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龍華の英雄〜亜人戦記と弓を握りし臆病な少年〜  作者: オルレアンの人
最終章『龍華の英雄』

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67.母は強し

「進め!!!人間なんかに恐るな!!!」

「役立たずの鉄屑共が!!」

「逃げるなゴブリン!!!」


 城壁北部中央、城門前。

 人間盾を利用し前進していた先頭集団は、龍華軍の矢によって盾ごと射抜かれ壊滅。

 後続部隊が怯まず突撃を試みるも、人間の新兵器がそれを許さない。


「ママ大変だよ!!」


 その戦況を見守る後方の天幕の中。

 毒蠍人スコルピオン達が泣き叫ぶ。


「人間の兵器が強すぎて全然進めない!!人間盾とかいうのも役に立たなかった!!」

「このままじゃ僕ら死んじゃうよ!!」

「ママ逃げよ!!荒野に帰ろ!!」

「亜人王はきっと人間達が殺してくれるよ!だからママ!」


 泣き縋る子供たち。

 女王は静かに、愛しき我が子たちの頭を優しく撫でた。

 そして、女王は武器を持ち、ゆっくりと立ち上がる。



 開戦から25分、六荒王ポリズンが動く。



「.....ッ!!?」


 見張り台で戦場を監視していた兵士の顔が青ざめる。

 亜人達が一斉に新兵器の射程外へと退がり、代わりに1体の亜人が堂々と戦場中央を歩き、城門へと接近しつつあった。


「ほ、報告ッ!!!六荒王ポリズン確認ッ!!!繰り返す!!六荒王ポリズンを確認したッ!!!総員警戒せよッ!!!」


 龍華軍全体に緊張が走る。

 つい先程まで数多の亜人を屠り続けていた新兵器を前に、一切臆することなく進む女王の前進に。


「あれがポリズン.....」


 鋸壁に足を掛け、戦場を見下ろす男が呟く。

 弓と火爆矢ひばくやを携え、ゴーグル越しに女王を捉えながら。


「『爆龍ばくりゅう』!!!頼んだぞ!!」

「あぁ....」


 『爆龍ばくりゅう』と呼ばれた男は頷き、火石かせきを内蔵する特殊加工された弓に火爆矢ひばくやを番え点火する。


「砲兵ッ!!!奴を狙える砲台だけでいいッ!!弓兵ッ!!!全員でポリズンを狙えッ!!!!」


 龍華軍の新兵器は角度調整こそ可能だが、鋸壁の凹凸に沿って配置されているため、大きく横方向へ向けることができない。

 それでも新兵器が5台、そして多くの弓兵の矢がポリズンに向けられ。

 

「放てェェェェェェェッ!!!!!」


 軍の男の号令に一斉に放たれた。

 だが迫る無数の脅威に対し、ポリズンは一切動じない。

 先端に棘の生えている杖の武器....『刺棘杖しとつじょう』を握り、石突で地面を二度叩く。

 直後、火薬兵器に矢...そして火爆矢ひばくやがポリズンに命中。

 爆炎が女王を包んだ。


「「「ママァァァァァァァ!!!!」」」


 後方の毒蠍人スコルピオン達が悲鳴を上げる。


「やったか.....!?」


 龍華軍の兵士たちに希望が走った。

 あの新兵器の直撃であれば、六荒王といえど流石に無事では済まない。

 そう誰もが思った。


 だが黒煙が晴れた瞬間。

 両軍は正反対の反応を見せる。


「なっ....あれは.....門....!?」


 兵士達の顔から血の気が引いていく。

 そこにあったのは、先程まで存在しなかった巨大な二本の棘。

 地面から生えたそれらは交差し、まるで“門”のような形を作っていた。

 2本の棘には爆発の焦げ跡に無数の矢が突き刺さっており、全ての攻撃を棘が受け止めた事を物語っている。

 そしてその門を抜け、悠々と歩く姿。


「「「ママーーーー!!!!」」」


 無傷のポリズンだ。

 

「くっ.....急げッ!!!次弾装填しろッ!!!弓兵!!時間を稼げッ!!!!」


 (厄介ナ兵器ネ.....本来アレヲ長城ニ配備スルツモリダッタノカシラ......)


 帝国の新兵器を見つめながら、ポリズンは思考する。

 亜人王亡き後、この先の荒野には力の空白地帯が確実に生まれる。

 もし荒野を支配しようと人間があの兵器をを持って侵攻してくれば、例え再度亜人同士手を組もうと、疲弊し切った亜人側に勝ち目はない。

 この戦いで人間側も今後数ヶ月か数年、荒野に攻め入るのが難しくなるほど、力を削いでおく必要がある。


 (全テ破壊シマショウ.....)


 ポリズンの歩みが止まる。

 そして、刺棘杖しとつじょうを構えた。


「な...なんだっ......!?」


 兵士たちは、ポリズンの突然の行動に息を呑む。

 

「何をしてる!!?早く矢を.....」


 男が怒鳴り声を上げると同時に、ポリズンは空高く跳躍した。

 そして頭上で武器を回しながら、落下する。


「砕ケ散レ....『芽畏棘・紅(メイキョク・クレナイ)


 ダンッッッ!!!!


 着地と同時。

 刺棘杖しとつじょうを勢いのまま、地面へ叩き込んだ。


「........?」

 

 龍華軍は一斉に身構える。

 だが何も起こらない。

 派手な動きをしただけで、何か攻撃をされた気配はない。


「いっ....急げ!!!早く奴を仕留っっ......」


 息を吹き返したかのように龍華軍が再び動き出す.....その刹那。


 城壁の下より、人体を遥かに超える極太の“赤い棘”が幾本も突き上がった。

 城壁が内側から破裂するように砕け散る。

 兵士も新兵器も、全てが吹き飛んだ。

 兵士達の悲鳴は崩れ落ちる城壁によって掻き消され、城門は土煙を上げて崩壊する。

 

「「「ママ〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!」」」

「「「ウォォォォォォォォッッ!!!!!」」」


 自分たちを苦しめた新兵器ごと人間が蹴散らされた光景に毒蠍人スコルピオンの子供達は歓声を上げ、他の亜人達も雄叫びを上げた。

 そして、ポリズンは破壊した城門へ武器を向け、亜人達へ一言。


「進ミナサイ」

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