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龍華の英雄〜亜人戦記と弓を握りし臆病な少年〜  作者: オルレアンの人
最終章『龍華の英雄』

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84.赤龍


「『零零・零(レイフ・ゼロ)』」


 指揮機より光が放たれる。

 光は明らかにただの光線ではない。

 真っ白な光の中には赤や青など多彩な色彩が薄く混じっており、そこから熱や魔力の属性を一切感じ取れない。

 一見すれば人体に何の影響も与えなさそうな美しいだけの光。

 だがほんの少しでも意識を光に集中させればわかる。


 光から感じるのは、完全なる“無”。

 何を撃ってきてるのか、当たるとどうなるのか何も予想ができない無の光。

 だが僧侶として魔法を学び、常に魔力を意識している翠鳳は違った。

 詳しい事は頭が痛くなり理解はできていないが、確信がある。

 

 あの光は、触れた対象を完全に消滅させる光であると。


 そう理解した瞬間、彼女は走り出していた。

 邪魔になるからどんなことがあろうと前に出ないようにしていた彼女が。

 たったの数日であろうと、強大な困難を乗り越えあった友達の危機を感じ取って。


 (孫覇さん.....聞こえてますか!あの時言えなかった.....私はどんな僧侶になりたいか!)


 翠鳳。

 彼女は決して頭が良いとは言えない。

 だが、魔導士や僧侶にとって魔法を習得する際に重要な要素である“想像力”。

 彼女の想像力は、常人をはるかに超えて豊かだった。


 (今なら分かります!私は.....私は!!)


 こと魔法に関することだけで言えば、100年に一度の天才であると言える。


 (目の前で誰1人死なせない....強くて凄い僧侶になりたいっ!!)


 彼女は聖魔法であれば。

 一目見れば己が物として習得できる力があった。


「<聖壁せいへき>ッ!!!」


 彼女は叫ぶ。

 すると、紅蓮の眼前に1枚の見えない壁が出現した。

 聖属性の中級魔法、<聖壁>である。

 

「!」


 光は<聖壁>に激突する。

 だが翠鳳は知らなかった。

 <聖壁>はどこであろうと壁を張れる強みがある反面、その耐久性はかなり脆い。

 平均的な兵士が放つ矢であれば20本、剣であれば5回受ければ崩壊する。


 当然、光は1秒と経たず<聖壁>を容易く貫いた。

 だが<聖壁>は、光が紅蓮に到達するまでの時間を、およそ0.7秒遅らせる。

 その瞬きほどの僅かな遅れは、紅蓮の運命を大きく変えた。


 光が目前に迫る中、紅蓮は賭けに出る。

 偃月刀の柄に片足を置き、蹴り跳んだ。

 そのまま頭から地に激突するも、光にはギリギリ掠ることなく、避けることに成功する。

 

「っ!?」


 計算外。

 そう言わんばかりに動揺し慌てて動き出す指揮機だったがその背後、頭から血を垂らしながら、紅蓮は偃月刀を構えて立っていた。

 今の自分が蹴ったら偃月刀が折れるかどうかの賭けだったが、師羽藺しばいが送ってきたこの偃月刀は特別性の材料で作られており、折れることなく敵に刃を突き立てる。


 (私がもし、覇王に勝る部分があるとすれば.....それは振りと突きの速度。力ではなく速度を加算する.....)


「その動きも学習済みダ」


 だが指揮機の対応は早く、上半身のみを素早く回転。

 背を正面とし、腕を前に出す。


「『防防壁ぼうほうへキ』」


 <聖壁>よりもはるかに硬い透明な壁を即座に展開した。

 対して紅蓮は何があろうと離さぬよう、偃月刀を固く握りしめ。


 (力は貯めず、ただ速く。自分の意識を超えろッッ!!)


 そして、一歩踏み出して突く。


「『赤・龍(せき・りゅう)』ッッッ!!!!」

 

 腕だろうと足だろうと、全身がどうなろうと構わない。

 全身全霊が込められた突きの速度は、音を追い越す。

 そして、赤き龍の軌跡は『防防壁ぼうほうへキ』を紙のように破り。


 指揮機の胴体を貫いた。


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