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第7話

少し嘘をついた。


さっきは、国王の考えについていけなくて、とかっこいいことを言ったけど、本当はそうじゃない。


僕はできそこないで、家族に見捨てられたから城を飛び出した。


僕は王族として生まれた。


だけど、魔族という人族より魔力を豊富に持つ種族のはずなのに、僕はまったく魔力を持たずに生まれた。


双子の兄は、莫大な魔力を持つ。


腹の中で兄に魔力を奪われたのだろうと、昔から揶揄された。


婚約者もいたが、僕を蔑み、嫌っていた。


挙げ句の果てには、その婚約者も兄に取られた。


父である国王も、母である王妃も、そのことについて何も言わなかった。


使用人たちも、僕のことを早くいなくなればいいのにと陰口を叩くぐらいだ。


僕は心が壊れる前に、城を飛び出したのだ。


城を飛び出して、僕は初めて魔導王国パールという国のいびつさを目の当たりにした。


平民は税を搾取され、貴族は贅沢をする。


魔力を持つか持たないかという差が、両者のあいだで明確な主従の関係を生み出していると言っていい。


僕たちは、少しでも虐げられている平民を守るため、反王国組織に所属し、ある活動を行っている。


ある活動・・・・。


って、なんだったっけ?


「ねえ」


僕は、とても大事だったその活動をど忘れしてしまったようなのだ。


親友のテェシに聞く。


「ねえ。僕たちって今、何をしてたっけ?」


「はあ!?おまえ、どうしたんだよ。今日は本当におかしいな!?今日はもう、魔道具の研究は中止にするか」


テェシはそう言って、近くにいる人物へ声をかけた。


「リリー先生。今日はもう魔道具の研究はやめておきます。なんかワインレッドの奴の調子がおかしいんで」


リリー先生。


僕は、そう呼ばれた人物の方に目を向けた。


深いローブを被っており、ぱっと見ただけでは男性か女性か分からない。


しかも、よく目を凝らさないと、まるで存在していないかのように見える。


まるで認識阻害魔法をかけているみたいに。


あれ?


この感じ、どこかで・・・・。


リリー先生と呼ばれた人物は、まるで鈴の音が鳴るような綺麗な声で言った。


「それは大変。あなたたちは今日はお休みしなさいね。特にワインレッドさん。お体を大事にしてね」


心配そうな声で、僕に声をかけてくれる。


そうだ。


なんで忘れていたんだろう。


今日は、リリー先生による魔道具の勉強会の日だ。


僕たちは、魔力を持たない平民でも扱えるような魔道具を作ることを目指していたんじゃないか。


魔導王国パールは、その名の通り魔導に通じた国。


はるか昔に創造神のみ使いが地に降りて、魔道具の技術を伝えたと言われており、魔導王国パールはその魔道具がもっとも発展した国だ。


しかし、その魔道具も起動させるには魔力が必要である。


なので、魔道具の恩恵にあずかれるのは貴族と王族だけで、魔力を持たない平民は扱えないでいる。


しかし僕たちは、そんな人たちでも魔道具を扱えるようにするために、研究をしているのだ。


それが僕たちの組織の活動というわけだ。


魔力のない人にも扱える魔道具は、魔道具の歴史の中でも幾度となく研究されてきたが、いまだ達成されていない。


まさしく革命的なことだといえる。


僕たちは、魔道具作りの名人と呼ばれるリリー先生を迎え、一緒に研究をしてくれるよう依頼したのだ。


こんな大事なこと、なんで忘れていたんだろう。


「さあ、ワインレッド。今日はもう帰ろうぜ。ロゼも夕飯を作って待っているだろう」


親友のテェシはそう言って、研究室として使っていた建物を出て、僕に外へ出るよう促す。


僕も、言われるまま外へ出た。


太陽が西に傾いており、オレンジ色の光が目に入る。


もうすっかり夕方になっていたようだ。


視線を周囲に向けると、そこは魔導王国パールの首都。


そして、目の前には平民街が広がっていた。


平民街にも、魔道具の恩恵は少なからず存在する。


灯りを出す魔道具によって、暗くなっていく町を明るく照らしてくれるのだ。


貴族街や王城内は、夜であっても強力な魔道具の力で昼間のように明るく照らされている。


だが、平民街の弱い魔道具でも、十分に明るい。


「もう夕方なんだな。しまった。ロゼに買い物を頼まれていたんだった。すっかり忘れていた」


ロゼとは親友のテェシの妹で、家事を担当してもらっている。


特に料理が得意なようで、いつも美味しい食事を作ってくれているのだ。


実は僕は、親友のテェシの家を間借りしており、ロゼに食事も作ってもらっている。


その代わりに買い物を頼まれることが多く、今日も頼まれていた。


どうやらテェシと同じく、僕も忘れてしまっていたようだ。


だけど、この時間になると、いつも買う食料品店は閉まっている。


仕方なく帰ると、案の定、ロゼに叱られた。


「もう、お兄ちゃんったら。あれほどお願いしてたのに、買ってくるのを忘れたんでしょ!!」


「それに、ワインレッドさんまで忘れたの?!」


僕まで怒られる。


でも、なんかいいなあ。


こういう感じ。


本当の家族みたいで。


僕は城を飛び出した後、ロゼとテェシに出会い、好意で家を間借りさせてもらったんだ。


この二人の兄妹は、何の生活力もない僕を快く受け入れてくれた。


その恩に応えたくて、魔道具の研究のことをこの二人から聞いたとき、僕も協力しようと思った。


一緒に研究して分かったことは、親友のテェシは魔道具作りの天才だということだ。


そして僕も、王子時代にある程度の魔道具の教育を受けていたこともあり、テェシの研究に協力することができた。


しかし、僕たちだけでは限界がある。


そこでリリー先生を探し出し、協力を求めた。


そして、今に至るというわけだ。


翌日。


今日は魔道具の研究ではなく、お金を稼ぐために仕事あっせん所へ行った。


魔道具の研究には、お金がかかる。


そして、この魔導王国パールは魔力とお金の二つで経済が成り立っていると言っていい。


僕たちのように魔力のない者たちは、お金を稼いでいかないと生きていけない。


貴族の家に雇われている人以外は、仕事あっせん所へ行って日雇いの仕事をあっせんしてもらう。


僕と親友のテェシは二人であっせん所へ行き、仕事を見つけて稼ぐつもりだった。


ところが、その途中でリリー先生に出会った。


「こんにちは。昨日はどうでした? 体調はよくなりましたか?」


相変わらず、リリー先生は全身を隠すように深いローブを被っている。


しかし声は、鈴の音が鳴るような綺麗な声だった。


僕はリリー先生に、体調が良くなったことと、昨日十分に研究ができなかったことを詫びた。


「いいのですよ。それよりも、ちょうど良かった。今からあなた、ワインレッドさんのところへ行こうと思っていたのです」


「僕ですか?何の御用でしょう」



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