで、ローズはアンソニー様と何かあった?」
ローズは顔を真っ赤にしてコクンと小さく頷く。『流石ヒロイン可愛いなぁ~』ローズは暫く黙っていたが、重たい口を開き、語り始めた…




