↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/70

第6話

僕がまだ魔導王国パールの王城内で過ごしていた時、魔物の大群が発生したことがある。


その討伐を命じられた時に共に戦った将軍のもとへ、向かおうと思う。


あのとき、僕が成し遂げた功績を、双子の兄パールレッドが横取りした。


そのことに将軍は大変憤り、それ以来、僕の味方をしてくれるようになったのだ。


きっと僕が出向いて説得すれば、将軍もパールティアの国造りに協力してくれるに違いない。


かつて将軍の護衛を務めていた者に、将軍のその後を聞いた。


将軍はあのあと、すぐに領地へ戻っていたらしい。


将軍は貴族で、確か伯爵位を持っていたと思う。


領地は少し遠い。


仕方なく僕は、馬車で行けるところまで行き、残りは徒歩で向かうことにした。


一週間後。


将軍の領地は、山を二つ越えた向こうにあった。


そこまで遠いとは知らず、山を越えるのに思わぬ時間を食ってしまった。


将軍の領地に着くと、領民は歓迎をしてくれた。


これも、領主である将軍が穏やかな統治をしている証拠だろう。


僕は、この地を治める領主の屋敷への案内を願った。


すると領民の一人である屈強な青年が、快く案内してくれた。


屋敷に着き、名を名乗って当主に会いたい旨を告げると、門番はすぐに取り次いでくれた。


将軍は、少し見ぬ間にとても老けていた。


王国が崩壊し、国王も死んだのだ。


見限ったとはいえ、かつての主君でもある。


きっと、言葉にできないほどショックを受けたのだろう。


将軍は僕を見て、大層懐かしみ、歓迎してくれた。


すぐに歓迎の用意をすると言い、それまでは客間でゆっくりしてほしいと言われた。


僕は、余裕があればすぐにでも話がしたかった。


だが、急ぐこともない。


むしろ、将軍のご家族の前で話をした方がいいかもしれない。


そう考え、夕食に呼ばれるのを待っていた。


夕食の場では、将軍、いや、伯爵当主は以前のような軍服ではなく、貴族らしい服装をしていた。


隣には、妙齢の令嬢が一人だけいる。


娘だろうか?


あと、奥方が見当たらないけど。


「すみませんのう。ワインレッド殿下。このようなもてなししかできなくて。それに妻は先日、病で身罷りましてな。今は一人娘のキャナリィと二人だけなんですわい」


そう寂しそうに言う。


「そうでしたか。このようなもてなしと仰いますが、とんでもない。私にとって身に余る歓迎ぶりで、恐縮の限りです。あと、私のことは敬称なしでお願いします」


そして、隣に座っている令嬢が僕に挨拶をする。


「キャナリィでございます。高名なワインレッド様のことは、父からよく聞いております。こうしてお会いできたこと、嬉しく思います」


娘だという目の前の令嬢は、貴族らしい所作で挨拶をする。


しかし、なんだろう。


この令嬢。


一分の隙もない令嬢らしい所作をするが、どこか違和感がある。


何か無理をしているような。


一体、何だろう。


「・・・・ふぅ。よく我慢した」


ぼそっと、将軍が言う。


??


何のことだろう。


そして食事を始めた。


食事が終わる頃になって、ようやく僕は将軍に、パールティアの国造りへの助力について話をした。


将軍は静かに話を聞いており、時折うなずく動作を見せた。


「話は分かりました。そういうことでしたら、もちろん喜んで、と言いたいところですが」


「わしは年を取り過ぎました。なので、その役は娘のキャナリィに任せようと思います」


将軍も当然、魔族だ。


魔族はそもそも寿命が長い。


目の前の将軍もそのはずだが、よく見ると顔にしわが増えており、身体に宿る魔力も少なくなっている。


相当、無理を重ねてきたのだろう。


将軍は続けた。


「心配には及びません。こう見えて娘は、魔力はわしの全盛期を上回り、武芸も全般に教え込みました。実力については、何の問題もありません」


「ええ、お父様。やっと修行をしてきた成果を試す時が来ましたわ。わたし、ワインレッド様と共に参りますわ。ふっふっふ。やっとこの力を解放できますわ」


そして、キャナリィは胸を張った。


「筋肉は正義!!!」


目の前にいる可憐な容姿をした貴族のお嬢様が突然、荒くれた冒険者みたいなことを言い出した。


先ほどまで張り付けていた淑女の微笑みなど、欠片もない。


獲物をどういたぶろうかという、肉食獣を思わせる笑みを浮かべた魔族がいた。


先ほど将軍が言った我慢というのは、こういうことだったのか。


食堂の壁で控えている家令も、あちゃー、という顔をしている。


将軍は残念そうな声で言った。


「わしの娘は、容姿は妻に似たが、中身はわしに似てしまい、脳みそまで筋肉でできておってのう」


それを聞いて怒るどころか、どやぁとした顔をこちらへ向けているキャナリィ。


まあ、なんにせよ、心強い味方を手に入れたのだと思う。


これで魔族からは、現在代表者として動いているメイズとパールティア。


そしてフラグラント。


さらに、目の前の令嬢キャナリィ。


いざとなれば、僕も盾として参加すればよい。


龍族からは、マホガニーがいる。


本来、龍族は歴史上、特定の国や種族に肩入れすることはほとんどなかった。


かつては創造神に代わって国を統治し、人族らを指導していたこともある、とても由緒ある種族だ。


それもあってか、国同士の権力争いに参加することはない。


だけど幸いにも、僕とマホガニーは親子のように過ごしてきた仲だ。


それでなくても、マホガニーはパールティアの要請に従い、僕を連れ戻しに来たのだ。


きっとこの先も、パールティアの国造りに協力してくれるのだろう。


他の種族には、エルフ族、ドワーフ族、獣人族がいる。


ドワーフ族と獣人族は穏やかで、魔導王国パール時代からのつながりもある。


きっと、うまくいくだろう。


問題はエルフ族だ。


数年前の大災害では、エルフ族の戦士ミモザが参加してくれたと聞いている。


だが、パールティアの国造りに参加してくれるかどうかは不明だ。


エルフ族の協力と、エルフ族の戦士ミモザの協力。


それがもっとも困難だと、僕は考えていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。