第7話
僕は持っている長剣を魔導人形に向けて構え、
「作戦開始!!土壁と、風属性結界を最大で。あと、雷、照準用意!!」
魔導人形と対峙するのは、これで二回目だ。
一回目は、なす術もなくやられたけど、僕は夢の中でレッドを通して見ていた。
魔導人形が町を焼き、建物を壊すところを。
だから僕は、魔導人形の性能や動き、魔法を撃つタイミングを知っている。
そしてその行動を分析して、こいつを倒すためにパーティで訓練を繰り返した。
僕の考えている通りなら、勝算は十分にある!!
・・・・だけど、僕の指示で誰も動かなかった。
「ほれみろ」
という小さい声が、しっかり聞こえてくる。
ラナンもナスも、そしてダオも、動いていいかどうか悩んでいるみたいだ。
そこへ、かわいい声が飛んできた。
「ご主人さま、もう一度、指示をお願いします!!」
クレオメだ。
クレオメがいつの間にか会場にいて、僕に大声で声をかけてくれたのだ。
僕はその声に勇気づけられ、もう一度叫んだ。
「作戦開始!!土壁と、風属性結界を最大で。あと、雷、照準用意!!」
その直後、魔導人形が大勢の人のいる方へ、大きな火球を放つ。
まずい!
「風だ!!ラナン!!僕の前方右斜めだ、急いで!!」
このときになって、やっと意を決した王太女ラナンキュラスは護衛の騎士を振り切り、魔力を集め、風属性魔法で襲い来る火球を人々からそらした。
ラナンの放った風属性魔法のおかげで、火球はあさっての方向へ飛んでいく。
「ラナン様の風属性結界、前回より強度が12パーセント伸びています」
クレオメが冷静につぶやく。
それを見た魔導人形は魔法をやめ、大きな腕を振るって攻撃を仕掛けてきた。
貴族たちは大きな腕を見て悲鳴を上げるが、これも対策済みだ。
「次はナス!!土壁だ!!」
僕がそう叫ぶと、ナスは、
「おう!!」
と、着替えてきたのだろう皇族の式典用の服をびりびりに破って動きやすくし、詠唱を唱えて土属性魔法の土壁を出した。
どごおおん。
魔導人形のパンチが、間一髪で土壁に当たる。
魔導人形のパンチを受けても、土壁は崩れることなく形を保ったままだった。
よし、耐えたぞ。
「ナス様の土壁、衝撃を受けた際の崩壊率が51パーセント減少」
クレオメだ。
なんか、冷静だな。
だが、これで魔導人形の腕力は封じたも同然だ。
僕がそう計算しているのをよそに、貴族たちとともにいた内務卿のクローバー侯爵は、
「な、なんと無礼な!!平民ごときが王太女や皇子に命令などと!」
と、ひどく激昂していた。
そんな僕への批判をよそに、僕は戦況を分析していた。
魔導人形は魔法を止められ、腕力によるパンチも防がれたのだ。
ならば次は、奥の手である雷属性の光線を放つはず。
だけど、これにも弱点がある。
魔導人形の動きが少し弱くなった。
「大きいのが来るぞ!!チャンスだ。これをしのげば勝てる!!風属性、魔力を蓄えて!!」
僕の掛け声に、ラナンキュラスは、
「はい!!」
と、嬉しそうに返事をする。
そして魔力を増幅させるため、集中する。
魔導人形の口元が大きく開く。
「来るぞ!!」
口元から、今まで見たこともないほどの魔力の塊が飛び出す。
その魔力の塊は、まっすぐに皇太子や貴族が集まっているところに放たれた!!
「今だ!!風、ラナン!!最大風速であれに当ててくれ!!」
ラナンキュラスは魔力の限り大きな風を巻き起こし、魔導人形が放った雷属性の光線めがけて風を当てる。
狙いを一点に絞り、そこに風を集中して当てることで、光線の向きを変えることを狙っている。
光線は細長いので、狙いを一点に集中すれば、向きだけでも変えられるだろうと考えたわけだ。
そしてその狙い通り、光線の向きを変えることに成功し、被害を出さずに済ませた。
チャンスが来た!
この雷属性の光線は魔導人形にとっても負担とみえ、およそ十秒ほど動きを止めるのだ。
いまだ。
このチャンスをものにしてみせる!!
「雷、ダオ!!タイミングを合わせるぞ!!」
「ダオ様の雷属性魔法、発動から着弾までの平均時間は1.8秒です」
クレオメの声と同時に、監視役の騎士を振り切り、ダオが魔力を込める。
「魔力発射が間に合った!!雷属性魔法、行きます!!」
ダオの掛け声とともに、ダオから雷属性魔法が魔導人形に向けて放たれる。
この瞬間のために、パーティとして魔導人形を倒す訓練を積み重ねてきたようなものだ。
そしてタイミングをつかむために、何度も雷属性の魔法を受けてきたんだ。
僕は剣を振るう。
いまからやることは、夢の中で学んだ技。
魔法と剣を合わせる、名付けて「魔法剣」。
この技は、直接身体にまとわせるとダメージが大きい。
だから相手に剣と魔法を同時にぶつけることで、魔法剣と同じ効果を得ようと僕は考えたのだ。
タイミングがすべてだ。
そして僕は、僕たちは、これをやってのけた。
「ご主人様、魔法剣の同期成功率、97パーセント!!」
・・・・
・・・・
気がつけば、魔導人形は真っ二つになっていた。
「討伐完了!!」
周囲の貴族や生徒たちは、襲いかかってきた魔導人形が真っ二つになり、動きを止めているのを認識すると、歓声と拍手を巻き起こした。
まさしく、僕たち「シルバーの栄光」パーティが認められた瞬間だ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕が人々を守る大きなことを成し遂げた後、必ず、貴族の手で罰を受けてきた。
僕はそのことをすっかり忘れ、魔導人形の討伐に全力を注いだ。
そして、その後。
僕の危惧した通りになってしまったのだ。
僕は、王国の大臣から「王太女ならびにプラチナ帝国の皇子に対する暴言を吐いた罪」で、牢屋に入れられてしまった。




