第5話
「むう、あれは文献に載っている魔導人形じゃな。いわば、魔力を動力として動く人型魔道具といったところか」
「むろん、かなりの戦闘力じゃろう」
目の前の金属人形――いや、魔導人形は目を光らせた。
まるで侵入者を撃退すると言わんばかりに、火属性の魔法を放ってくる。
かなりの威力を秘めた火球だ。
しかし、ラナンとクレオメが展開した風属性の結界により、火球はそらされ、こちらまでは届かなかった。
だが、逸れた火球は建物を焼け焦がしている。
とてつもない魔力だ。
「なんて威力だ。ぼくの魔力じゃ、もう結界はもたないよ!!」
ラナンが叫ぶ。
今度は、魔導人形が太い腕でこちらを攻撃しようとした。
そこをナスが止めに入る。
「まかせろ!!」
ナスは土属性の壁を展開し、魔導人形の丸太のように太い腕を止めた。
しかし、すぐにひびが入り、土壁は崩れてしまう。
「なんて力だ。俺の土属性魔法では受け止めきれないか」
ナスは悔しそうに言う。
今度は、魔導人形の顔部分から、とてつもない魔力が感じられた。
ダオが叫ぶ。
「危ない。高出力の魔力を帯びた光線を放出する気ですよ!!」
数秒後、ダオの言う通り、とんでもない威力を秘めた雷属性の光線が、魔導人形の顔部分から放出された。
幸い、ダオの掛け声のおかげで、なんとか避けることができた。
しかし、なんて威力なんだ。
このままでは、やられてしまう。
なんとか、魔導人形を倒さないと。
何か、威力の高い攻撃方法はないか。
僕は目を閉じて考えた。
実は、僕にはとっておきの切り札がある。
その切り札の名は、超付与魔法「ブースター」という魔法だ。
しかし、この付与魔法はリスクが非常に高く、一度使うと三日以上身体が動かなくなる。
この魔法で目の前の魔導人形を仕留めても、まだ何体出てくるか分からない。
「ブースター」を使うには、危険すぎる状況といえるのだ。
他に方法はないのか。
焦って考えていると、ふと、夢の世界を思い出した。
夢の世界の僕、ホワイトは、魔法を自分の身体に撃ち、その魔法を身体にまとって攻撃力に転嫁していたのだ。
その名はたしか・・・・。
魔法剣。
そう、魔法剣と言っていた。
理屈は理解できる。
身体に魔法をまとう。
それをダメージなく行うには、かなり高度な魔力制御の技術が必要だろう。
今の僕にできるだろうか?
いや、迷っている暇はない。
僕は意を決して叫んだ。
「ダオ、僕に雷属性魔法を撃ってくれ!!」
ちなみに雷属性は希少だ。
ダオは、その希少な雷属性を操ることができる優秀な魔法使いなのだ。
「はあ?!リーダー先輩、トチ狂ったんですか?こんな時に冗談はやめてください」
「冗談じゃない。早く僕に向かって撃ってくれ!!魔導人形の攻撃がくるぞ!!」
「え~い、どうなっても知りませんからね!!」
ダオが僕めがけて、雷属性魔法を放った。
怖い。
しかし、ダオの放った雷属性魔法の魔力を身体にまとわせないと、魔法剣は放てない。
バシィ!!
うぐぅ。
雷属性魔法が、僕に当たる。
これはだめだ。
こんなの正気じゃない。
夢の中のホワイトは、本当にこんなことをやったのか?
僕は必死で、雷属性魔法を身体の周囲に維持するよう魔力制御を行う。
しかし、無理だ。
魔導人形の方を見ると、再び強力な攻撃を仕掛けようとしていた。
僕は意識が途切れそうになりながらも、雷属性魔法をまとい、剣を振るった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい、おい。起きろ!!」
「リーダー先輩、いつまで寝てんすか?もう起きてくださいよ」
・・・・・・・・。
・・・・。
目を開けた。
僕はどうやら、気を失っていたようだ。
周りには、ナスにラナン、ダオがいて、心配そうに僕を見ている。
動いている魔導人形はいない。
やっつけたのか?
「え、寝ていたのかい、僕は?あ、え、魔導人形はどうしたの?誰かがやっつけてくれたのか?」
僕が気を失っている間に、魔導人形は動きを停止していた。
横に、大きな巨体の魔導人形が横たわっているのが目に入る。
「いや、僕たちも気を失っていた。魔導人形は、どうやら動力を失ってしまったようだよ」
ラナンは心配そうな声で言った。
魔法で動くとはいえ、数百年前にできた魔導人形だ。
きっと、僕たちの攻撃が功を奏して、動きを止めることができたのだろう。
僕の放った魔法剣は成功したのだろうか?
まずは命があったことを喜ばないといけないのだろうけど、僕は不謹慎にも、魔法剣に興味を持ち始めていた。
だが、隣にいた従者のエクレアが言う。
「ご主人様。残念ながら、ご主人様の放った魔法剣は未完成でございました。僭越ながら生命の危機と判断し、わたくしどもで魔導人形に対処させていただきました」
やはり、エクレアたちのお陰だったか。
僕の攻撃が通用しなかったことを残念に思う。
それと同時に、エクレアに感謝した。
エクレアたちには、極力手助けをしないようにお願いしていた。
しかし、これ以上は危ないという時だけ、守ってもらうようにお願いしていたのだ。
エクレアたちは、僕のお願いをしっかりと守ってくれたのだ。




