第13話
さっそく、ナスとラナンにパーティメンバーの情報を集めてもらった。
あれだけ反抗的な態度を取るのには、何か理由があるのかもしれない。
情報がなければ、有効な手は打てないからだ。
ちなみにナスはメンバーに入ってはいないが、僕のパーティメンバーのつもりでいるみたいだ。
本人が言うには、
「俺?俺は自主的にお前と行動するんだよ!!自主的に行動することは止められていないからな。はっはっは」
とのことだった。
そもそも、このパーティ制度は、生徒の自主性を重んじ、正当で健全な競争を促すためのものだという。
しかし、自由にしすぎることで弊害も起きた。
パーティを利用したいじめや不健全な競争、さらに能力のある者が自由に力を発揮できなくなったことがあり、リーダーになる者を絞ったのだそうだ。
他のパーティは、そうそうたる顔ぶれである。
全員が高位貴族の子息というパーティもあれば、騎士科のトップ、魔法科のトップ、薬師科のトップという、各科のトップが集まったパーティもあるそうだ。
そうして能力のある者同士、交流を深め、アカデミー卒業後も王国の発展に大いに貢献させることが狙いだという。
ところが、ラナンが言うには、
「まあ、それも形骸化しているよ。なんせ君のパーティ、『シルバーの栄光』寮から選ばれているけど、それを決めたのはここの寮長さ」
「ここの寮長、実はアキレア・クローバー侯爵子息がリーダーとなっているパーティのメンバーでさ。そいつに指示されて、君のメンバーは『シルバーの栄光』寮内限定にさせたんだよ」
「『シルバーの栄光』寮なら能力も低く、手柄を立てられないだろうと思ったんだろうね」
「つまり、裏では足の引っ張り合いが行われているというわけさ」
なるほど。
だから、あのとき寮長は申し訳なさそうな表情をしていたんだな。
一つ納得した。
「ただ、あのシアン・ルジッグも、ダオという生徒も、それぞれの学年では『シルバーの栄光』寮内でトップの成績を持つ。それなりに優秀だというわけ」
シアン・ルジッグは、僕の一つ下。
ダオは、さらに一つ下。
それぞれ、アカデミー初等部に属している。
あれ?
じゃあ、
「ラナンは、なぜ僕のメンバーに選ばれたの?」
「ふふ。それを聞く?まあ、これでも目立たないようにしていたもんね」
ラナンは、いたずらそうな目を向ける。
僕はなんとなく、ラナンは家の権力を使ったのではないかと思った。
考えてみると、アカデミー内のことや、シルバー王国の内情に詳しすぎる気がする。
思ったよりも、高位の貴族かもしれない。
「ああ、いいや。聞くのはやめておく。それに、アカデミーに入って最初の友人だし。僕にとってはとても心強い。それだけで十分だよ」
「え~。もっと聞いてくれてもいいのに」
ラナンはすねるような口調だったが、少し安心しているようにも見えた。
やはり、自分から言い出さない限り聞かないでおこう。
ナスが言う。
「ちなみに、俺も別のパーティに誘われたぞ。断ったけどな。一応、騎士科の俺の剣の腕が欲しかったらしい」
ラナンもナスも力があるのに、僕のパーティに入ってくれたんだ。
その事実だけで、僕は胸がじんと温かくなった。
昼休み。
アイベックス・エルマール男爵が僕を見つけて、走って寄ってくる。
「あ、見つけた。ハアハア。それにナスさんも。探しましたよ。一緒に食事をしましょう」
その様子を見て、ラナンが言った。
「ふふ。あなたも立派な彼のメンバーのようだね」
「え?ああ、聞きましたよ。パーティの資格を得たって。ぜひ私も入れてください。実は私、他からパーティのお誘いがあったんですが、断りました。だから大丈夫です!!」
そのとき、エクレアがこそっと耳打ちをした。
「どうやら、彼はかなり有望なパーティからの誘いを断ったようです。なんでも、王太子の側近たちが集まるパーティだとか」
それが本当なら、彼は本当に僕に恩を感じているようだ。
だって、王太子の側近という地位は、貴族にとって喉から手が出るほど欲しいはずだから。
ラナンが言う。
「あ~、聞きましたよ。アイベックス・エルマール男爵殿。あのフェレット・モンステラ伯爵令息からの誘いを断ったんですってね」
「入っておけばよかったのに。出世コースでしたよ?」
だが、男爵は言い切った。
「後悔はしていない!!」
「仮にそれで以前のように孤立しても、今度はナスさんたちがいる。まったく一人ではない。私にとっては、心から信頼できる友人の方が大切だ!!」
臆面もなく言うから、僕は照れてしまった。
ああ、いいなあ。
目の前にいるこの貴族だけは、裏切らないかもしれない。
僕の心は、ぽかぽかと温かくなるように感じられた。
そんなときである。
「だから、あんたのパーティなんかに入りたくなかったんだ!!なにが、心から信頼できる友人だよ。そんなもの、権力の前では張り子の虎も同然じゃないか!!」
そう言ったのは、先日僕のメンバーになった一人である、シアン・ルジッグ子爵子息であった。
彼は目を怒らせ、ふうふうと興奮していた。
そんな彼に、僕が何かを言いかけたとき。
それを遮るように、アイベックス・エルマール男爵が口を開いた。
「君はルジッグ子爵家の者だったか。たしか、ルジッグ子爵家は投資に失敗して、爵位を返上するまでになっていたとか」
「そうだよ!!それがどうした!!悪いのは父上なのに、なんで俺までこんな目に!」
「分かるよ。私も父上の負の遺産を受け継いだのだから」
そういうアイベックス・エルマール男爵を無視して、シアン・ルジッグは僕の方を睨みつける。
「ぼくは、このアカデミーにかけていたんだ。必死で頑張って、総合でも二十位に入ったんだ。それなのに、なんでおまえみたいな奴の下につかないといけないんだ。爵位もない、功績もない。俺はもっと将来性のある人につきたかったんだ!」
ラナンから後で聞いたことだけど、ルジッグ子爵領は災害で食料が足りなくなり、なんとかしようと焦ったため、投資詐欺に引っかかってしまったらしい。
その結果、余計に経営が傾いてしまったという。
シルバー王国は救いの手を差し伸べたが、領主の資格なしとの判断が下される前に、ルジッグ子爵は自分から爵位の返還を申し出たそうだ。
跡取りであるシアン・ルジッグは、そんな父親に見切りをつけ、なんとか自分で後ろ盾となる貴族を見つけようとしている。
そして、パーティのメンバーに選ばれるぐらい頑張った。
それなのに、ついた相手が何の力もない僕だったから、ショックなのだ。




