第9話
再び、夢の中。
いや、夢のようでいて、夢ではないのかもしれない。
だけど、僕はまた、あの続きを見せられるということを確信している。
あのとき、パロットがかけたのは、記憶をよみがえらせる魔法だ。
今まで僕が見てきた夢は、僕の古い記憶。
魂に刻まれている記憶。
前世。
過去世の記憶かもしれない。
その記憶を、夢という形で見せられている。
なんとなく、そんな気がした。
聖教会の教えに、人は死んでも幽界へ行き、修行をして再びこの地上に降りてくるというものがある。
以前の生のことを、前世という。
だから、今まで見た夢は、僕の前世かもしれない。
だとすると、ホワイトという人物も僕の前世。
そしてワインレッドも、僕の前世。
いや、前々世か。
一体、僕はどれだけの過去世を生まれ変わってきたんだろう。
ん。
どんどん視界がはっきりしてきた。
アマリリスとの会話の続きが見られるのかな。
いや、違うみたいだ。
ここは、どこだろう?
・・・・・・・・。
・・・・。
どうやら、お城の中のようだ。
僕はワインレッド。
うん、間違いない。
そしてここは、魔導王国パールの国王が住む王城だ。
でも、おかしいな。
僕はお城を飛び出して、テェシと出会い、リリー先生と魔道具の研究をしようとしていたはず。
記憶を探ってみると、どうやら城を飛び出す前の時間に戻ったみたいだ。
まだ、テェシやロゼと出会っていない頃だ。
え~。
嫌だな。
お城にいた時は、嫌な思い出しかない。
きっと、僕の嫌がることばかりだったんじゃないかな。
たしか、この城には僕の双子の兄がいる。
兄は魔力が豊富で、後継者として育てられているのだ。
そして、父である国王陛下も、母である王妃も、周囲の使用人も、僕を蔑み、兄を褒めたたえていた。
そう。
僕は魔力を持たない落ちこぼれだったのだ。
それでも、みんなに褒めてもらいたくて、勉強や剣術を頑張った。
少しでも国の役に立てば、みんなに認めてもらえるかもしれないと思って。
だけど、そんなことはなかった。
「いくら頑張ったところで、クズはクズだな。おまえのような弟を持って迷惑なんだよ!!」
そう言って、憎々しい表情を向ける双子の兄。
「なぜ、おまえのような欠陥品が生まれてきたのか、理解に苦しむ」
父親である国王は、憎悪の表情を隠さない。
母親である王妃は、冷めた目で見るだけだ。
そして小さい頃からいた婚約者である令嬢も、僕を蔑んだ。
「なぜ、あなたのような落ちこぼれと婚約しないといけないの?いっそ死んでくださらない。そうすれば、私は自由になれるのに」
僕の死を願う婚約者の言葉に、心が折れそうになった。
それでも歯を食いしばった僕は軍に入隊して、心身を鍛えてもらうことにした。
そこでは、戦略や戦術を学ぶことができた。
そんなあるとき。
国の中で、大量の魔物が発生したのだ。
大量の魔物発生は、災害と言ってもいい。
国内に数ある瘴気の濃い地域の一つから、大量の魔物が生み出されたのだ。
街を守る結界の魔道具は作動していた。
だが、あまりの数の多さに魔道具は壊れ、魔物は周辺を暴れまわった。
その魔物の群れを討伐するため、王城で討伐軍が編成される。
そして王族の代表として、王太子である兄ではなく、僕が選ばれた。
国王は、
「国のために役に立ってこい」
と、冷めた口調で一言述べただけだった。
まるで、死んでこいと言われたように感じた。
しかし、僕は王族のためではなく、魔導王国パールに住む国民のため、これ以上被害を広げないために、前線へ出向いた。
そして僕は討伐軍を指揮し、魔物の大群を討伐することに成功した。
その甲斐あってか、僕が討伐した魔物の大群によって被害を受けていた町と、その領主貴族は僕を支持した。
しかし、僕の人気が上がるのを嫌がったのか、王太子である兄は、この魔物討伐は自分の手柄だと発表したのだ。
実際に僕に助けられた領主やその領民たちは信じなかった。
だが、現場を見ていない多くの国民たちは、兄である王太子の発表を信じ、兄の評判はさらに上がった。
これには、僕と行動をともにした討伐軍の将軍が憤慨した。
「いいのですか!このような卑劣な真似をされて?!国王陛下と王太子殿下のなされようは、目に余るものがありますぞ!!」
そう言ってくれたが、僕はそれを制する。
「いいんだよ、それで。僕が不満を持ち、将軍が動けば内乱になる。内乱が起きれば、必ず平民たちが被害を受ける」
「ワインレッド王子・・・・」
将軍は、拳を握りしめて悔しさを我慢した。
王城へ戻った僕は、以前にも増して居場所をなくしたようだ。
「無能のくせに、軍を率いていたずらに現場を乱したそうだ。結局、王太子殿下が駆けつけ、魔物の大群を討伐したそうですわよ」
「魔力を持たない上に無能で、足を引っ張るだなんて、生きている意味あります?」
使用人ですら、このような悪口を僕の目の前で言うようになった。
僕はそれを聞いても、
「ああそうか。そういう筋書きになっているんだな」
としか思わなかった。
王城は、閉ざされた空間だ。
ここでは、軍の意向も、救われた領主の意見も通らない。
そんな周囲の悪意から身を守るためだろうか。
この頃から、僕は魔道具に興味を持ち始めた。
王城の魔道具を担当する魔導士を訪ね、魔道具の設計や研究に打ち込み始めたのだ。
魔道具なら、僕を裏切らないと思ったからかもしれない。




