第7話
エルフ族の里は、龍族の隠れ里同様、見つかりにくい場所にある。
エルフ族の中には、里から出て他の種族と暮らしている者もいるが、それは少数だ。
やはり、エルフ族の里にいるエルフ族の長と話をし、協力を取り付けないといけないだろう。
エルフ族も龍族同様、とても古い種族だ。
聖教会に伝わっている神話では、最初に龍族が創造され、その次にエルフ族が創造されたと言われている。
それでなくても、エルフ族には気位の高い者が多い。
容易に僕の話を聞いてくれるかは分からない。
一応、僕はかつての魔導王国パールの王族という肩書を持っている。
エルフ族と魔導王国パールは友好関係にあったので、この肩書に免じて話を聞いてくれればいいが、どうだろう。
エルフ族の里の近くまでやってきた。
目の前には、鬱蒼とした広大な森が広がっている。
この森のどこかに、エルフ族の隠れ里があるのだ。
ここからは、エルフ族の魔力の波長をたどって、エルフ族の隠れ里を探そうと考えている。
果たして見つけるのにどれぐらいかかるのか、見当もつかない。
だけど、やるしかない。
半年後。
僕はいま、ようやくエルフ族の里の入り口までやってくることができた。
感無量だ。
この半年、まったく手掛かりがなく、何度諦めようと思ったことか。
諦めて別の種族のところへ行こうと思った時、ようやくわずかなエルフ族の魔力の波長をとらえることができたのだ。
そこからでもさらに数か月かかったが、やっとたどり着くことができた。
しかし、これで終わりではない。
むしろ、ここからが本番だ。
なんとかエルフ族の長に会い、協力してくれるよう説得しないといけないのだから。
さあ、気合を入れ直して頑張るぞ。
・・・・・・・・
・・・・
結論から言うと、エルフ族の協力もなんとか取り付けることができた。
エルフ族の若き戦士ミモザは、パールティアのもとへ行くことを渋っていた。
だが、僕が頭を下げることで、なんとか承諾してくれた。
はあ、良かった。
僕の元王子という肩書も、少しは役に立ったのかな。
ともあれ、一番難しいと思われていたエルフ族の協力を得られたのは僥倖だ。
この後、エルフ族の長から、直々にささやかな宴会をするので来てほしいと言われている。
僕は少し休んでから、次の種族の説得へ向かうつもりだった。
だが、エルフ族の長からそこまで言われては、断るわけにはいかない。
エルフ族の食事の味を想像しながら、エルフ族の長のもとへ向かった。
宴会が始まり、それなりに宴もたけなわになった頃、お開きとなった。
部屋へ戻ろうと席を立とうとした時、エルフ族の長が僕の顔を見ながら、意味深な表情で話しかけてきた。
「ふふ、本当はね。あなたの魂をじっくり見たくて、宴会に呼んだんです。あなたの魂は少し興味深い状態をしているので、近くで見たくって」
「私、エルフ族の長老は、この世のあらゆる種族の魂を見ることができるのですよ。あなたはワインレッド。ふふ、ああ、レッドに改名されたんですね」
「元魔導王国パールの王子。そしていまは、パールティアの協力者として活動している」
「やっぱり、思った通り!あなたはとても面白い魂をしているわ。ふふふ・・・・」
「あらあ?あなた、この世界の魂ではないのね・・・・不思議。そんな魂が存在するなんて」
「え?」
「あなたの魂は、創造神エクレアーナ様が創った魂ではないわね」
しばらく、僕は呆然としてしまった。
僕は、創造神様に創られていない?
まるで、この世界にいてはいけないみたいじゃないか。
「まあ、たまに別の次元の魂が迷い込むこともあるから、そこはあまり気にしなくていいわ」
気を失いそうになるぐらいショックを受けている僕をよそに、エルフ族の長は話を続ける。
「それに・・・・あなたの魂は、魔力が暴走状態になっているわ。とても珍しい。こんな状態でも身体は崩壊しないの?」
「ふうむ。ふうむ。だからか。ワインレッドであるあなたは、いえ、レッドでしたね。あなたは昔から、魔力がないと思われていたのね」
「そのせいで、周囲から冷遇されてきたし」
僕はコクリと首を縦に振る。
「どうやら、その原因は魂の暴走にあるみたいです」
「魂が暴走を抑え込むのに、自動で魔力が使われています。だから体内に魔力が溜まらず、魔法が使えなかったようです」
がーん。
僕の魂が原因不明の暴走状態で、そのために魔法が使えなかったとは。
でも、魔力がない原因を教えてもらえて、なんだか気持ちがすっきりした気がする。
昔は辛かった。
理由も分からず、自分だけが魔法を使えず、蔑まれてきたから。
だけど今は、魔法が使えないからと言って、蔑まれることは少なくなった。
そしてこれからは、魔法が使える、使えないで差別されない社会にしようと努力している。
それでも、僕に魔力がない原因が分かったことは、気持ちのつかえが取れたような気分だ。
「原因を教えていただきありがとうございます。暴走?とか、創造神様に造られていない?とかは、よく分かりませんが、魔力がない原因だけでも分かって嬉しいです」
そう、とエルフ族の長は複雑な表情でうなずく。
ついでに、僕はエルフ族の長に質問してみた。
「無理を承知で聞くのですが、その魂の暴走とやらをなくすことはできないでしょうか?わずかでも希望があればと思いまして」
僕は、ダメで元々と思い、聞いてみた。
長はうーんと考え込んでいたが、ためらいがちに口を開く。
「そうねえ、難しいと思うんだけど・・・・」
「今から言う方法は、とても現実的じゃないけど、一応伝えるわ。あなたの魂の暴走状態の原因は分からないけど、魂の力が使用されている。これは間違いないわ」
「ということは、何らかの方法で、その魂の力を削り取ればいい。だけど、この世界で魂の力だけを削り取る方法はない。ないのだけど」
「魂の力と一緒に、魂の持つ生命力まで削り取る方法はある。そんなこと普通は目的にしないでしょうけどね。その方法を使えば、うまくいけば魂の暴走が落ち着くかもしれない」
僕は目を輝かせた。
「それは何ですか?!」
「それはね、龍族に伝わるという『魔法剣』という技よ。『魔法剣』は、龍族の持つ強靭な魔力と身体があって、ようやく使えるもの」
「それを龍族以外の種族が使うと、そのあまりの強さに、身体だけでなく、身体の中に宿る霊的な細胞や魂までも傷つけてしまうのよ」
「だけど、そのおかげで魂の力が弱くなり、暴走が収まる可能性がある。でも、とても危険よ。一応思いついたから話をしたけど、絶対にお勧めしないわ」
確かに、その方法はとても危険だ。
僕は「魔法剣」のことは知っている。
龍族の里にいた時に知ったが、とても会得しようとは思わなかった。
それほどの代物だ。
やはり僕は、魔法を使えないままなのか。
翌日、僕はエルフ族の里を後にし、次の目的地へ向かった。
その後ろ姿を見送るエルフ族の長。
本来なら、魂の暴走の影響で身体が崩壊しているはずなのに、崩壊していない。
どうやら過去世で、身体の崩壊を食い止めるだけの魔力制御を身につけたのが原因のようだけど・・・・。
それに、あの時は言えなかったけど、暴走以外にも別の魔法もかかっていた。
それに、ほんのわずかだけど、ありえないけど、ご主人様の気配が感じられた。
長は、手に持っている水晶の魔道具を見る。
水晶は何の反応も示さない。
「そうよね。反応はないのだから、ご主人様ではないはずなんだけどね・・・・」
作者に代わって、エクレアからの一言メモ◇◇◇◇◇◇◇◇◇
実はエルフ族の長は、わたくし創造神の使徒でございます。
本名はチャコールと言いまして、その後、エルフ族の長の座を退き、託宣の巫女の役につきます。
そして、魂の暴走と別の魔法については、シリーズ本編第2作目『僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です2』ですでに明かされております。
なんと、ご自分に「ご主人様ではない」という認識阻害の魔法をかけていたのでございます。
そのため水晶の魔道具が反応せず、長い間、わたくしどもはご主人様を見失っていたのです・・・・。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇




