第3部 おまけ それぞれのその後
※おまけの話は、シリーズに関する話です。読まなくても、本編は楽しめます。過去作「僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2」につながる内容なので、興味のある方だけお読みください。
ゴールド王国のその後。
六武威はゴールド王国に仕えるようになり、黄金の六武威と称えられるようになった。
それと同時に、大陸中の各種族、龍族、魔族、人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族の多くが、ゴールド王国内の領域に移住し、住むようになっていった。
聖教会の教皇が認めたことが理由である。
教皇が認めた国王の治める国は、住むのに安全だという証でもあったのだ。
ある者は、都市で暮らすようになった。
またある者は、功績を立て、爵位を得て貴族に陞爵した。
特に希少な種族である龍族やエルフ族の多くは、領域内で種族だけで暮らす里を作り、そこに移り住んだという。
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魔族のパールティアのその後。
魔族であり、前王国の正統な継承者ともいえるパールティアは、のちに魔王として君臨するカーマインを生んだ。
しかし、その出生は複雑な事情で彩られていた。
カーマインは、元王族のパールティアと、聖教会の教皇との間に生まれた子だったのだ。
聖教会の教皇は、龍族の長でもある。
いつの間にか二人は接点を持ち、好意を抱き合い、そして子供が生まれるまでの仲になっていたのである。
ところが、胎内にいるカーマインの魔力はとても強く、その影響で身体を壊したパールティアは、なんとか出産を果たしたものの、すぐに死んでしまったのである。
龍族の力は、それほどまでに強い。
死の直前、パールティアはメイズを呼んだ。
「私は許されないことをしてしまった。どうか、こんな私を許してほしい」
「神にも等しいとされる聖教会の教皇様のお子を、この身に宿してしまったの・・・・」
「でも、教皇様を愛していた。何もかも捨てていいと思えるぐらいに」
そう涙ながらにメイズに訴え、そして無念のうちに死んでしまった。
メイズはパールティアの悲しみを受け継ぎ、カーマインを育てることを決意する。
メイズはカーマインの親代わりであった。
そのカーマインは、幼い頃から自身の強すぎる魔力で崩壊しかけていた。
そこでメイズは、腕輪型魔神具をカーマインに取り付けることで、身体の崩壊を遅らせることに成功した。
メイズは、アネモネが魔力の暴走で身体を崩壊しかけていたときに使用したという腕輪型魔神具を、パールティアから譲り受けていたのである。
のちにカーマインが成長し、一人前の戦士に成長するのを見届けると、メイズは武威に加入した。
メイズの後ろ姿を見て育ったカーマインは、自身を鍛え上げ、十分強くなったと自覚した後で、メイズの後を追い武威に入った。
カーマインは魔族と龍族のハーフなので、その身には膨大な魔力を有し、さらには龍族にしか使えないという「魔法剣」をも操った。
すぐに実力で六武威筆頭となった。
元々筆頭の座にはメイズが座っていたが、メイズはその座をカーマインに譲り、そして長くカーマインを補佐したのである。
また、カーマインはパールティアが保有していたという邪神の封印をも受け継いでいた。
のちに盟友のアリザリンに、その封印術と封印された邪神を委ねるのである。
その封印をアリザリンは解く。
自らの理想、そしてカーマインの理想に殉じるために。
詳しくは、『僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2』の第3部に続く。
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ある日、カーマインの嘆く言葉が屋敷に響き渡る。
「なぜだ!!?なぜ、魔族だけの国家を造ってはいけないのだ。われわれ魔族は他の種族より力が強い。この力を正しい方向へ導けば、より魔族は栄えるのだぞ!?」
カーマインの吠えるような声を、メイズはただ黙って聞いている。
そして少し時間を置いて、優しく語りかけた。
「カーマイン。気持ちは分かるが、国造りにわれら魔族は三度も失敗してきたのだ。今のゴールド王国の治世は安定している。われら魔族もこの治世に協力するべきだ」
「・・・・あなたがそこまで言うなら、考えを改める」
カーマインとメイズのこのやりとりは、その後数十回にわたって繰り返されることになる。
50年後。
カーマインはメイズの住む屋敷に押しかけた。
その顔色は土色のように悪い。
なのに目だけがギョロっとしている。
何日も悩み続けてきた様子だ。
メイズはその様子を見て、カーマインがこれから言うことをすべて受け入れようと覚悟した。
「メイズ。何も言わず、どうか私についてきてくれ」
「実は、私は実の父に会ってきたのだ。そして私の願いを、思いを、悲しみをすべて話したのだ。だが、すべて拒絶された」
「もう私には、魔族の国を造る望みしか残っていないのだ」
気づくと、カーマインの目からは涙が流れていた。
病が身体をむしばみ、全身に激痛が走っても決して泣かなかったあの子が。
それも人前で。
「・・・・分かった。もう何も言うまい。われのすべてをお主に預けよう」
メイズはそれだけ言って、静かに腰を低くし、カーマインに頭を下げた。
その後、魔族のカーマインはメイズを引き連れ、六武威を離脱した。
離脱と同時に、聖教会はカーマインを魔王と宣言した。
ゴールド王国は突然の事態に混乱したが、穴のできた六武威を埋めるため、龍族のナイルを入れることにした。
しかしナイルは、ある理由で表立って顔を出すことはできない。
なので、名前だけの公表にとどめることになった。
顔を出すことができず名前だけの公表でも、ないよりはあった方が良いと判断したからである。
あともう一人、六武威に見合う人物を入れる必要があった。
しかし、そのような人物は見つからなかった。
なので六武威の一席は、長く空席になった。
のち、そこにウィスタリア聖教国の騎士で、人族のクラレットが入ることになる。
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魔王カーマインがゴールド王国と袂を分かれようとする、その前夜。
魔族のアリザリンとキャナリィが夜、会った。
この二人は実は恋人同士だったのだ。
そして突然のカーマインと聖教会の宣言にみなが動揺しているなか、アリザリンは、恋人のキャナリィを呼び出した。
魔族のキャナリィは、恋人のアリザリンが、カーマインの育ての親であるメイズに心服していることを知っている。
そしてメイズがカーマイン側に立つということも。
だから不安であった。
「やっぱり行っちゃうの?」
「ああ」
「私は?私も連れて行っ」
「おまえは六武威に残ってろ!!俺はメイズ様と一緒にカーマインの面倒を見る。いや、魔王カーマイン様、だな」
「だけど、旗色は悪い。そんなところへお前を連れて行けるかよ。でも、俺は、俺たちはカーマイン様を見捨てられない。あの方の理想は、魔族の理想の一つだ」
「だから、黙って行かせてくれ」
「アリザリン・・・・」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
アマリリスとチャコール。
チャコールとは、エルフ族の長の名前である。
現在、エルフ族の長の座についており、エルフ族をまとめている。
だが、その本当の正体は、創造神エクレアーナの使徒である。
そして、アマリリスも同様に創造神の使徒である。
言わば、アマリリスとチャコールは同僚同士といえる。
アマリリスは地上においてなすべきことを全て終えた後、エルフ族の長であるチャコールに会うために屋敷を訪れた。
使徒はそれぞれ重要な役割を担っており、お互いに出会うことは滅多にない。
そんな滅多に出会えないはずの来客の姿を見て、チャコールは目を丸くして驚いた。
「あら珍しいわね。あなたがここへ来るなんて」
アマリリスはそれに対し、
「どうも、エルフ族の長様。ご機嫌はいかがですか?」
「なあに?エルフ族の長様だなんて、他人行儀な言い方ね」
ふふ、とアマリリスは笑う。
「今日はお別れを言いに来たの」
「長く、私とあなた、それに大賢者ダスキーの三人で、この世界の監視人という役を務めてきましたが、私は今日でこの役を罷免されました」
同僚のアマリリスは突然とんでもないことを言い出し、チャコールは目を白黒させた。
「罷免の理由は、ご主人様を見つけ出せなかったから」
「そ、そんなことを言い出したら、私もダスキーもそうよ!」
アマリリスは自嘲するように、
「本当の理由はね。私が勝手に、水晶が認めていない人物をご主人様とみなして動いたから」
「だから以前に務めていた、メイド育成の教官長に降格されたわ」
「場所も、この次元の世界ではない、もっと小さな異空間よ」
「でもいいの。いつか来るご主人様のために働けるんだもの」
「その世界にも50人ほどメイド候補がいるから、教官としてやり甲斐があるし。退屈はしないわ」
「すでに大賢者の役をしているダスキーにも、お別れのあいさつは済ませてきたわ。私はこれから異動先へ向かうわね」
「いままでありがとう。何もできないけど、あなたの活躍を祈っているわ」
そう言って、アマリリスはペコリと頭を下げた。
チャコールは呆れたように、
「あなた、それ、たしか三回目よね。水晶の魔道具が認めていない人をご主人様としてみなすの。ほんと懲りないわね」
そういうチャコールに対し、アマリリスは薄く微笑むだけだった。
扉から出ようとするアマリリスに、チャコールは言った。
「私も、いまのエルフ族の長という役は罷免になると思うわ」
「今回、あまりにも魔族と人族は好き勝手なことをした。だから、聖教会の教皇以外にも創造神様のお言葉を告げる役目として、託宣の巫女をしてくれないかと、創造神エクレアーナ様から打診を受けているの」
「本当はあなたに任されるはずだったのよ・・・・」
アマリリスは背中を向けながら、
「ごめんなさい。私の身勝手な行為で迷惑をかけて。・・・・もう、行くわね。また会いましょう」
「・・・・ご主人様のために」
「・・・・ご主人様のために」
第3部 おまけ 終わり




