第4話
モゴロド教授が発掘に指定した場所は、神聖ゴールド聖教国の領地内であった。
期限は決まっておらず、短いと一週間、長くなると一か月はかかるだろうと言われた。
エクレアの提案により、僕の従者としてついていくメンバーは、エクレア、シェラ、クレオメに加えて、イオニアも付いてくることになった。
イオニア。
イオニアも、エクレア、シェラと並び、僕に親代わりとして仕えてくれたメイドの一人だ。
長くプラチナ帝国に住んでいたらしいので、プラチナ帝国のことに詳しく、皇族にも顔が利くらしい。
もちろん、僕にとっても信頼しているメイドと言っていい。
また、今回は発掘調査が長引く可能性もあるということで、プラチナ帝国の魔法学園に残っていたノワールとガーネットも、一時的にこちらへ合流することになった。
発掘現場が神聖ゴールド聖教国の領地内にあるため、念のため戦力を厚くしておくべきだというエクレアの判断らしい。
正直、僕としては少し大げさな気もする。
けれど、ノワールとガーネットに久しぶりに会えるのは嬉しかった。
この六人を従者として引き連れ、僕はモゴロド教授とともに、発掘調査の目的地まで向かった。
さらに今回の発掘調査には、僕のパーティであるラナンとダオ、それにナスまでがついてくることになった。
そろそろパーティとして何か実績を残さないと困ると言われて、無理やりついてきたのだ。
ダオに言わせれば、
「まあ、歴史の発掘調査なんて地味なことが実績として認められるか分かりませんけどお。でも、リーダー先輩らしくて良いんじゃないすか」
ということらしい。
あと、メイドのクレオメを臨時で、パーティの“随行補佐員”として同行してもらうことにした。
何故かというと、
「ねえ、このパーティ、記録や物資を担当する補佐員がいないね」
とラナンが発言したからだ。
冒険者パーティでは、そのような補佐員はいないのが普通だが、アカデミー高等部では、生徒の安全を考慮して必ずつけるように言われているらしい。
そこで、周囲で適当な者がメイドのクレオメしかいなくて、僕が頼み込んだ。
「ご主人様の随行補佐員・・・・。つまり、ご主人様のお世話を合法的にできる役職ですね」
と、クレオメ本人がやる気でいてくれて助かった。
実は、僕がこれだけ多くの従者を連れてきた理由は、僕だけじゃない。
ラナンにダオ、それにナスがついてきたから、その安全を守るためにもという意味があったのだ。
ちなみに、シアン・ルジッグとアイベックス・エルマール男爵は来ずに、自分たちの領地の見回りをする方を選んだ。
もう、僕のパーティにいる必要はないかもしれないな。
二人は貴族としての務めを優先し始めている。
学生という身分に甘えず、領民を守るという意識が芽生えたんだろう。
モゴロド教授の発掘調査の場所は、シルバー王国と神聖ゴールド聖教国の境界付近にある小さな町だった。
その名を、ピカクシダの町という。
ピカクシダの町は山に囲まれ、目立った産業のない小さな町のようだ。
この町は、ある子爵家の領地であり、普段はその代官が町を治めているそうだ。
「やあ、またお邪魔させてもらうよ」
「ああ、これはモゴロド教授。こちらも教授に来てもらって助かっております。ぜひ宿屋をご利用ください」
モゴロド教授と挨拶したのは、この町を治めている子爵家の代官様だ。
にこにことした、人好きのする笑顔が印象的だ。
子爵様本人よりも優秀らしく、町はこの人のおかげで落ち着いているらしい。
何の産業もないが、宿屋はそれなりにある。
モゴロド教授が一か月も二か月も滞在することで、宿代がこの領地に入ってくる。
モゴロド教授は、ピカクシダの町のお得意様といえるのだ。
「さて、今日はもう遅い。明日の朝、発掘現場に案内しよう」
「はい、教授」
そう言って、僕たちはそれぞれの部屋に別れた。
その晩、僕はまた夢を見た。
・・・・・・・・。
・・・・。
『僕を殺したやつだ。名をメイズ。魔王の側近だ』
夢の中の僕だ。
夢の中の僕は、ホワイトという。
『それでも、ラベンダーの足手まといにだけは、なりたくなかった』
『だから命を削って、魔法剣を使ったんだ』
どうやらホワイトは、魔法剣という強力な技を持っているらしい。
だが、使えば使うほど生命を消耗し、死んでしまうようだ。
・・・・・・・・。
・・・・。
朝、目が覚めた。
側にはエクレア、シェラ、そしてノワールたちが起きて、僕の方を向いている。
「おはようございます。親愛なるご主人様。朝のお目覚めはいかがでしょうか」
「ああ、いい気分だよ」
ふう。
今日はうなされなかったみたいだ。
エクレアたちに心配をかけたくないから、良かった。
モゴロド教授の発掘現場へやってきた。
辺り一面荒れ地で、何もない。
木も草も生えていなかった。
大昔、ここに文明の栄えた国があったと言われても、とても信じられない。
モゴロド教授が僕たちに言う。
「ふむ。このような場所に遺跡があるのが不思議であろう?ここは、かつて神聖ゴールド聖教国、いや、それ以前のゴールド王国よりもさらに以前の時代に、国が栄えていたらしいのじゃ」
「その名も、魔導技術共和国パールという」
ビクッと、僕は身体に震えが走るのを感じた。
なんだか知らないけど、パールという名前を聞いた途端、ぞくぞくする。
「今から1000年も昔のことじゃ」
モゴロド教授は、目を閉じながら言う。
「実は、パールという国の名前は、それ以外にもあと二つあった・・・・」
「魔導技術共和国パールのさらに200年以上前、魔導王国パールという国が栄えており、そして滅んだ・・・・」
「さらにその300年以上前には、魔族国家パール王国という国が存在していたという」
魔族国家?
魔族が国を造っていたのか。
たしかに、魔族は人族と変わらない知恵があり、体力もある。
さらには、人族より魔力がはるかに優れている。
それだけ優れているのだから、魔族だけの国を造っていてもおかしくない。
むしろ、なぜ今、魔族の国がないのだろうか?
モゴロド教授は、そんな僕の疑問を見透かすかのように言った。
「魔族は可哀そうな種族じゃ。500年前、魔族だけの国を造ろうとした魔王がいたという。しかし、それはついぞ果たせなかったそうじゃ」
従者としてついてきたノワールは、そっと目を閉じる。
その動作に気づく様子のないモゴロド教授は、感慨深そうに続けた。
「それも、創造神様の思し召しかもしれぬて・・・・」
そのとき、急に地鳴りが発生した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。
ゴゴゴゴゴゴ。
「な、なんだ!?」
ナスが叫び、周囲を警戒する。
「ぼくに任せて!!」
ラナンは、風属性の結界を張った。
僕の仲間は頼もしい。
補佐員であるメイドのクレオメも、風属性魔法で援護した。
すると突然、目の前に大きな物体が現れた。
全身が金属で覆われているが、魔力を帯びている。
地鳴りの原因は、どうやら目の前に現れた金属でできたロボットだった。




