第16話
この世界に初めてイオニアが降臨したのは、およそ一万年前。
魔族を創造し、魔族から崇められ、「魔性理神」という名でイオニアを祀る魔法教会が設立され、信仰を受けてきた時代がある。
あのときも、「創造神がつくりし七つの邪悪な災厄」が出現したことがきっかけであった。
そして今も、そうである。
イオニアは、地上にいるアマリリス目掛けて、この世界に降りてきた。
そのアマリリスは、イオニアから発する神聖な魔力が強すぎて直視できず、ひざまずいていた。
その周囲には、討伐隊のメンバーであるメイズ、パールティア、ミモザらもいた。
あまりの神々しさと、その膨大で神聖な魔力に身体が自然と反応し、頭を地面につけていた。
イオニアはそんな彼らに目もくれず、アマリリスに言う。
「あなたの求めに応じ、やってきました。目の前で暴れている邪神が原因でしょうか?」
「はい。恐れ多くも直答させていただきます。魔族の王が邪神の魔力を狙い、その魔力を吸い上げた結果、邪神が蘇ってしまったのでございます」
アマリリスの返答を聞いて、イオニアはしばらく邪神の方を見ている。
そして、静かに言った。
「まあいいでしょう。たしかに邪神は、あなた方の手に余る存在。私が再度封印します」
そう言って、イオニアは右手をかざす。
ピギャアアアアアアア。
邪神の叫び声とともに、邪神は小さな光の球になってしまった。
イオニアは周囲を見渡し、倒れているパールティアに目をつけた。
「邪神はこれで封印されました。が、この封印を、この中で一番力の強いあなたに預けましょう。あなたなら、この強い力を有意義に使ってくれると信じています」
こうして、魔導王国パールは崩壊した。
きっかけは、パール国王らが身の丈を超えた力を求め、邪神を呼び覚ましてしまったためといえよう。
王太子パールレッドも行方知れずとなり、王族で生き残ったのは、双子の弟であるワインレッドのみとなった。
その頃のワインレッドは龍族の隠れ里にいたため、被害を受けずに済んだのだ。
命が助かったワインレッドは、遠い地で、マホガニーから事の顛末を聞いた。
しかしワインレッドは、何の反応も示さなかったという。
すでに王国には見切りをつけており、ワインレッドは自分の新しい道を歩き出していたからである。
・・・・。
・・・・。
ここで僕は目が覚めた。
僕は、宿屋のベッドで寝ていたようだ。
僕の目が覚めたことに気づいたエクレアが、すぐに声をかけてくれる。
「あ、ご主人様。目が覚めましたか?ご気分はいかがですか?いまは夜中です。ですが、お食事も召し上がっていませんので、お腹が空いたかもしれませんね」
そうか。
もう夜中か。
僕が気を失ったのは昼だったはず。
気分は悪くないし、お腹も空いていない。
それよりも、夢には多くの知っている人の名前が出てきたような気がする。
だけど、時間が経つほどにどんどん記憶が消えていく。
それでも。
龍族のマホガニー。
そして、イオニア、アマリリス。
この名前は、しっかり覚えている。
あの話は、本当のことなんだろうか。
今ではうっすらとして、ぼんやりした記憶になってしまった。
けれど、魔導王国パールがあの災害で滅んでしまったことは理解できる。
その後、どうなってしまったんだろう。
そもそも、ただの夢で、本当のことじゃないかもしれないけど。
それでも、僕は妙に続きが気になった。
もし、本当のことだとしたら。
それは史実だ。
とても気になる。
モゴロド教授の手伝いをすれば、魔導王国パールのその後が分かるんだろうか。
でも、できたらもっと早く結論が知りたい。
僕のわがままだと分かっているけど。
気づくと、僕はエクレアに頼み込んでいた。
「エクレア、頼みがあるんだけど。僕の見た夢の続きを知ることってできないだろうか?」
第2部 終わり




