第6話
「もう身体の方はいいのかの?」
モゴロド教授は、心配そうに声をかけてきた。
「あ、はい。おかげ様で、もう身体はなんともありません。心配をかけました」
目を覚ましたのは、僕が最後のようだった。
他のメンバー、ナス、ラナン、ダオはいつも通りにしている。
モゴロド教授にも怪我はなさそうで、僕はほっとした。
本当なら、モゴロド教授はすぐにでも遺跡の発掘調査をしたいようだった。
だけど、さすがに自重し、僕の目が覚めるのを待っていたようだ。
「まあの。大事な生徒が寝込んでいるし。それに、なぜ魔導人形が急に目を覚まして襲ってきたのか、理由も分からんしの」
そう言って、モゴロド教授は考え込んでいる。
どうやらモゴロド教授によると、この魔導人形を作るぐらい魔法技術が発達していた国の名が、魔導技術共和国パールというのだそうだ。
宿屋の一階にある食堂は、利用者のために広く作られている。
そこで僕は、モゴロド教授と向かい合っていた。
僕は病み上がりではあったけど、目を輝かせてモゴロド教授の話を聞いていたのだ。
ちなみに、他のメンバーは興味がないようで、早々に部屋へ戻っていた。
翌朝。
僕とモゴロド教授は二人で、遺跡の現場へ再度向かうことにした。
あれから、他の魔導人形が目を覚まして暴れているという話は聞かない。
原因は不明だが、これ以上じっとしていても仕方がない。
そういう話になり、発掘の続きをすることにしたのだ。
現場へ到着すると、さっそく教授は目を輝かせながら、発掘の現場で僕に説明をする。
「ここじゃ。ここ!!ここから、当時の技術でできたと考えられる遺物が出てきたんじゃよ!!」
そして、近くの土を丁寧に掘っていく。
乱暴に掘ると遺物に傷をつけてしまうので、丁寧にしないといけないらしい。
さっそく、別の遺物が発掘された。
「おお。おお~~~~。なんということ。また出てきおったわい!!」
見ると、ただのコップのように見えるが、紋章がついている。
身分の高い貴族が使っていたのだろうか?
「なんと。なんと。これは共和国、いや、その前の魔導王国パールの時代の物かもしれん。これを見よ」
そう言って、モゴロド教授が懐から取り出したのは、かなり古ぼけた首飾りだった。
その首飾りにも、先ほどのコップについていたのと同じ紋章がついている。
「これと同じものが、すでにいくつか発掘されておる。そしてこの紋章は、古い文献に載っておったもので、どうやら特別な意味を持つようじゃよ」
モゴロド教授は、満足げに話をする。
僕もその話に引き込まれるように聞いていた。
少し離れた場所で、メイドのエクレアとシェラが立っている。
エクレアとシェラの二人は、愛おしそうに主人である僕を見つめていた。
「麗しきご主人様のあのように喜ぶ姿を見るのは久しぶり。ここに来たかいがありましたね。エクレア様」
「そうね。シェラ。だけども、少し不安です。今、親愛なるご主人様は、パロットの記憶を呼び覚ます魔法がかかっている状態」
「その状態で、ご主人様と縁のあるパールの遺物に触ったとき、思い出さなくてもよい記憶がよみがえるかもしれない」
そんな会話がされていることも知らず、モゴロド教授は僕に言う。
「そうじゃ。今日はわしの機嫌がいい。特別にこの首飾りを触らせてやろう」
ほれ、と首飾りを僕に渡してくれた。
僕も感動しながら、丁寧に首飾りを扱い、紋章をじっくりと見た。
すると、頭がくらくらしだした。
あれ、変だな。
同時に、身体がふらつく。
「これ!!」
モゴロド教授の声が聞こえたのを最後に、意識が途切れた。
最後に、エクレアとシェラが僕を抱きかかえた感触だけが残っている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「あれ?なんだ。僕は一体どうしたんだ?」
「ん?どうした、ワインレッド?いきなり変な声を出して」
隣にいた親友のテェシが、心配そうに僕に声をかける。
どうしたというのだろう?
なんか変な気分だ。
こういう時は深呼吸をして。
はぁーーー。
ふぅーーー。
よし。
僕の名はワインレッド。
元魔導王国パールの王子。
・・・・だった。
でも、今は違う。
父親である国王の考えにどうしても賛同できなくて城を飛び出し、反王国組織に所属しているのだ。
魔導王国パールは、魔力を豊富に持つ貴族が、魔力を持たない平民を支配している。
中には、平民より下の身分も存在しており、その者たちは奴隷として働かされている。
犯罪奴隷や逃亡奴隷、借金返済のための借金奴隷など、理由はさまざまだ。
そして僕たち王族は魔族という種族で、人族よりも根本的に優れた種族と言われている。
魔族は魔力を豊富に持ち、肉体も人族よりはるかに頑丈で、身体能力も高い。
しかし、見かけは人族とほぼ変わらない。
違うのは、内に秘める魔力が人族よりはるかに多いことだ。
かつて世界を支配していた龍族に迫るとまで言われるほどに。
「ごめん。何でもないよ」
僕は隣にいる親友のテェシに返した。
テェシは人族だ。
だけど、そんなことは関係ない。
テェシは、心配そうな目を向けてくれる。
僕にとっては、僕を心配してくれる気持ちが何よりも嬉しい。
僕の家族は、誰も僕を心配してなどくれなかったから。




