第3話
ダオの命令により、大量の魔導人形が地下格納庫から外に出る。
あまりの数の多さに、僕は呆然としてしまった。
どうしよう。
このままでは世界が危ない。
平和に暮らしている人たちが、戦禍に巻き込まれる。
そんなことはいやだ!
「本当に魔法生命体を知らないんですか?もし知っていたら、今のうちに知らせてください。そしたら魔導人形の征服を止めるかもしれませんよ~」
ダオは本当か嘘か分からないような声色で、こちらをうかがってくる。
魔法生命体?
本当に知らない。
聞いたこともない。
「知らないよ!!」
そう叫ぶと、ダオはつまらなさそうに、
「そうなんだ。残念。じゃあ、あんたたちも殺してあげるよ。・・・・ふふ。僕はね。魔族なんだよ」
そうポツリとつぶやいた。
「父さんも母さんも、魔導王国パール時代からの生き残りの魔族だったんだ。だけど、目立たないようにシルバー王国の平民として暮らしていた」
「だけど、ある日、ちょっとしたことで魔族とばれてから、周囲の奴らの見る目が変わったんだ」
「僕たち魔族から魔石が採れるんだと。高額の報奨金をかけられて、命を狙われるようになったんだ」
「そして父さんと母さんは、僕を守って死んだ・・・・」
「途方に暮れた僕は、闇ギルドに入った。そして復讐するため、情報を集めるために、アカデミー高等部に入ったのさ」
「そこには、貴重な情報を貴重と思わない馬鹿な奴らが大勢いたから、情報収集にはうってつけだったさ」
「そして一番のバカはあんただよ。リーダー先輩!!」
「みすみす貴重な魔導人形の起動スイッチを、僕に教えてくれたんだからな!!」
「あっはははははは!!」
魔族のダオが闇ギルドに所属したきっかけは、魔族だからといって差別を受け、両親を殺されたことへの恨みだった。
両親への復讐がきっかけと知った僕は、とてもダオに止めろとは言えなくなった。
両親を知らない僕に、両親を殺されたダオの心がどれだけ悲しんだか、計り知れないからだ。
「ついでに言うと、僕は『特政枠』のあんたに近づけと命令を受けたんだ。あんたもよく知っているあの人に。そのために、あんたのパーティに入ったんだよ」
最初から僕が目当て?
「最初から仕組まれていたんだ。気づかなかったろ?」
「なぜ僕を狙う?」
「良くは知らないが、あの人はエボニー砦の奇跡の恨みだと言っていた。あんた、あれに関わっていたのかい?」
ダオは訝しげな顔をして、僕の方を見る。
その時、突然、大柄な男性が転移魔法で現れ、僕たちの間に割って入った。
「そこまでだ!!」
声の主は、なんとアカエール将軍だった。
アカエール将軍とモゴロド教授、それに数十人のシルバー王国兵が転移魔法で現れたのだ。
「魔法使い、魔族ダオ!!パールの遺産である魔導人形を私欲に用いようとした疑いで拘束する!!」
シルバー王国第二将のアカエール将軍がすぐさま命令を下し、ダオを拘束した。
「むう、むむ、む」
訓練されたシルバー王国兵は隙のない動きで、あっという間にダオを拘束した。
ダオは拘束されると同時に、口も塞がれてしまった。
魔導人形は遠くにあり、近距離にいたシルバー王国兵を倒すことはできずに拘束されてしまったのだ。
「すまん。囮のような真似をさせてしまって」
「この者がお前の後をつけているという報告を受けたので、すぐさま王国兵が動けるようにしていたのだ。魔法兵で、いつでも転移できるように待機しながらな」
アカエール将軍は、すまなさそうな顔で僕に謝った。
そしてモゴロド教授も、
「うむ。ダオが闇ギルドの連中とつながっていたことが最近分かったので、見張りを置いていたのじゃよ。なので、お主の後をつけていることが分かったのじゃ」
「そうだったんですか・・・・」
ダオ、残念だよ。
一緒にパーティを組んで過ごしたというのに、あの日々は偽りだったのか。
訓練をしたことも全部・・・・。
僕はダオに裏切られていたことにようやく実感が湧き、ショックで俯いていた。
そんな僕を見ながら、モゴロド教授は、
「さて、落ち込んでいる場合ではないぞ。この魔導人形を止めなくてはいけない。だが、わしの見たところ、まだ起動が始まったばかり。今なら止められるだろう」
そう言って、コンソールパネルの方へ向かう。
アカエール将軍もホッとした表情で、
「それなら安心だな。あとはあんたに任せるよ」
そう言って、魔法兵に転移魔法の準備を指示する。
僕たちも一緒に、シルバー王国に帰ることになった。
モゴロド教授は、
「後はわしに任せておくがいい」
そう言って、拘束されているダオの身体に手を置き、魔力を通す。
コンソールパネルにカタカタと打ち込んでいると、魔導人形はその動きを止めた。
「すごい・・・・」
「ふふ、いやいや大したことではない。ダオの魔力と同期して、コンソールパネルにダオ本人と錯覚させて中止の命令をしただけじゃよ」
「ふう、では後のことは任せた。われわれはいったんシルバー王国に戻る」
そう言って、僕たちを連れて、アカエール将軍は転移魔法でシルバー王国へ戻った。
後に残されたのは、モゴロド教授と大量の魔導人形だけであった。
そして、一連の出来事をシェラが冷めた目で見ていたことを、僕は知らなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「今回のことは内密にしてほしい」
僕はアカエール将軍からそう頼まれた。
魔導人形のことだ。
大量の魔導人形が発見された。
それらは強力な兵器であり、使い方を間違えると大戦争が起きてしまうほどの代物だ。
もちろん僕に扱えるわけもないし、シルバー王国に報告するつもりでもいた僕は、もちろんと答えた。
「あの兵器の扱いは、ジングート将軍らと協議していくことになると思うが、プラチナ帝国、神聖ゴールド聖教国らとの共同管理になると思う」
アカエール将軍は僕にそう告げた。
だけど、もう僕は興味がない。
もともと、夢で見て興味を持っただけなのだ。
それよりも僕は別の関心があり、アカエール将軍に聞いてみた。
「あの、それより将軍。聞きたいことがあるのですが、モゴロド教授と一緒に来ましたが、モゴロド教授とアカエール将軍は仲が良いのですか?」
モゴロド教授がアカエール将軍や王国兵と一緒に来たことの方が、僕には不思議だった。
アカエール将軍は、丁寧に説明してくれた。
モゴロド教授は、本来、教授という肩書ではなく、軍部に所属していた軍師なのだ。
むしろ、歴史研究の教授こそ趣味のようなもので、本来はシルバー王国軍、元第三将、兼シルバー王国軍軍師という肩書を持った人物だという。
「モゴロドどのは、俺が軍に入ったころから軍に所属していたんだ。おそらくシルバー王国軍のなかでも、最も古株だと思うぞ」




