78.Annihilation
(巨大化.....的が大きくなった....)
自身を見下ろす巨大な生物の姿を見て、祐基は心中で舌打ちをした。
小さい体のままならば、魔力を込めた一撃で全身を消し炭にし殺せただろう。
だが図体がデカくなった事でそれは難しくなり、しかも生物の急所である心臓の位置や大きさが未知となった結果、一撃で殺す事が困難と化した。
ひとまず祐基は弓を構えながら走り出す。
巨大化したことにより亜人王の攻撃範囲が広くなった。
近くに倒れる逆鱗隊の兵士達、紅忠達が戦っている塔があるこの場所では戦えない。
既に皇帝は避難している。
祐基はそう考えそう信じ、正殿の方へと向かう。
「何処に行く気だ」
亜人王の背に生える翼が大きく広がり、両翼は突風を巻き起こしながら羽ばたいた。
翼が振るわれるたびに体が吹き飛ばされそうになる程の暴風に耐えつつ、祐基は亜人王に向け雷を射つ。
雷は容易く亜人王の体を穿ち、風穴を空けた。
(硬度は大したことないのか.....)
魔力を込めずとも攻撃は通じる。
その情報を得られたことにひとまず祐基は安堵する。
もしフォルネストのような全身超硬度の怪物だったのなら、倒す手段は一つで一回。
しかもそれを先ほど見せてしまった以上、亜人王も当然警戒しているはずだ。
あんな絶好の狙撃の機会は二度と訪れないだろう。
(.....けど、効いてないか)
穿たれた箇所の肉が伸び、穴が塞がっていく。
しかも効いた様子は一切ない。
亜人王は穴を塞ぐと、祐基を追うように飛翔した。
40メートルの巨体でありながら軽々空を飛び、かなりの速度でこちらへ向かってくる。
(速い.....!)
このままではあと二秒と経たずに追いつかれる。
祐基は即座に振り返り、両翼を雷で穿つ。
「....!」
穴を開けられた巨大な翼は揚力を失い失速。
亜人王はそれを塞がずに地面へと落下、地響きを響かせ着地する。
(だけど手も足も出ないってわけではないな。フォルネストと比べたら大したことない....!)
飛ぶなら翼を穿ち、走るなら足を穿つ。
行動を容易に抑えれる分、基本受け身で何もできなかったフォルネストよりかはマシだ。
最初こそ突然の巨大化に多少の驚きこそあったものの、蓋を開けてみればただ的が大きくなっただけ。
これなら確実に殺せる。
「穿ち殺してやるッ.....!!」
祐基は殺意を宿した眼で亜人王を激しく睨み付ける。
だが次に亜人王が取った行動に、一瞬祐基の思考は飛んだ。
(......?)
空を飛ぶ手段を奪われたのなら歩くか走って自分を追いかけてくるはず。
そう祐基は思っていたが、なぜか亜人王は動かなくなった。
その場で立ったまま、ただ口を大きく開けているだけだ。
(追いかけてこないのか?)
亜人王は皇帝を狙っている。
例え祐基を無視し皇帝を狙うとしても、祐基が正殿へと向かってる以上亜人王は追いかけるしかない。
にもかかわらず立ち止まっていた。
「“これ”を撃つのも久しいな......忌々しい国家の奴隷共と戦った時以来だ.....」
亜人王が呟く。
何か仕掛けてくる....そう祐基が思考していると、徐々に亜人王の口内が発光し始めた。
首元から生えた二つの獣の頭部、その口も同様に。
「っ!!?」
光は球体状の形で徐々に大きくなってゆき、それを見ていると直感が祐基の全身に鳥肌を立たせた。
死の予感だ。
やがて光は一気に収束する。
「滅びの一撃....『アナイアレイション』」
光は放たれた。
咄嗟に身を屈めた祐基の頭上を、目で捉えらのがやっとの速度で通過する。
そして、皇龍宮南東部、建物群に直撃。
次の瞬間、宮殿全域...いや都全域に轟く程の大爆発を起こした。
「ッッ.....!!?」
爆風は抵抗を許さず、祐基を数メートル後方に吹き飛ばし地面に倒れさせる。
必死に体勢を整え、再び南東部の空を見上げると、そこには巨大な黒煙の雲が立ち昇っていた。
火薬兵器を遥かに上回る圧倒的な大爆発。
あの雲の下にいたであろう人たちがどうなったか、嫌でも脳内に入ってくる。
「あ....ああ亜人王ォォォッッッ!!!!」
殺意は加速する。
同時に、自身の間抜けさを呪う。
何が大したことない敵、何がフォルネスト程ではない敵....と。
目の前に立つ邪悪は全ての亜人、六荒王をも力で従わせた存在。
その事を二度と忘れぬよう、祐基はその失敗を脳に深く刻み込む。
「久しぶりで狙いが外れたな.....だがまぁいい。次はお前だ」
亜人王の視線が祐基を捉える。
これ以上の移動はまた亜人王にあの光線を撃たせる機会を与えてしまうと、祐基はその場で弓を構える。
塔や逆鱗隊からは十分に離れた、ここで決着をつける。
祐基はそう決心する。
「雷衝動.....力を貸せ。ここであいつを滅ぼすッッ....!!!」




