エピローグ
亜人戦争より1年後。
龍鱗の長城・第46地区。
かつて亜人王によって破壊され、龍華帝国への侵攻が始まった場所。
だが、今やその傷跡は完全に治っていた。
崩壊した箇所には新たな壁が築かれ、鋸壁の合間からは荒野へと砲口を覗かせる夥しい数の黒龍砲。
歩廊の上では屈強な兵士達の鋭い目が光っており何人の接近、侵入を阻む空気を漂わせている。
かつて難攻不落と謳われた龍鱗の長城は、その姿を完全に取り戻していた。
晴天の下、長城に鐘の音が鳴り響く。
多くの兵士達が見守る中、鐘の音はある部隊の荒野への出発を祝福する。
実に1年ぶりとなる荒野での偵察任務。
任務内容は、蔓絡人の消滅と蛇蜻蟲の激減、そして各亜人勢力の弱体化の隙を突き、荒野で勢力を広げ続ける鱗魚人。
その動向調査である。
部隊は長城から梯子で荒野側の地面へ降りると、荷下ろし機によって下ろした馬に乗り、出発。
新たな『双刀』を先頭に荒野へと入っていった。
「あれが『赤龍』......若くして『双刀』に上り詰めた英雄の1人.....」
荒野へ向かって駆けていくその背中を、歩廊の上より見つめる新兵の男が呟く。
「とんでもない覇気だったな.....」
「そりゃ『双刀』だ。人間離れの上に立つ化け物離れの2人のうちの1人。歳なんて関係なく怪物だろ」
すると隣に立つ、腕や顔に幾つもの傷跡を刻む古参の兵士が口角を上げて答えた。
「俺もいつかは....なんて思ってましたが、あれを見ると砕けるなぁ....」
「それを乗り越えた奴だけがあそこまで行けんだろうな。俺は何度もあの人を見かけた事があるから慣れたもんだが.....あの戦いを経て、さらに鋭さが増してる。全く....底が知れないな」
その古参兵の男の声には誇らしさが滲んでいた。
まるで龍華帝国に『赤龍』という英雄がいることを、心の底から誇っているかのように。
「とは言っても『飛龍』さんも流石に歳ですよね?もう1人の次期『双刀』は一体誰になるんでしょうか....」
「.....まぁ、『蒼龍』あたりが妥当だろうな。右腕の『錘龍』さんは実力面で少し劣るだろうし、もう1人の英雄は『赤龍』の下に固執している」
「『赤龍』さんの隣にいた『煌龍』さんですか」
「あぁ。けど、しばらくは『飛龍』将軍が辞める心配はない。ここのところ勢いを増してる鱗魚人にとって、あの人以上に恐ろしい存在はいないからな」
古参の男は、新兵の対し2本の指を立てた。
「なんたって鱗魚人の六荒王を2人と倒してるんだ。『飛龍』将軍を荒野に出すと言えば、奴らビビって逃げてくだろうさ」
「鱗魚人にとってはどんな兵器よりも恐ろしい人なんですね.....同じ弓兵として、一度この目でその強さを見たいものです」
「やめとけ、ウザいくらいマウント取られるぞ」
「え?」
「おいお前らッ!!!」
2人が話をしていると、遠くから声が響いた。
振り向けば、古参兵の友人である1人の兵士がこちらに向かって走ってきている。
顔には汗を浮かべ、僅かに息を切らしながらも全速力で。
「ん?どうした、そんなに慌てて?」
走ってきた兵士は2人の前に着くと、その言葉に答えるより先に膝に手を突いて荒い呼吸を繰り返した。
「はぁ...はぁ.....!!大変だぞおい!!!これ見ろよこれ!!!」
そう声を荒げながら、兵士は手に握っていた新聞紙を2人に見えるよう勢いよく広げた。
「いま国中で大騒ぎだ!!西の大陸で周辺国に戦争仕掛けて暴れてる国、ヴァルノワ帝国!!そこでとんでもない事態が起こったんだとよ!!」
「とんでもない事態?」
2人は広げられた新聞へと視線を落とす。
そこには一面を大々的に使い、信じ難い内容が記されていた。
「なんでも......」
「魔王が蘇ったらしい」
[後書き]
初投稿の12月より続いた『龍華の英雄』....これにて完結となります!!
長らくお付き合いしてくださりましたファンの皆様!本当にありがとうございました!!!
祐基や紅蓮が主役となるこの物語はここで終わりとなりますが、この世界の物語がいよいよ始まります.....!!!
『龍華の英雄』や『五人の覚醒者は異世界へ』、その他短編の物語.....全てが繋がる新たな物語をどうぞご期待してお待ちください٩( 'ω' )و
それでは、改めて長らくご愛読くださり.....
ありがとうございました!!!!!




