第4部 おまけ1 ダオとセダムの後日譚
魔族のダオについて。
魔導人形を解放し、あの第二次魔導災害を引き起こす原因を作ったことで、牢に入れられる。
だが、魔族の寿命は長い。
牢から出るころには青年となっていることから、牢から出た後も、シルバー王国の諜報部員として、エルフ族のセダムと共にこき使われることが決まっている。
人族から見れば重い刑であるが、本人はそれほど気にしておらず、死刑にならなかっただけましだと考えている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
政務大臣ジングートからダオの処分を聞いた後、僕はふと疑問に思ったことがあった。
「ねえ、シェラ。ダオってさあ。魔族だよね。魔族だということで差別を受けて、親も殺されたってことだけど・・・・」
シルバー王国を治めていたシェラは、そのことを知っていたのかな?
僕はシェラにそう聞こうとした言葉を飲み込んだ。
シェラに責任があるわけではないと思ったからだ。
だけどシェラは、僕の意思を汲んだうえで質問に答えてくれた。
「はい・・・・ご主人様の仰る通りでございます。ただ、ただ、言い訳、ではありませんが。不愉快になられたのであれば、処分を受け入れるつもりでございますが」
「わたくしが主導してまいりましたシルバー王国では、そのような差別は決して許しておりません」
「だよねえ」
「ただ、シルバー王国に併合する前の国の多くが、他種族を差別し、ひどい扱いをしていると聞いたことがあります。そのときの出来事ではないかと・・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
エルフ族のセダムについて。
あるとき、寮の部屋でゆっくりしている僕のもとに、ふらりと託宣の巫女様がやってきた。
託宣の巫女様は薄いベールをかぶり、顔が分からない。
託宣の巫女様はシルバー王国では、大将軍シェーラと並ぶ要人であり、国王でも気軽に会えるような人物ではないらしい。
でも僕は、あの夢の中で一度会っている。
たしか、夢の中ではエルフ族の長だったはず。
そのときは、いまのように薄いベールを被っていなかったと思う。
僕の前に立つと、託宣の巫女様は頭を下げ、
「かつてのエルフ族の長として、このたび、一族のセダムが多大なご迷惑をおかけしたことをお詫びしますですじゃ」
託宣の巫女様が、僕に頭を下げる。
だけど僕は、言葉の方が気になってしまう。
まるでお年寄りのような言い方だ。
託宣の巫女様も長く生きていると聞いているから、かなり年を取っているのかな。
僕はお詫びの言葉を受け取り、もう気にしていないと伝えた。
託宣の巫女様はそれを聞いて、安心したような声を出す。
その後、託宣の巫女様の方から年間終業の式の話題を振ってきた。
あの場には、託宣の巫女様もいたそうだ。
「あの結果は残念でしたな。ですが、あの場にいた者全員が、この国を救ったのが誰か分かっておりますでな。お気を落とさんでくだされ」
託宣の巫女様はそう言って、僕に微笑む。
「魔導人形の討伐ができたのは、僕だけの力じゃありません。僕のパーティメンバー全員が力を合わせた結果なんです」
「ふうむ?そなたが言うならそうかもしれんな。・・・・ところで、そなたのパーティの名前をうかがってもよいかの?」
「僕のパーティの名は、シルバーの栄光といいます。でも最近、名前を改めようかと考えています」
僕は、かねてから考えていた名前を告げる。
「ホワイトの栄光、というのはどうでしょう?」
「ホワイト?ふうむ、その理由はなんじゃ?」
「僕、夢で見たんです。ホワイトという人の活躍ぶりを。それでその人に憧れてしまって。シルバーとホワイトって色も近いし、どうかなって思って」
「なるほどのう。そなたの言うホワイトどの、の活躍ぶりを見てのう・・・・。それにしても、あの魔法と剣を合わせた威力は凄まじかったのう。あれはそなたの考えか?」
「いえ、違います。あれこそ、夢で見たホワイトという人が使っていた技なのです。夢なのにはっきり覚えていて。あれなら硬い魔導人形も斬れると思って練習したんです」
「それに忘れられないと言えば、もう一つあって・・・・」
「ホワイト・・・・という人の恋人だと思うんですけど、黒髪の人へ向けた熱い気持ち、愛というんでしょうか」
「ホワイトという人が魔法剣を使うときは、いつも黒髪の、そう、ラベンダー、という名前でした。その女性を想いながら使っていました」
「たぶん、あれは危険な技なんです。身体や魂を削るほどの。でもラベンダーという人を守るために、ホワイトさんは使っていたんじゃないかな、と思って」
そばで聞いていたノワールは、静かに涙を流していた。
その隣にいたガーネットも泣いていた。
僕はそれに気づかずしゃべっていたが、託宣の巫女様も、エクレア以下、メイドたちはみな気づいていた。
託宣の巫女様が、雰囲気を変えて、年寄りの言い方から普通の言い方に戻す。
「さて、託宣の巫女という立場でお詫びをしたくて参りましたが、それも終わりました。ここからは本来の立場に戻って、ご挨拶をさせていただこうと思います」
そう言うと、託宣の巫女様は被っていた薄いベールを取り、顔をさらした。
美しい。
普段からエクレアたちの顔を見慣れている僕でも、一瞬、見惚れるほど。
エルフ族ということだけど、もともとエルフ族は美形で有名なのだ。
託宣の巫女様は僕に対して敬意を払う姿勢をとると、
「改めてご挨拶を。わたくしは序列134位のチャコールと申します。ご主人様の忠実なしもべ。そして、エクレア様の使徒にございます」
出た。
使徒。
たしか、エクレアの弟子?みたいなもの、だよね?
託宣の巫女様までエクレアの弟子だなんて、エクレアの顔も広いな。
「お久しぶりでございますね。ご主人様。以前お会いしたのは、おそらく数百年前かと。あのときは、たしかレッドという魔族であったと記憶しております」
「わたしも使徒の端くれとして、ご主人様のおそばでお仕えしとうございましたが、わたしはご主人様のおそばではなく、引き続きシルバー王国をシェラ様とともに支えよとご下命を受けました」
「ですが、そばにはおらずとも、わたしもご主人様の忠実なるメイド。何かありましたら何なりと、何なりとお申し付けくださいませね」
託宣の巫女?
チャコール?
どちらの名で呼べばいいのか分からないけど、くどいほど僕になんでも言いつけてほしいと言いながら、お屋敷を去っていった。
エクレアが言うには、僕のメイドとなった王太女ラナンキュラスを支えるため、シルバー王国に多大な影響を持つ託宣の巫女役を継続させるとのことだった。
「わたくしも、ご主人様の従者の空いた時間で大将軍を務めることになりました。わたくしと託宣の巫女チャコールが支持すれば、ラナンキュラスも安泰ですよ」
と、シェラはえっへんと腰に手を当てて、安心してくださいねと得意げな様子でいた。




