第19話
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どうやら、いま、僕は夢を見ているようだ。
あれから、頻繁に変な夢を見るようになった。
Aランク冒険者、風神のパロットが、聖属性の記憶を戻す魔法をかけたとき。
あれからだ。
じゃあ、もしかしてこの夢は、単なる夢ではなく僕の記憶なのか?
記憶の中の僕は、ホワイトというらしい。
幼なじみで、クラレットとラベンダーという人物が出てくる。
どちらも僕に好意を持っているようだけど、どう見てもガーネットとノワールにそっくりだ。
偶然?
それとも、夢だからなのか。
クラレットは、ウィスタリア聖教国で一番の戦士らしい。
そのうえラベンダーは、なんと勇者だという。
ホワイトという人物は、途中で自爆用魔道具を使って自爆したり、かと思うとシャドウという剣士になって、パウダーという別の勇者のパーティに入ったりと、波瀾万丈な人生を送る。
最後は力尽きて死んでしまうようなんだけど、
『創造神がいるなら文句も言いたいよ』
と言っていた。
なんだろう。
このホワイトという人物から、とても悲しい感情が流れ込んでくる。
これは本当に夢なのか?
それとも、もしかして・・・・。
朝、目が覚めた。
今日は特に印象的だったので、うっすらだけど夢の内容を覚えていた。
なので、エクレアにそのことを話して、どう思うか聞いてみた。
僕が話し終えるまで静かに聞いていたエクレアは、ゆっくりと口を開く。
「ご主人様も、創造神に文句を言いたいですか?」
エクレアは、思いつめたような目で僕を見る。
なんで、そんな辛そうな目をするんだろう。
まるで、僕が創造神に文句を言いたいと言うのを、覚悟しているみたいじゃないか。
でも、そもそもそんなことを言うつもりはない。
それに、エクレアは創造神と何の関係もないでしょ。
なのにどうして、そんな。
まるで自分が責められるかのような表情をするのだろう?
あ、そうか。
分かった。
エクレアは・・・・。
創造神実在派なんだ。
だから、僕が創造神のことを悪く言うことが辛いのかもしれない。
そうだよね。
信じている神様のことを悪く言う言葉を聞くのは、嫌だよね。
そもそも創造神信仰は、この中央平原では広く信じられている。
ただ、僕はそこまで意識したことはない。
創造神がいるかいないかで、実在派、否定派という分け方もある。
けれど、だからといって神罰が下ったという話は聞かない。
僕も、創造神が実在するとかは考えたことがなかった。
だから、エクレアが心配するようなことはないよ。
むしろ。
「僕?僕はそんなことないよ。むしろお礼を言いたい。こんな素晴らしいエクレアたちに出会わせてくれたことに」
「それに、ホワイトっていうのかな?口ではああ言ってても、感謝の気持ちが感じられたな。なんとなくだけど」
エクレアは、ほっとした表情で僕の話を聞いていた。
あとでエクレアが教えてくれたことによると、生きとし生ける者はみな、死ぬと体から魂が抜けて幽界へ行くという。
そして神から修行を与えられ、またこの地上、現界へ降りてくるのだとか。
地上の生き物は、このサイクルを繰り返している。
そして、以前に降りていたときの記憶を、前世と言うらしい。
これが、創造神を祀る聖教会の教えだそうだ。
エクレアは、
「もしかしたら、ご主人様が見ている夢も、本当はご主人様の前世かもしれませんね」
と微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
今日の従者はシェラが当番であったため、エクレアとクレオメが部屋に残った。
僕が部屋を出たあと、クレオメはいつもの朝の日課として、部屋の掃除や洗濯に取りかかり始めた。
エクレアは、先ほどのご主人様の言葉を反芻し、そっと涙を流す。
「そう・・・・あのとき、ご主人様の前世であるホワイト様は、感謝をしていらしてくださったのですね・・・・」
「不甲斐ない私たちを、許してくださったのでしょうか」
創造神エクレアーナは、自身が仕えるご主人様から、文句を言いたいと言われるほど不甲斐ない自分を、ずっと許せないでいた。
ご主人様を見つけられないでいたばかりに、要らぬ苦労をかけ、生命力を削らせ、最後は死なせてしまったのだ。
自分たちが、この世界にいたにもかかわらずである。
しかし、500年目にして初めて、親愛なるご主人様から感謝と、それにお許しの言葉を頂けたように感じた。
エクレアは嬉しくて、涙を流すのだった。
第1部 終わり




