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第11話

のちに第二次魔導災害と呼ばれる大事件は終わった。


シルバー王国を中心に被害が出たが、政務大臣ジングートらの活躍と働きによって、被害を最低限に抑えるとともに、その復興も目覚ましく早かったという。


むろん、シルバー王国の復興を、プラチナ帝国、神聖ゴールド聖教国の二国も応援を約束したことも記しておかなくてはいけないだろう。


特に、プラチナ帝国の皇子が獅子奮迅の働きを見せ、プラチナ帝国から過剰ともいえるほどの復興資金を引っ張り出すことに成功し、シルバー王国の国民からは大きく感謝されることになったという。


一方で、このような事件が起きた裏を、シルバー王国は軍を挙げて捜索中であるが、その犯人はいまだ不明である・・・・。


「モゴロド、いや、セダムだったか。おまえの仕組んだ情報操作で、新聞はこのように書いているぞ」


シルバー王国の政務大臣の執務室で、政務大臣ジングート・サンライズ公爵は新聞片手に、半ば呆れたように、隣にいる白髪の老人に声をかけた。


その老人はエルフ族であるが、それにしてはずいぶん年を取った風貌をしている。


「仕方ないでしょう。それが大将軍様のご意向だったのですから。わたしめは、大将軍様の言うままに動いたにすぎません」


「ふ~ん、そうなのか。なら仕方ない。このまま犯人は捜索中とするか」


政務大臣ジングート・サンライズ公爵は、こともなげにつぶやく。


「まあ、捜索を請け負う諜報部員自身が真犯人なんだから、捕まるわけはないか」

そう。


あの後、エルフ族のセダムは、数々の犯行や黒幕として動いてきた事件に対し、その罰としてシルバー王国の諜報部員をさせられることになったのである。


表に出てくることはなく、ずっと裏で暗躍することを義務づけられたのである。


そして、そんなセダムを大将軍シェーラがずっと見張ることになったのだ。


ちなみに、セダムはエルフ族なので、本来なら若い容姿をしていたのだが、大将軍シェーラの無言の圧を受け、一気に老けてしまったのだ。


「前回は追放で済ませてやったが、今回はこき使ってやるぞ」


という、大将軍シェーラのありがたくない言葉までいただいてしまっている。


苦虫を噛み潰したような顔をしながら、セダムは、政務大臣ジングート・サンライズ公爵に、


「さよう。それでは、そろそろ仕事に戻ります。何かありましたらお呼びを・・・・」


そう言って部屋を去っていく姿に、かつてのふてぶてしい雰囲気はない。


完全に、大将軍シェーラに心を折られたのだろう。


政務大臣ジングート・サンライズ公爵は、なんとも言えない表情でセダムの後ろ姿を見送るのだった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


春を目前にして、アカデミー高等部では、一年を締めくくる年間終業の式が、学園内にある講堂で行われる。


年間終業の式は、学園長が四つの寮のうち最優秀であった寮の発表、続いて最優秀であったパーティの発表を行い、その後みんなで立食パーティーを行う流れである。


そして毎年「大将軍の剣」寮が最優秀に選ばれてきた。


創立以来ずっと。


しかし、今年は違うかもしれない。


そういう緊張感が、講堂内に漂っていた。


なぜなら、このアカデミー高等部の中に、あの魔導人形の暴走を止めた者がいるということが、皆に知れ渡っているからである。


そして、それが僕だと知られている。


誰も倒せなかった魔導人形を倒した者が、「大将軍の剣」寮以外の生徒にいる。


それだけで十分、最優秀に選ばれる理由になる。


裏を返せば、「大将軍の剣」寮が最優秀を取れないということになるのだ。


この年間終業の式は大切な節目の式なので、親も来ている。


当然、生徒の親もアカデミー高等部の卒業生であるし、ずっと「大将軍の剣」寮が最優秀に選ばれてきたことを知っている。


だからなおさら親の席でも、今年はどうなるかとハラハラして発表を待っているのだ。

ところが。


学園長からの発表で、「大将軍の剣」寮が最優秀に選ばれた。


おお~。


ほぅ~。


生徒席からも、親のいる席からも、いろんな種類のため息が漏れる。


しかし解せない。


学園長はあのことを知らんのか?


という声も聞こえてくるほどだ。


しかし学園長は、そんな外野のざわめきを無視して次の発表を行った。


次は、最優秀パーティの発表だった。


皆が固唾をのんで発表を聞く。


学園長からの発表では、最優秀パーティは、僕たちのパーティではなく、序列一位の「銀の栄光をつかむ者」パーティが選ばれた。


しかし、


「それは違うだろう。明らかにわれらが最優秀とは思えない。お情けをもらって喜ぶほど、われらは落ちぶれていない。最優秀にふさわしいパーティは他にいるはずだと思うが?」


と、選ばれたはずの「銀の栄光をつかむ者」パーティのリーダーが異議を唱えたのだ。


あのとき、会場を襲った魔導人形になすすべもなくやられてしまったことは、まだ記憶に新しい。


だが、学園長は異議を唱えたリーダーに対し、ギロッとにらみ、


「あ~、本来なら言わないのだが、今回は特別に、点をつけたその配点を発表する。どうやら皆が納得できないようなのでな」


コホン。


と学園長は咳払いし、


「まず、魔導人形討伐に参加したパーティすべてに、その勇気を讃え・・・・」


「100点を与えた」


「おおお!」


「特に魔導人形討伐に活躍した序列最下位の『シルバーの栄光』には、300点を与えるものとする」


「おおおおおおお!!」


「妥当だな」


「うむ。その点なら納得だ」


と、周囲から学園長の点のつけ方に納得する声があがる。


「しかし!!」


「そのパーティは、王族への不敬!!」


「こともあろうに、王太女殿下への無礼な言動があった。今回は魔導人形の討伐に功があるため不敬罪は問わないが、」


「200点減点とする」


え?


「そして!!」


「あろうことか、プラチナ帝国皇族への無礼な発言も認められる」


「よって!!」


「さらに200点減点!!」


「計マイナス100点とみなし、最下位とする。以上」


「・・・・・・・・」


「それは・・・・仕方ないか」


「仕方あるまい」


「公平だな」


「むしろ、温情」


皆が納得した。


・・・・。


僕はいまいち、理不尽な気持ちが残ったけど。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


式が終わって。


「ふう。やっと式が終わったね。これからどうしようか。町へ出てスイーツを食べに行くかい?」


僕は一緒にいたナスとラナンに声をかける。


ナスもラナンも、本当は皇族で王族なのだが、この式だけはいままでどおり一般の生徒として出たいという希望だったので、一般生徒席で参加したのだ。


もちろん、周囲には護衛騎士がたくさんいたが。


「いやいや、あんな結果だなんて厳しいと思わない?!」


と、ラナンがぷくうと頬を膨らませる。


だけどナスが、


「まあ・・・・仕方ない、のかな。一応俺たち王族になったんだし。なにより、グリーンは目立つのが嫌いだろ」


「うん、そう。僕はあれですごくホッとした。さすが、親友、よく分かってるね!!」


「まあなあ、そこそこ付き合いも長くなったし。だから、もう怒るなよ。それより、グリーンの言うように町へスイーツを食べに行こうぜ。新作の入ったカフェを知っているんだよ」


ナスはラナンをなだめながら、スイーツへ誘う。


その言葉にラナンは機嫌を直したかのように笑顔になり、行きたいと言う。


ちなみに、ラナンはもう男のふりをしていない。


かといって、王太女としての服装もしておらず、ごく一般的な令嬢の服装をしている。


もちろん、本人の希望である。


またナスも、プラチナ帝国の皇子という身分に復帰したが、以前と変わらない。


服装も以前と変わらない。


僕はそれが何より嬉しかった。


「うん?どうしたんだよ。にやにや笑ってさ。さあ、カフェへ行こうぜ」


立ち止まっている僕に、ナスは声をかけてくれる。


うん。


幸せだ。


こうして僕を気にかけてくれる友人がいるんだから。


この国でも、大臣から罪人として扱われた。


またか。


また貴族から理不尽な目に遭うのか。


牢屋に入れられたときは、そう思ったけど。


すぐにラナンやナスが助けに来てくれた。


持つべきものは親友だ。


「もちろん行くよ!!待ってよ」


と走り出す僕の後を、


「あん、待ってよ~、ご主人様。わたしも行きますよお」


と駆け出すこの国の王太女。


遠くから護衛をしている近衛騎士らは、なんとも言えない表情で、笑いながら走っていく三人を追いかけるのだった。


第4部 本編 終わり


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