80.魔道機人《マギカロイド》
皇龍宮内部、龍口門前。
「『電電導』....」
「!!」
「『回砲」
宙に浮かぶ指揮機の全身に電流が走る。
そして、激しい駆動音を響かせながら上半身だけを回転させ紅蓮に向かって突進する。
紅蓮は咄嗟に躱そうとするも間に合わず、回転する鋼鉄の巨体が直撃、そのまま吹き飛ばされてしまう。
「ヴっっ....!!」
電撃が体内に流れ全身を痺れと焼かれた感覚が襲い、体から薄い煙が上がる。
さらに、指揮機の重量を上乗せした突進のダメージも大きく、紅蓮の口元に血が垂れた。
だが紅蓮はすぐに空中で体勢を直し、着地。
「『赤・突!!』」
「『防防壁』」
紅蓮は即座に踏み込み、偃月刀を突き刺す。
しかし刃は指揮機の目前で止まった。
見えない壁がその一撃を阻んだのだ。
(くそっまた魔法か....!)
指揮機が何をしたのか理解ができない。
魔法知識の遅れを改善しなかった過去の自分を叱りたい気持ちが湧く中、紅蓮は一歩下がり距離を取る。
「<ヒール>!」
こそこそと素早く近づき、両手を紅蓮に翳した翠鳳が魔法を唱える。
すると、感じていた痛みや痺れがすっ...と身体から消えていくのを紅蓮は感じた。
「すまない翠鳳。助かる」
「いえ!頑張ってください紅蓮さん!」
一言礼を言うと、翠鳳は再び建物の影へと避難する。
これを既に三度繰り返しているが、指揮機が翠鳳を狙う様子はなかった。
普通に考え、戦闘において回復要因を真っ先に倒す方が勝率は上がるというのに、指揮機は一度たりとも翠鳳を見ない。
(私に勝つが目的ではない.....魔道機人は常に学習を続け、体を進化させる種族。私の戦闘を糧にすることが目的か.....)
そう推測を立てていると、指揮機の頭部が宮殿北西部を向いた。
先程、謎の大爆発が起きた方向だ。
「『赤龍』。亜人王の未知の姿、計算外の破壊力。優先すべき対象が変わっタ。収集はここまでダ」
「っ....!」
祐基と亜人王に狙いを変えた。
紅蓮は理解すると同時に、指揮機へ跳び込んだ。
(祐基の元に、こいつを行かせるわけにはいかない....!!)
「『赤・.....」
「またカ。『防防壁』」
再度『赤・突』の構えをする紅蓮。
対して指揮機は片手を向け、透明な壁を展開した。
『赤・突』ではこの壁を貫けない事は、紅蓮も二度経験しているのでわかる。
そして、自分がこの構えをすれば壁を張ることも。
「魔法の弱点....!」
「.....!」
紅蓮は技を打つその寸前で構えを解き、指揮機の背後へ素早く回り込んだ。
あの構えは指揮機に隙を作るための囮。
僅かな戦いの合間に見つけた、魔法の弱点を突くための。
「一度に一つしか使えないんだろ!?」
紅蓮との戦闘中、何度も魔法で攻撃してきた指揮機だが、一度に一つしか魔法を放ってこず、同時に二つの魔法を使うことはなかった。
一度に複数の魔法を扱えるのであれば、とっくに勝負は決している。
それをしない、つまりはできないという事だ。
紅蓮はそう結論付ける。
(秘める手数はそっちが上だ....だが私の方が柔軟性は圧倒している....!!)
「『赤・烈』!!」
自信が出せる最高速度の振り。
指揮機はまだ正面に壁を張っており、解除しようとしているが紅蓮の方が動きが速い。
偃月刀の刃、渾身の一撃が指揮機の左肩を完全に捉えた。
「その通りダ。だが千年前に学習済みダ」
指揮機の頭部が紅蓮を向いた。
「聖壁作動」
何かに当たり、偃月刀が弾かれた。
確実に腕一本を切り落とした確信ごと弾かれ、紅蓮の思考が一瞬停止する。
「っ.....」
指揮機の背部。
そこに取り付けられている薄い円形の装置から、背面全体を覆うように見えない壁が展開されていた。
よく見れば装置は指揮機の一部ではなく、外付けされた魔道具のようだ。
そして、指揮機もまた見逃さない。
紅蓮に生じた、決定的な隙を。
「人間などの生身の生物では決まったエネルギーの形でしか出すことのできない魔力。我々魔道具は設計次第で魔法ともスキルとも違う魔力排出を可能とする」
指揮機の両眼が強く輝く。
「『煌煌線』」
放たれた2本の光線は、紅蓮の胸を容赦なく貫いた。




